子どもを叩いて叱ってしまった 影響は? やめるには? 発達心理学者が回答

こんなときどうする? 子育てQ&A#98 子どもをたたいて叱ってはいけないの?

教育学博士:渡辺 弥生

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子どもがあまりにも言うことを聞かないと、「手をあげてでも厳しく叱ったほうがいいのかな?」と思うことがあるかもしれません。

でも、それは間違いです。

発達心理学の専門家・渡辺弥生教授が子育ての悩みに答えます。

「子どもをたたいて叱ってはいけないの?」(2歳・女の子)

子どもをたたいて叱ってはいけないの?  写真/Adobe Stock

たたかれたことに驚くだけで意味がない

たたいて叱ると一見効果があるような気がします。

でも、子どもは驚いたり、怖かったりして一時的にやめるだけ。

どうして叱られたのか理解しているわけではありません。

むしろ、何も学べずに、怖い人がいなければ「やる」というようなことがおこります。

また、まねをする可能性もあります。

さらに、たたくことが続くと、しだいにたたき方がエスカレートして、収拾がつかなくなるケースもあります。

そして、子どもに「なんでも〈力〉で解決すればいい」と教えることにつながる可能性だって高いのです。

ふつう大人同士の関係では「たたく」という行為に抵抗を感じます。

それを思えば、まだ幼いわが子を「たたく」ことが、いいことなのか悪いことなのかの判断はつきますね。
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根気よく教えていくのは大変だけど…

子どもに「してはいけないこと」を教えるには、理由をわかりやすく話して聞かせる方法がベストです。

「昨日も言ったのに、また……!」と思いがちですが、大人ではないので、そうは急に覚えられません。

言葉を覚えるときのように、何度もくり返し聞くから理解していくことができるのです。

叱る内容は多いでしょうが、できれば「どうしても教えたい」という最小限のことだけを根気よく伝えましょう。

1~3歳なら、身の危険に関すること、教育方針として教えたいことなど、五つもないはずです。

エネルギーがいりますが、そうやって丁寧に教えたことが子どもの財産になります。

毎日の子育てのなかでは、ストレスがピークになってカッとなることもあります。

そんな傾向を感じたら早めにリフレッシュを。

そして、子どもの困ったように見える言動は、発達の一過程であることが多いので、発達の道筋を調べてみるのもいいですね。

「今、こういう心が育っているから、この行動が出ているんだわ」と分かると、ゆとりをもって子育てができるはずです。 

文/宇野智子 写真/Adobe Stock
※この記事は幼児誌「げんき」に掲載された記事を再構成したものです。
わたなべ やよい

渡辺 弥生

教育学博士(発達心理学、発達臨床心理学)

大阪府生まれ。1983年筑波大学卒業。同大学大学院博士課程心理学研究科で学んだ後、筑波大学、静岡大学、途中ハーバード大学客員研究員を経て、法政大学文学部心理学科教授。同大学大学院ライフスキル教育研究所所長兼務。教育学博士。専門は、発達心理学、発達臨床心理学。主な著書に『まんがでわかる発達心理学』、『11歳の身の上相談』(講談社)、『親子のためのソーシャルスキル』(サイエンス社)など。

大阪府生まれ。1983年筑波大学卒業。同大学大学院博士課程心理学研究科で学んだ後、筑波大学、静岡大学、途中ハーバード大学客員研究員を経て、法政大学文学部心理学科教授。同大学大学院ライフスキル教育研究所所長兼務。教育学博士。専門は、発達心理学、発達臨床心理学。主な著書に『まんがでわかる発達心理学』、『11歳の身の上相談』(講談社)、『親子のためのソーシャルスキル』(サイエンス社)など。

げんきへんしゅうぶ

げんき編集部

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「いないいないばあっ!」と、幼児向けの絵本を刊行している講談社げんき編集部のサイトです。1・2・3歳のお子さんがいるパパ・ママを中心に、おもしろくて役に立つ子育てや絵本の情報が満載! Instagram : genki_magazine Twitter : @kodanshagenki LINE : @genki

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