絵本ナビ編集長がおすすめする 4歳の子どもが読むのにぴったりな絵本

絵本の情報サイト「絵本ナビ」編集長の磯崎園子さんが『絵本と年齢をあれこれ考える』エッセイ第7回

磯崎 園子

自分だけじゃない

ところが、実生活の中でもそのとまどいは続く。

「もうお姉ちゃんなんだから、泣くのはやめなさい」「あの子はすぐ怒る」「一緒に遊んであげなさい」……そんなこと言われたって、気が付けば泣き、怒り、ふてくされてしまっている。

そこに答えがあるわけじゃないけれど、その感情は自分だけのものではないのだと教えてくれるのも、やはり絵本。
「ひとはなくもの」
絵本ナビに「子どもがじーっと食い入るように見ていた」「悲しそうな表情で共感している」という声が寄せられているのが『ひとはなくもの』(みやの すみれ・作 やべ みつのり・絵 こぐま社)。

絵本の中ですみれちゃんは大いに泣く。「悲しいとき、痛いとき、怖いとき、悔しいとき…涙にはいろんな理由がある」と彼女は言う。だから「泣き虫のすみれをまるごと好きになって!」と訴える。

それを読みながら、同じく泣き虫の子が自分をまるごと好きになってくれたら嬉しい。
「おこる」
『おこる』(中川 ひろたか・作 長谷川 義史・絵 金の星社)の中の男の子は、「ぼくはどうして怒られるんだろう」と考える。なるべく怒らない人になりたい、とも思っている。自分の気持ちと人の気持ち、それを4歳なりの理屈で考えてみる。その時間がとっても大切だということは、大人になってみればよくわかる。

4歳なりの理屈

毎日が「なぜ? どうして?」で頭がいっぱいになっている4歳。その疑問にはなるべく答えてあげたい。けれど、大人が正解を示してしまうにはまだ早い。せっかくなら、まずは存分に考えてもらいたい。

なぜなら、4歳なりにひねりだしてくる答えほど、面白いものはないからだ。その理屈をあぶりだしてくれるのが、こんな絵本。
「ねえ、どれがいい?」
『ねえ、どれがいい?』(ジョン・バーニンガム・作 松川 真弓・訳 評論社)で繰り広げられるのは、究極の選択の連続。大水に浸っている家と、大雪にうまっている家と、ジャングルに囲まれている家。あるいは、ジャムだらけになるのと、水をかけられるのと、泥んこになるのは「どれがいい?」。

どれだって嫌だけど、それでも選び、理由も教えてもらう。読者からも「本を読んでいるよりも、話している時間の方がずっと長い」「息子は全部好きだと答えた」なんて声が聞こえてくる。4歳の子から話される理由、絶対聞いてみたい!
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