最初の発見から10年! アンモナイト化石の新種の見つけ方、研究方法を古生物学者が解説!

【ちょっとマニアな古生物のふしぎ】古生物学者・相場大佑先生が見つけた古生物のふしぎ

2025.10.08

2025年8月に、北海道から中生代白亜紀のアンモナイト化石の新種を発見しました。今回は、その新種はどうやって見つけたのか、どうやって研究を進めたのかをお話しします。

実は発見は10年前!

新種の化石を見つけたのは実は今から10年も前のことです。当時、僕は北海道にある三笠市立博物館というところで働きながら、博士号を取るための研究をしていました。

冬の日、仕事が終わったあとに化石が保管されている収蔵庫で研究試料を探していました。昔の大学院生が北海道で採集した化石の中に、見たことのない形のものが1つありました。

僕はその当時から変わった形の殻をもつ「異常巻アンモナイト」と呼ばれるグループの進化を調べていて、北海道から見つかる種類の形はしっかりと頭に入っていました。なので、1cmほどの小さな欠片の化石でしたが、見た瞬間にそれが新種とわかりました。

三笠市立博物館の収蔵庫で見つけた新種化石の最初の1つ

けれども、新種として発表するにはその化石はあまりに部分的なものでした。殻の形の全体像がわかる、もっと良い化石が必要です。そこで、化石が採集された地層を改めて調べることに決めました。

フィールドワークでの発見

次の春、雪解けを待って、博物館のある町から車で約2時間のオビラシベ川を訪れ、新種が見つかったとされる地層とその周辺を重点的に調査しました。

北海道のアンモナイトは「コンクリーション」と呼ばれる楕円形のカチカチの岩の中から出てきます。そのコンクリーションを掘り出して、手当たり次第にハンマーで割ってみました。いくつか割ってみると、出てきました。収蔵庫で見つけた新種と同じ種類と思われる化石です。でも、それも部分的なものでした。

オビラシベ川で見つけた新種化石の2つめ(標本は三笠市立博物館に登録)

それから数年の間、博物館の勤務の合間を縫ってはフィールドワークに出て、化石の収集を続けました。

3年ほど探すと、手元には新種の化石は合計6個になり、中には巻きが何段もあるような良い化石も採れました。

その後のフィールドワークで集めた新種化石(すべて三笠市立博物館に登録)

コレクターの協力

三笠市立博物館には、地元でアンモナイト化石を集めるコレクターさんがたくさん出入りしていました。そういう種類を集めていること話すと、「それに似たものを持っている」と何人かの方が持ってきてくれました。

また、コレクターさんだけでなく、博物館には研究者も出入りします。ある研究者が博物館に来たときに、その種類の話をしたら、やっぱり1個持っているとのことで提供してくれました。それでさらに5個体が集まりました。

コレクターの方々に提供いただいた新種化石(すべて三笠市立博物館に登録)

他の博物館のコレクション

勤務先以外の博物館も調べました。すると、九州大学総合研究博物館と札幌市博物館活動センターにも同じ産地のものが1つずつあることがわかりました。ここまでで発見から5年くらいです。また、論文を提出する直前には和歌山県で見つかった化石も新種と同種であることがわかりました。

他の博物館で見つけた新種化石(左から、札幌市博物館活動センター、九州大学総合研究博物館、和歌山県立自然博物館所蔵)
この「新種」はいったい何の仲間?

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