“カラフルな魔女”角野栄子さんの幸せな暮らしの秘訣は「好き」と「自由」

映画『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』と「魔法の文学館」で角野栄子さんの作品世界を堪能する

映画『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』で自由なライフスタイルが注目を集めている、児童文学作家・角野栄子さん。 ©KADOKAWA

「魔女の宅急便」シリーズ(福音館書店)で知られる児童文学作家・角野栄子さんの世界観を表現した児童文学館「魔法の文学館」が、2023年11月に東京都江戸川区「なぎさ公園」内にオープンしました。

真っ白な外観の建物に入ると、屋内は「いちご色」一色! 「いちご色」は角野さんのお気に入りの色で、鎌倉にあるご自宅の仕事部屋の壁や本棚、お洋服、眼鏡など、身の回りのいろんなアイテムにも取り入れられています。

好きなモノに囲まれ、89歳になった今でも毎日楽しく、ひとり暮らしを満喫する角野さんは、まさに“カラフルな魔女”。そんな角野さんの人生観やライフスタイルを追ったドキュメンタリー映画『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』が2024年1月26日に公開されました。

「誰よりも自分が楽しむこと」をモットーに、54年間コツコツと大好きな執筆を続けてきた角野さんご自身と作品の魅力を、映画と文学館双方から紐解きます。

角野さんが「不自由」な戦争体験を経て手に入れた「自由な気持ち」

映画『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』は、4年間にわたって角野栄子さんの日常に密着したドキュメンタリーです。元になったのは、Eテレで2020年から22年にかけて全10回放送された同名番組。映画版では追加撮影と再編集が施されており、はじめて見る方でも見やすい作品になっています。

©KADOKAWA

鮮やかな色の眼鏡とワンピースがトレードマークの角野さん。「自分にとって気持ちがいいもの」というモットーに、遊ぶように暮らし、遊ぶように書き、毎日を心地よく暮らしています。角野さんが現在のスタイルにたどり着いたのは、子どものころにあった戦争での、窮屈で我慢を強いられた生活から解放されたときに感じた、「この自由な気分はもう絶対手放したくない!」という思いが発端になっているといいます。

角野さんは、5歳で母を亡くした後すぐに戦争が始まり、10歳で終戦を迎えました。大学卒業後、出版社勤務を経て結婚し、24歳からブラジルに渡り2年滞在しましたが、現地の暮らしになじめずに後悔した日も。そんなとき、近所に住んでいたルイジンニョン少年が、角野さんにポルトガル語を教えてくれました。その体験を元に描いた『ルイジンニョン少年:ブラジルをたずねて』で、作家としてデビューしました。

ネガティブな感情も生きる活力になる

波瀾万丈の人生を歩んだからこそ、角野さんが生み出す作品には、楽しさや喜びだけでなく、悲しみや怒りといった負の感情の影がしばしばみられます。

13歳の少女が親元を離れ、さまざまな困難を乗り越えてひとり立ちする姿を書いた『魔女の宅急便』(福音館書店)。遊んでくれない友達をこらしめるために「のろいさん」を呼んでしまった子どものおはなし『リンゴちゃんとのろいさん』(「リンゴちゃん」シリーズ、ポプラ社)。太平洋戦争のさなか、耐えがたい孤独感と飢餓感に押しつぶされそうになりながら、懸命に生きる少女の日常を書いた『トンネルの森 1945』(KADOKAWA)。どの作品にも日常のすぐ側に「怖さ」が存在し、読み手は「怖さ」の正体を知りたいという好奇心にかられ、主人公と一体となって不思議な世界に足を踏み入れてドキドキわくわくし、最後にホッと落ち着く感情を味わうことができます。

人の心はネガティブな感情でも大きく動き、ときに生きる活力になる──映画で角野さんの人生や生き方を知ると、物語を生み出す原動力となった思いを知ることができ、改めて作品の放つパワーと魅力に気づかされるはずです。

なにより、「想像力こそ、人間が持つ一番の魔法」と語る角野さんからあふれ出る幸せのオーラを浴びると、映画を観ている側も幸せな気分になります。毎日よく食べ、よく笑い、身近なところで起きるちょっとした出来事に心を動かす──そんな角野さんの“心の自由さ”に、きっと共感するものが見つかるはず。ぜひ映画を観て、自分の「好き」を見つけてみてください。

映画『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』
角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー

語り:宮﨑あおい
監督:宮川麻里奈 音楽:藤倉大
プロデューサー:山田駿平 宣伝プロデューサー:大﨑かれん 編集部協力:岡山智子
ラインプロデューサー:松本智恵 撮影:髙野大樹 編集:荊尾明子 音響効果:河原久美子 監督補:岡澤千恵
制作:NHKエンタープライズ 制作協力:角野栄子オフィス エネット 映像提供:NHK 製作・配給:KADOKAWA

©KADOKAWA

映画『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』本予告【2024年1月26日(金)全国公開】

89歳、「魔女の宅急便」の作者が贈る、毎日を輝かせる魔法。 2024月1月26日(金)角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー
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