脳科学者に聞く! 図鑑で賢い子に育てる方法とは「脳への働きかけ」

「16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える究極の子育て 『賢い子』は図鑑で育てる」の著者・瀧靖之先生に、「自分で夢を叶える賢さ」を育む方法を聞くシリーズ第2回。

ライター:笹間 聖子

テーマ

「図鑑でどうやって脳に働きかけるの?」
子どもには、できれば賢く育って、自分の力で夢を叶えてほしいもの。「でもどうやったら、賢く育てられるのか分からない」というママ・パパのために、簡単に毎日に取り入れられる図鑑を使って“脳を育む”方法について、脳科学者で、東北大学加齢医学研究所教授の瀧靖之先生にお伺いするシリーズ連載です。

今回のテーマは、「図鑑で脳に働きかける方法」をご紹介します。

2歳になったら知的好奇心のサポートを

図鑑で脳に働きかけるためには、ママ・パパが、「子どもの知的好奇心が内側から湧き起こる」ようにサポートしてあげる必要があります。

知的好奇心は、だいたい2歳前後から現れてくるものです。なぜなら2歳ごろになると、自分と外の世界、あるいは他人との区別がつくようになってくるからです。

それに伴って、「相手は自分と異なる心、機嫌を持つ存在である」ということも、だんだん分かってきます。すると、さまざまな人や現象に興味を持つようになるのです。

これが、知的好奇心のはじまりです。

見たり、聞いたり、感じたりする機会を作る

知的好奇心を持つために、大切な要素があります。それは、「単純接触効果」です。簡単に言えば、「触れる」ということです。
ママ・パパが安全を判断した上で、動物や植物にも触れる機会を
これはよく心理学の大原則としても言われる話ですが、私たちが人やモノ、さまざまな対象に興味関心を持つのは、その人、その対象物に頻繁に接触しているからだと言われています。その結果、好意を持つのです。

ですから、ママ・パパは「なにかに興味を持たせたい」と思ったら、その対象にできるだけ頻繁に接触させてあげましょう。

見たり、聞いたり、感じたりする機会を作ってあげることが大切です。図鑑の前に、まずはここまでが重要なことを、ぜひ覚えておいてください。

図鑑で名前を知り、関心を持つ

ここからがいよいよ図鑑の出番です。大人も子どももそうですが、その人や対象物に何も知識がない状態だと、目に入っても特に気にならないものです。

例えば白い蝶が飛んでいても、知識がなければ「ああ、白い蝶が飛んでいる」というだけで終わってしまいます。

でも、もしほんの少しでも、蝶の名前を知っていたら。同じ「白い蝶」でも、モンシロチョウもスジグロシロチョウもいて、モンキチョウのメスもいる……と知っていたら、「これはどの蝶だろう?」と関心を持てます。
「これはどの蝶だろう」と考えられることが、興味・関心の第一歩に
同じように、車に興味がなければ、どれも「ただ走っている車」にしか見えませんが、車種を知っていれば、「これはトヨタのカローラだ」「レクサスだ」など、一歩進んだ目で見られますよね。
だから、ほんの少しだけ“図鑑で予習”をしてあげることが大切なのです。

“予習”と言っても、そんなに大げさなことではありません。興味・関心を持つための種をまいてあげるのです。

図鑑を一緒に読んで、好奇心を伸ばす種をまく

では、具体的にどうしたらいいかというと、第1回でもお話ししましたが、子どもたちは基本的に、模倣によってさまざまな能力を獲得します。

本当にさまざまな周囲の環境を模倣しますが、やはり一番は近くにいるママ・パパの模倣です。親が最も子どもの行動に影響を与えるので、この時期に図鑑を一緒に見る、その時間を作ってあげるだけでいいのです。

それこそが、好奇心を伸ばす種をまくということです。
図鑑を一緒に見る時間を作りましょう

子どものころの知的好奇心が、やがて脳の萎縮を抑える

ちなみに知的好奇心レベルが高い人は、大人になってから脳の萎縮が抑えられることが脳科学の研究で分かっています。つまり、長く脳を健康を保てるということです。

なかでも、影響の大きいのは側頭葉と頭頂葉のちょうど間のあたり、耳の上ぐらいの場所である「側頭頭頂接合部」という脳の領域です。ここは、ワーキングメモリーやIQなど、考えたり判断をするために重要な領域だと言われています。

知的好奇心レベルが高い人は、こういった領域の萎縮、枯れを抑えられることが分かっていますので、小さなころにその種をまいておくことは、将来にも大いに役に立ちますよ。
好奇心の種は、大人になって脳の萎縮を抑える
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「16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える究極の子育て 『賢い子』は図鑑で育てる」著・瀧靖之
「16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える究極の子育て 『賢い子』は図鑑で育てる」著・瀧靖之
写真提供:ピクスタ
たき やすゆき

瀧 靖之

医師、医学博士

東北大学加齢医学研究所 教授/スマート・エイジング学際重点研究センター センター長 東北大学大学院医学系研究科博士課程卒業。東北大学加齢医学研究所および東北メディカル・メガバンク機構で、脳のMRI画像を用いたデータベースを作成。脳の発達、加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍する。読影や解析をした脳MRIは16万人以上。 『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える究極の子育て「賢い子」は図鑑で育てる』(講談社)、『「賢い子」に育てる究極のコツ』(文響社)ほか著書多数。

東北大学加齢医学研究所 教授/スマート・エイジング学際重点研究センター センター長 東北大学大学院医学系研究科博士課程卒業。東北大学加齢医学研究所および東北メディカル・メガバンク機構で、脳のMRI画像を用いたデータベースを作成。脳の発達、加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍する。読影や解析をした脳MRIは16万人以上。 『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える究極の子育て「賢い子」は図鑑で育てる』(講談社)、『「賢い子」に育てる究極のコツ』(文響社)ほか著書多数。