
2025年中学入試に多数出題! 元教師の実体験から生まれた「色覚障がい」の物語 「ありのままでいい」主役の少年に込めた確固たる思い
『ぼくの色、見つけた!』著者志津栄子さんインタビュー
2025.06.14
ライター:山口 真央
ありのままの自分でいられる場所はきっとある
──第71回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書に『ぼくの色、見つけた!』が選定されました。おめでとうございます。
志津:お知らせをいただいたとき、まさか私の身にこんなことが起こるなんてと、驚きしかなく、実感がわきませんでした。
驚きはじわじわと、喜びに変わっていきました。
多くの方にお力添えをいただいたおかげで物語が完成したことに、感謝の気持ちでいっぱいです。
いま、主人公の信太朗が、私の手を離れてひとりでどんどん歩いていく手ごたえを感じています。
私が教師をしていたとき、課題図書が選定されると、物語を読み聞かせて、クラスのみんなで感想を出し合うことが常でした。
『ぼくの色、見つけた!』を読んで、信太朗に出会った子どもたちはどんなことを思うのでしょう。知りたくてたまりません。

──最後に、『ぼくの色、見つけた!』をこれから読もうと考えている方々に、メッセージをお願いいたします。
志津:あなたには、好きなことや、楽しいことはありますか。『ぼくの色、見つけた!』は、自分が夢中になれることをさがす物語です。
このお話のなかでは、夢中になれることを「ララ」と呼んでいます。
主人公の信太朗は、弱点だと思っていた「色」に救われました。
ありのままの自分でいられる場所はきっとあります。弱いところや苦手なことを見せ合えば、必ず助けてくれる人がいるはずです。
少なくとも、小学校の教室はそうあってほしい。私が長年、考えてきたことが『ぼくの色、見つけた!』には詰まっています。
もちろん、大人になってからでも遅くはありません。
私もいつか新しい帽子をかぶって、恋人に会いに行くかもしれません。一歩踏みだせば、世界は楽しいのです。
志津栄子
1961年、岐阜県生まれ、在住。2022年、『雪の日にライオンを見に行く』にて、第24回ちゅうでん児童文学賞大賞受賞。

第24回ちゅうでん児童文学賞で大賞をとった志津栄子の最新作は、「色覚異常」に向き合う子どもと家族を描いた物語。
トマトを区別できない、肉が焼けたタイミングがわからないことから、色覚異常が発覚し苦しむ信太朗は、母親から悪気なく「かわいそう」と言われ、試すような行為にガッカリ。さらに症状を知らないクラスメイトから似顔絵のくちびるを茶色に塗ったことを馬鹿にされ、すっかり自信を失ってしまいます。
学年が上がり、クラス担任が変わり自分自身に向き合ってくれたことで、自分の目へのとらえ方がすこしずつ変化する信太朗。そして信太朗が見つけた、彼しか見ることのできない「色」とは──。
「色覚異常」の理解が深まる、オンリーワンの物語をお楽しみください。
絵/末山りん
山口 真央
幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。
幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。