「離乳食」 固さの目安は月齢ではなく「歯の本数」 小児歯科のポイント

小児歯科専門医・唐木先生ご夫妻インタビュー #1 0~1歳半頃の歯のチェックポイント

小児歯科専門医:唐木 隆史

年齢別にチェックしておきたい子どものお口の注意点について、専門医である「等々力ぞうのはな小児・矯正歯科」の唐木隆史先生と唐木美弥先生にお聞きしました。

初めて歯医者さんに行くタイミングとは?  写真:アフロ

第1回は、お口の中が劇的に成長する、0~1歳半頃の子どものお口のチェックポイントについてです。

歯医者さんへの初めての受診は、前歯が生えてきたタイミングで

ミルクを吸い、離乳食を食べ始め、6~8ヵ月頃から前歯が生え始め、1歳半頃には最初の奥歯が出てくる……。一生の中でも、身体の発達がとりわけ著しい1歳半頃までは、口の中も劇的に成長を遂げます。初めて歯医者さんに行くのはいつ頃がよいのでしょうか。

唐木隆史先生(以下隆史先生)「初めての歯が生えてきたタイミングで最初の診察をするという方が多いですね。
あるいは玩具を噛んだり、ぶつけて出血した場合や、歯が生える時期でない時に生えてきた、などの理由で診察を受ける方もいらっしゃいます。少しでも異変に気づいたら、なるべく早く受診することをおすすめします」

唐木美弥先生(以下美弥先生)「乳幼児健診で、歯が生えたら歯科受診するようにとアドバイスされて来られる方もいますね。定期検診を希望して来院される方も多いです。
また、当院では、診察に来られた方で、ご希望の方にはフッ素の塗布もご案内しています」

むし歯予防には、定期的なフッ素の塗布が有効

フッ素については、副作用などの観点から、前々から賛否両論ありましたが、現在は歯医者さんでフッ素を塗ってもらうのが一般的になりました。定期的に塗布することで、むし歯の予防効果が得られると言います。

隆史先生「フッ素塗布に年齢制限はないので、歯が生えてきたら塗ってあげられることができます。塗布に関しては、患者さんの個々の判断にお任せてしていますが、学説的にはかなり前からデータがきちんと取れ、適切な量を適切に処置する分には、むし歯予防の効果が期待され、問題はないと考えています。

口の中の状態にもよりますが、年に3~4回の塗布がひとつの目安ですね。市販されているフッ素入りの歯磨き粉については、日本では子どもがうがいをできるようになってからの使用が推奨されています。
うがいが出来ないときから予防をしたい場合は、就寝前にブラッシングで汚れを落としてから、低濃度のフッ素(フッ化物濃度500ppmF未満のもの)ジェルや、スプレータイプのものを塗布して予防をして頂くのが良いでしょう。種類はいろいろとありますので、使いやすいものを選んでみてください」

離乳食の食材の固さは、月齢ではなく歯の本数を目安に

5、6ヵ月頃は、離乳食をスタートさせる時期だとされているが、食材の固さは成長とともにどのように変えていくのがいいのでしょうか。一般的には月齢を目安に指導されることが多いですが。

美弥先生「歯が生えてくる時期は個人差があり、生え方に半年くらいの差が見られることもあります。離乳食の固さについては、月齢よりも歯の本数や、口の動かし方を目安にして様子をみるといいと思います。
歯の本数が足りてないのに固いものを与えてしまうと、丸呑みの癖がついてしまうこともあります。成長に応じた適切な固さにしてあげることが大切になってきます」

隆史先生「9~11ヵ月くらいまでは、まだ前歯しか生えていないことが多いのですが、1歳半くらいになると12~16本ほど生えています。その頃には奥歯もある程度生えてきているので、しっかり噛めるようになります。
逆に、それくらいの月齢でも前歯が4本ずつくらいしかないお子さんには、同じ固さでは与えられないので、歯茎で潰せるバナナくらいの固さが望ましいです。
歯医者さんでは、歯の治療だけでなく、噛むことに関するアドバイスを受けられることもあるので、離乳食のタイミングで診てもらうのもいいと思いますね」

前歯が4本ずつ(計8本)=歯茎で潰せるバナナくらいの固さ
9本〜11本=茹でたにんじんぐらいの固さ
12本〜16本(奥歯もある程度生えている)=しっかり噛める

「また、この時期に発達するものとして舌の使い方があります。離乳食を食べながら段階的に覚えていくのですが、最初は前後運動だけなのが、上下運動(舌での押し潰し)、そして左右の運動(舌で歯茎に食べ物をのせる)と段階的にできるようになっていきます。
離乳食が完了する1歳半頃までにしっかりとものを食べる動きを覚えておかないと、いつまでも噛んだり、飲み込めなかったりする、乳児型嚥下が残ってしまうこともあります」

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