絵本ナビ編集長がおすすめする 4歳の子どもが読むのにぴったりな絵本

絵本の情報サイト「絵本ナビ」編集長の磯崎園子さんが『絵本と年齢をあれこれ考える』エッセイ第7回

磯崎 園子

「このあいだに なにがあった?」
こちらの質問もシンプル。写真を2枚並べて……『このあいだに なにがあった?』(佐藤 雅彦+ユーフラテス・作 福音館書店)。もこもこ毛がはえている羊と、つるんつるんの羊。この「あいだ」には何が起きているのか。ここで当たり前の答えしか考えられないのが経験豊富な大人。

4歳の子が考えるのは、いったいどんな推理なのか。これもまた、この時代にしか出せない答えなのだ。『あな』(谷川 俊太郎・作 和田 誠・絵 福音館書店)に入って、何を思う。この絵本を通してもまた、彼らなりの哲学をのぞいてみたくなる。
「あな」

格別な味わい方

このように、自分の中に生まれる複雑な感情をもてあましながらも、どうにか理解しようとし、空想の世界というのもまた、疑わずに受け入れていくことができる。だからこそ、そんな中で読む物語というのは、また格別な味わい方ができるのではないだろうか。
絵本で想像力が広がる
例えば、少し怖い雰囲気の漂う絵本『すてきな三にんぐみ』(トミー・アンゲラー・作 今江 祥智・訳 偕成社)。主人公は、恐ろしい泥棒たち。それぞれ武器を持ち、お金持ちの宝を奪いとっていく。

ある日、彼らに転機が訪れる。きっかけとなったのは、少女の一言。「この宝物をどうするの?」 さて困ったのは、三人組。どう使うかなんて、考えたこともなかったのですから! これは良い話なのか、悪い話なのか。子どもたちは物語に振り回されながらも夢中になっていく。
「すてきな三にんぐみ」
「そんなのあり得ない!」と思いながらも、腹の底から笑ってしまうのが『ぶたのたね』(佐々木 マキ・作 絵本館)。なにしろ主人公のおおかみは、走るのがとても遅い。ぶたよりも遅い。そんなのおかしなことが起きないわけがない。

で、案の定。おおかみは、どれだけ追いかけても、一匹のぶたもつかまえられない。「かわいそう」……思う間もなく登場するのは、「ぶたのたね」「たわわになったぶたの実」「ぞうのマラソン」!?  もてあます感情の、さらにその上をいくバカバカしさ。こんなユーモア絵本に出会えたなら、子どもたちは幸せだ。
「ぶたのたね」
一方で、好奇心が爆発していくのもまた4歳。自然の中をひた走り、好きな虫を追いかけまわし、無心にブロックを作り続ける。そうして成長していく中で、人間関係の悩みが生まれるのもこの頃から。

次回も引き続き4歳のお話。お楽しみに!
※この記事は、「こどもの本」2021年5月号~2022年6月号に連載された「絵本と年齢をあれこれ考える」のWeb記事版です。
▼ 次のエピソード
53 件
いそざき そのこ

磯崎 園子

絵本ナビ編集長

1974年、愛知県生まれ。 絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。 大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。 著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)がある。 絵本ナビhttps://www.ehonnavi.net/

1974年、愛知県生まれ。 絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。 大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。 著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)がある。 絵本ナビhttps://www.ehonnavi.net/

げんきへんしゅうぶ

げんき編集部

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「いないいないばあっ!」と、幼児向けの絵本を刊行している講談社げんき編集部のサイトです。1・2・3歳のお子さんがいるパパ・ママを中心に、おもしろくて役に立つ子育てや絵本の情報が満載! Instagram : genki_magazine Twitter : @kodanshagenki LINE : @genki

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「いないいないばあっ!」と、幼児向けの絵本を刊行している講談社げんき編集部のサイトです。1・2・3歳のお子さんがいるパパ・ママを中心に、おもしろくて役に立つ子育てや絵本の情報が満載! Instagram : genki_magazine Twitter : @kodanshagenki LINE : @genki