
2025年中学入試に多数出題! 元教師の実体験から生まれた「色覚障がい」の物語 「ありのままでいい」主役の少年に込めた確固たる思い
『ぼくの色、見つけた!』著者志津栄子さんインタビュー
2025.06.14
ライター:山口 真央
色覚障がいの人が見ている世界をそのまま言葉にしたかった

──『ぼくの色、見つけた!』を執筆するうえで、印象に残っていることを教えてください。
志津:「ちゅうでん児童文学賞」をいただいたとき、お世話になっている作家の先生に報告すると「贈呈式までに新しく1作書きなさい。それを持っていくのですよ」とアドバイスをもらいました。
一生懸命に原稿を書いて持参したのですが、1回目の贈呈式ではどなたに渡したらいいのかもわからずに、持ち帰ったのです。
2度目の贈呈式で、富安陽子先生にその話をすると「今日は持ってこなかったの?」と聞かれ「あります!」とこたえると、編集さんに橋渡しをしてくださったのです。
それが『ぼくの色、見つけた!』でした。
編集さんは「色覚障がいというテーマがいい」とおっしゃって、私に寄り添ってくださいました。編集さんの力を借りながら、推敲を重ねました。
信太朗が見ている世界をそのまま言葉にすることに、いちばん苦心したと思います。
多くの方に取材をするなかで、色覚障がいを抱える人は「赤」や「緑」などの一般名称で色をとらえているのではなく、「トマトの色」、「葉っぱの色」などと、物に置き換えて色を把握していることがわかりました。
それから編集さんと相談して、信太朗が色の名前をいわずに、「チョコの色」などと物におきかえて表現することにしました。大変でしたが、とてもやりがいのある工程でした。