広島発・自由進度学習+教え合い 良い人間関係が成績に与えた好影響

【小学校教育2.0】 江田島市立三高小学校の挑戦#2 「自由進度学習の展開」

大切なのは「方法」ではなく目の前の子どもたちの姿

実は、三高小学校では、2020年度の終わりから数ヵ月、複式学級の垣根を越えたグループ編制を採用し、1~3年生、4~6年生での自由進度学習に挑戦していた時期がありました。

イエナプランで行っているグループの構成を取り入れ、当初は2021年の1年間、この形式で学習を進めていこうと考えていたといいます。

「探究学習での異学年活動でも、学年を越えた助け合いなど、その前向きな効果が出ていたこともあり、より多くの学年が参加するグループでの自由進度学習を目指しましたが、途中から課題が出てきました。

三高小学校のこれまでの学級編制は、3・4年生が一つのクラスでした。しかし、1~3年生グループだと、3・4年生クラスが2つに分断されてしまうので、担任が関わりづらく、そこを解消するのが難しかったんです。

それで、やはり複式学級の編制を母体に、3・4年生、5・6年生のグループに戻して、自由進度学習を進めていこうと方向転換を図りました。

低学年は1年生、2年生それぞれのクラスで授業を進めて、できるところから少しずつ自由進度学習を取り入れました」(里岡先生)

複式学級内でも異学年の教え合い、学び合いがあり、その範囲でも十分な成果がありました。無理に学年の編制を変えなくても、より良い学習を行っていけると判断したそうです。

一人で学んだり、友達と学んだり、子どもたちは臨機応変に学習します。  写真提供:三高小学校

このように、三高小学校では、積極的に新しい取組を行いますが、実態に合わなかった場合はその形式にはこだわらず、臨機応変に方向転換を図っていきます。

イエナプラン自体が主張しているように、大切なのは方法ではなく「コンセプト」。それを学校も先生方も理解しているからこそ、授業形式やグループ編制にこだわることなく、子どもたちの現状をしっかりと見据えて、今できることを着実に実践しているのです。

プリントを使って自由進度学習を進めた子どものノート。  写真提供:三高小学校

また、同じ広島県内で自由進度学習を行っている宮園小学校とも交流し、取組を参考にしながら進めていますが、ここでも、その方法をそのまま取り入れることはありません。

子どもたちの様子にしっかりと向き合い、必要な方法を取り入れて改善を繰り返す。そうして、三高小学校らしい「子どもの個性と主体性を尊重した学び」を展開しています。

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