自分と相手が同時に見えてくる
アミちゃんもやっぱりひとりぼっち。コッコさんもアミちゃんも、もじもじもじもじ。だけどそおっと手をつないでみると、だんだん嬉しくなってきて……。
『コッコさんのともだち』(片山 健・作・絵 福音館書店)で繊細に描かれているのは、ひとりがふたりになる瞬間。ふたりがみんなになる瞬間。ひとりでいるより、誰かと遊ぶのって楽しい。みんなで遊ぶのって楽しい。進み方はゆっくり少しずつだけれど、それってものすごい発見なのだ。
その時、3歳児の身体の中に、知らなかった感情が一気に生まれてくる。
視界が広がっていく
器用に体を動かせるようになり、感情を伝えることも上手になり、少しずつ会話もできるようになってきて。自分に余裕が出てくると、途端に周りの景色もクリアに見えてくる。
いつも何となく隣にいた子が今日もいる。あの子が持っているおもちゃは何だろう。この子は自分とはちょっと違うみたい。一緒にいると楽しいな。誰かを意識しながら、視界がどんどん広がっていく。そのことが、彼らの心にどんな変化をもたらしていくのだろうか。絵本の読み方にも影響があるのだろうか。
自分と相手が同時に見えてくる
すると、あひるくんがやってきて「ちょっときせてよ」。ねずみくんはとまどいながらも「うん」。それを見ていたサルくんも「ちょっときせてよ」。さらにあしかくん、ライオンくんと続き、赤いチョッキはどんどん伸びてしまう。
理屈で考えると不条理に感じるが、この繰り返しに子どもたちは大喜びし、ゲラゲラ笑っているというレビューが、絵本ナビにも寄せられる。ねずみくんの気持ちに共感すると同時に、自分もねずみくんのチョッキを着てみたくなってしまうのだ。自分と相手が同時に見えてくる。単純そうで、なんて複雑な感情だろうと思う。
自分が大切にしたいものと、誰かが大切にしているもの。その認識は同時にやってくる。相手のことを考える力というのは、すでに3歳の頃から必要となってくる。