2025年中学入試に多数出題! 元教師の実体験から生まれた「色覚障がい」の物語 「ありのままでいい」主役の少年に込めた確固たる思い

『ぼくの色、見つけた!』著者志津栄子さんインタビュー

ライター:山口 真央

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色覚障がいの男の子が主人公の物語『ぼくの色、見つけた!』が、いま話題を呼んでいます!

2025年の中学入試で、暁星、大妻、横浜雙葉、跡見学園など、多くの学校の試験問題につかわれました。

さらに2025年4月には、第71回青少年読書感想文全国コンクール課題図書(小学校高学年の部)に選定。

正直で真っ直ぐな心を持つ主人公・信太朗が、色覚障がいの悩みから解き放たれていく姿は、読む人にエールを送ります。

作者は、第24回ちゅうでん児童文学賞で大賞を受賞した志津栄子さんです。

もともと教師の仕事をしていた志津さんが、色覚障がいを描こうと思った理由とは。

執筆中の葛藤や、読書感想文全国コンクールの課題図書に選ばれた気持ちを伺いました。

執筆のきっかけはひとりの生徒でした

(『ぼくの色、見つけた!』より)

──『ぼくの色、見つけた!』を描こうと思ったきっかけを教えてください。

志津:物語のなかで、信太朗の絵を見たクラスメイトの友行が「チョコレートを食べたのか」という場面があります。

信太朗は、赤と茶色の区別がつきにくく、くちびるを茶色に塗ってしまったのです。

これは私が教師をしていたころ、実際に起きたいくつかの出来事をもとにしています

私が担任していたその子は、小学1年生でした。お母さんが学校に相談に来られて、何度かお話をしました。

母方の祖父が色覚障がいであることが判明したのですが、本人よりもお母さんのほうがこまっていた印象でした。

それが『ぼくの色、見つけた!』で描いた、信太朗の母親のイメージにつながっています。

また別の子の話ですが、ある日、クラスの廊下に掲示されている自画像のなかに、明らかに色味のちがうものがありました。

他の子どもたちが、その絵を指さして揶揄していたことが、ずっと忘れられずにいたのです。

色覚障がいについて学ばなければいけないと強く思い、長い年月がたってしまいましたが、子どもたちに届ける物語を書くことができました。

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