2021.11.15

生産量1位! 大分県の椎茸組合が若者ばなれの救世主に選んだ絵本とは?

リアル椎茸組合が認めた「ほしじいたけ ほしばあたけ」

秋の味覚といえば……

秋といえば、おいしいものがたくさん思い浮かびますよね。旬の味覚はさまざまですが、特に秋から冬にかけては、お鍋などに大活躍の「きのこ」に注目してみましょう。

きのこの中の王者といえば松茸ですが、普段は手が出ませんね……。もっと普段に使えて、「生」でも「干し(乾し、とも表現します)」でも楽しめて、通年出会える「出汁」の元になるきのこといえば、椎茸。
干した椎茸に含まれるグアニル酸は、昆布のグルタミン酸や、かつお節のイノシン酸にならぶ、三大うまみ成分のひとつ。生の椎茸にはほとんどないというグアニル酸は、干したからこそ生まれる、うまみなのです。

若い世代の椎茸ばなれ

ただ、残念ながら、椎茸の家庭での消費量は下降傾向。干し椎茸の全国一の生産量をほこり、全国品評会では二十数年間、一位の座を守り続けているのが大分県です。

その大分県の椎茸農業共同組合も、特に若い世代の椎茸ばなれを深刻に受け止め、もっと家庭で干し椎茸に親しんでほしい! と、目をつけたのが絵本『ほしじいたけ ほしばあたけ』でした。

今年の全国品評会のようす
写真/大分県椎茸農業協同組合

組合の直販営業部の主査・水嶋沙織さんは二児の母。あるとき、子どもが通っている保育園で、よく読まれている『ほしじいたけ ほしばあたけ』を見て、これと商品がつながったら、若い人や、子ども達にもっと届くのでは? とピピっときたそう。
しいたけ王国・大分県では『ほしじいたけ ほしばあたけ』は、みんなが知ってるポピュラーな絵本なのです。

水戻しってなに? の衝撃

いっぽう、作者の石川基子さんは、このシリーズ絵本の一作目を作っていたとき、子ども達に試作の読み聞かせをして、干し椎茸を「水戻し」することを知らない子どもが多いことに、愕然としたといいます。
『ほしじいたけ ほしばあたけ』は、その水戻しがお話しの大きなカギになっているので、そのことを知らないと面白さも半減してしまうというわけです。

「なので、読み聞かせをする時には、できるだけ干し椎茸を持参して、水戻しをする実験をしてみせてから、読むようにしています」と石川さん。

そういう経験もあり、絵本のカバーの袖には毎回、生の椎茸の絵と、干し椎茸の絵を添えて「水につけてやわらかくして、りょうりにつかいます」と、さりげなく水戻しに触れています。

各巻に必ず入っている、水戻しの説明書き

もっと家庭に椎茸を!

そんなお互いの「もっと家庭に椎茸を!」という思いが通じ合ったのか(⁉︎)、”ほしじいたけ”と”干し椎茸”のコラボが実現。

水嶋さんいわく、「石川先生の描く椎茸は、本物の干し椎茸の質感がすごくよく出ています。マニアックな話ですが、ほしじいたけは『香信』とよばれる、傘がひらいた状態の椎茸で、ほしばあたけは『どんこ』とよばれる傘が肉厚なタイプ。
ほしじいたけの方は、特に傘のフチの部分が擦れて白っぽくなったところや、傘の反りまで本格的。椎茸への愛情を感じます!」
と、リアル干し椎茸の本家本元から、その絵の精緻さにお墨付き。

絵本とコラボ商品。中身とパッケージの境目がわからないのではと水嶋さんは心配したという

新型コロナ対策としても、ヨーロッパで大人気

実は海外で、とくにヨーロッパで干し椎茸は人気なのだと水嶋さんはいいます。
椎茸には、免疫活性効果が高いビタミンDが豊富に含まれることもあり、とくに2020年は、新型コロナの影響もあってか、干し椎茸の海外への出荷数が伸びたということです。

「しいたけ農業は、無農薬・有機栽培で、環境に優しいSDGsな産業でもあります。作る人も、食べる人も増えていってほしいので、こうやって、きのこの世界を楽しく絵本で描いてもらえるのは嬉しい」と、水嶋さんは石川さんにエールを送ります。

3年ぶり、待望のシリーズ最新刊!

”ほしじいたけ”が”干し椎茸”とコラボした商品は、もともとの絵本ファンから「かわいい!」という感想や、ミニサイズの手軽さも受け、発売後3000パック近くも売れ、まずまず好調。
そのコラボから数ヵ月。3年ぶりの新作『ほしじいたけ ほしばあたけ おにたいじはいちだいじ?』が刊行されました。

左から、オニタケ、シロオニタケ、オニイグチ、オニフスベ、オニウスタケ

毎回、さまざまなきのこが登場するこのシリーズ、今回のゲストきのこは、キクラゲと、”オニきのこ”たち。乱暴者にみえた”オニきのこ”たちの本当の気持ちを知って、ほしじいたけとキクラゲは一肌脱ぐのですが……。

著者の石川さんは、「くしゃくしゃに縮んだ乾燥キクラゲは、なかなか絵にしにくいきのこですが、いつか登場させたいと思っていました。ほしじいたけの宿命のライバルとするか、はたまた竹馬の友とするか……。数々の没ラフを経て、今回のような役回りとなりました」とのこと。時間をかけただけのことはある、気合が十分につまった絵本です。

きのこを特に身近に感じる季節。ぜひ絵本でも、きのこたちが繰り広げるユーモラスなお話を味わってみてはいかがでしょうか。

『ほしじいたけ ほしばあたけ おにたいじはいちだいじ?』
石川基子 作

こわ~いオニきのこたちが出没!と思ったら、どうやらオニきのこたちは村の子どもたちと仲良くしたかったよう。それを知ったほしじいたけとほしばあたけ、そしてキクラゲじいさんは作戦をたてるのですが……。
個性ゆたかに描かれたきのこたちの魅力が満点の、ユーモアたっぷり驚きいっぱいの楽しいお話。
人気シリーズ「ほしじいたけ ほしばあたけ」のシリーズ第5弾。

キクラゲから、オニが出没すると聞いた、ほしじいたけとほしばあたけ。

キクラゲといっしょに、かくれんぼをする村の子どもたち。

オニきのこたちに見つかってしまい……。

幼児図書編集部

絵本をつくっている編集部です。コクリコでは、新刊の紹介や作家さんのインタビュー、イベントのご案内など、たのしい情報をおとどけします!<...