子どもを「運動が得意」に育てる 神経系がグンと伸びる10歳前後の「黄金期」がカギ!
【子どもの運動神経を開発する方法 #3】一つを極めるより複数のスポーツをするのがポイントだった!
2024.06.05
運動神経は生まれつきのものではなく、経験を積むことで開発することができます。なかでもゴールデンエイジと呼ばれる10歳前後は、神経系が著しく発達する時期。そのため、この時期には子どもにさまざまな運動をさせてあげたいものです。
「ただ、まだ発達途中で体自体ができていない時期だからこそ、気をつけておきたいポイントもいくつかある」と、東京保健医療専門職大学特任教授である東根先生は話します。
シリーズ第3回では、ゴールデンエイジに運動をするときの注意点から、運動神経を開発する方法、親の関わり方のポイントまで紹介します(全3回の3回目、#1、#2を読む)。
◆東根 明人(あずまね あきと)
一般社団法人コーチングバリュー協会代表理事。東京保健医療専門職大学特任教授。
1981年早稲田大学教育学部卒業。1984年順天堂大学大学院修了。1995年JOC(日本オリンピック委員会)の在外研修により、ライプチヒ大学(ドイツ)に留学しコーディネーショントレーニングを学び、以後日本での普及に取り組む。JOCタレント発掘プロジェクト、日本体育協会ジュニアスポーツ指導員カリキュラム策定委員を務めた。
目次
“ゴールデンエイジ”とは?
「運動神経を開発するのに最も効果的な時期が、8~12歳ごろのゴールデンエイジ。なぜなら、この時期に、運動神経にかかわる神経系が成人の約95%にまで発達すると考えられているからです。
生まれてから20歳までの発達において、神経型、一般型、生殖型、リンパ型の4つの発育度合いを表した『スキャモンの発育曲線』というグラフがあります。例えば、身長や体重等の成長を示す一般型、生殖器などの成長を示す生殖型は、思春期あたりにグンと成長し、20歳前後に100%に達します。
一方、神経系は成長が早く、10歳ごろにはほぼ完成してしまうのです。特に8~12歳ごろは、神経系の発達が著しい時期。かつ、一生の中で最も運動技能を獲得するスピードが早い黄金期として、“ゴールデンエイジ”と呼ばれます。
ゴールデンエイジにさまざまな動きを経験することで、多様な神経回路をつくることができます。すると、自分の体を思ったとおりに巧みに動かすことができる、コーディネーション能力が高まるのです」(東根先生)
ゴールデンエイジ期の注意点は?
ゴールデンエイジは神経系がグンと発達する時期ですが、それだけに注意したい点がいくつかあると東根先生。
「大事なのは、偏った動きだけを行わないこと。ある特定の動きを日々練習していけば、もちろんその動きはどんどん上手くなっていくでしょう。しかし、その他の動きに関連する神経回路は発達しないままなので、新たな動きをしたときにぎこちなくなるなど、応用がきかなくなってしまうこともあります。
これは運動神経が良い状態とはいえませんから、ゴールデンエイジのころにはいろいろな動きを経験させてあげてください。メインで行っているスポーツから離れて、ときにはスキーをしたり、ファーミング(畑あそび)をしたりと、別の運動や活動を行うことはいいリフレッシュにもなります。
また、大人と同じような動きができるようになるので、つい練習をしすぎてしまうこともあります。ですが、やりすぎないことも非常に大切です。トレーニングに用いられている考え方に『ルーの法則』というものがあります。簡単にいうと、『筋肉は使わないと萎え、使うと伸びるが、使いすぎると壊れる』という法則です。
前述のとおり、神経系は大人に近いレベルにまで発達する時期ですが、体自体は大人の約50%しか発達していません。そのためハードなトレーニングをしてしまうと、その負荷に体が耐え切れず、大きな怪我につながってしまうことがあります。
筋力や持久力のトレーニングは、体ができていく中学生以降に取り組むようにし、小学生のうちは神経系のトレーニングを重点的に行うようにしましょう」(東根先生)
さまざまなスポーツを経験することが大事
ゴールデンエイジは、体や脳も発達し、より高度な動きができるようになります。大人とほとんど同じ動きができ、かつルールも理解できますから、遊びよりも何かしらのスポーツを楽しむのが良いと東根先生は話します。
「特にスポーツは、『リズム能力』『バランス能力』『反応能力』『認知能』『操作能力』といった5つのコーディネーション能力(#1を読む)すべてを使うため、運動神経をバランス良く開発させるのに最適です。
ゴールデンエイジ期にスポーツをするなら、“全身運動”“微細運動”に加えて(#2を読む)、“協調運動”の要素があるものがおすすめです。協調運動とは、他の人と協働しながら行う運動のこと。協調運動をすることは、予測能力や社会性を身につけることにつながります。
球技はチームで行うことが多いので、協調運動です。さらには、ボールを扱うため微細運動にもあたるので、テニスや野球、サッカーなど、一つは行っておくと良いですね。
全身運動および微細運動・協調運動それぞれのおすすめのスポーツは以下です」(東根先生)
〈全身運動〉
・トランポリン
・水泳
・スキー
・陸上競技
・格技
・ダンス
〈微細運動・協調運動〉
・バドミントン
・テニス
・サッカー
・野球
・バスケットボール
・ハンドボール