『だるまちゃんとてんぐちゃん』(かこ さとし・作・絵 福音館書店)で、お父さんが家じゅうから引っ張りだしてきた帽子やうちわを並べ、その様子を眺めているのはたまらなく楽しい場面。
だけど、それはつらいばかりではない。その気持ちが発端となり、新しい遊びへとつながっていくこともあるのだ。
その感情には理由がある?
イヤイヤ期だってまだまだ終わらない。安定してくるのは、もっとずっと先のこと。よく泣き、よく笑い、よく怒る。だけど確実に違ってくるのは、その感情には理由があるのだということ。
そんなに簡単に気持ちを切り替えられるものではない、けれど……。思いっきり泣くのも、頑張って乗り越えるのも、やっぱりお母さんに甘えるのも。どの感情も3歳の子には全部大切なもの。無理にしまい込まなくたっていい、全部包み込んであげるのが大人の役目だからねと、この絵本は語る。
でも、全てをやり終えたほげちゃんは、なんだかスッキリ幸せそう。あれだけ怒れれば立派なもの。自分のことはさて置いて、子どもたちはほげちゃんをあたたかい目で見守っている。
「低い声を出して真似をする」「兄弟でたたかいごっこをはじめる」などのレビューにもある通り、子どもたちは、読んだ後でも、このやり取りを喜んで再現しては楽しんでみせる。極端な恐怖と安堵の繰り返し、これは絵本の中でしか体験できない感情であり、彼らはそれをわかっている。
見逃せないもの
「ぎゅうにゅう くださあい」。この瞬間に、どれだけの勇気が必要だったろうか。絵本を読みながら、多くの子どもたちは励まされるのである。周りの景色が見えてくるということは、社会との関わりの始まりでもある。関係性も感情も、こうしてどんどん複雑になっていく。