子どもを「運動が得意」に育てる 神経系がグンと伸びる10歳前後の「黄金期」がカギ!

【子どもの運動神経を開発する方法 #3】一つを極めるより複数のスポーツをするのがポイントだった!

ポイント①勝ち負けにこだわらない(運動神経を開発する親の関わり方)

多くのスポーツには、勝ち負けが伴います。しかしスポーツの本質は勝ち負けではありません。その場の状況に応じて、次の一手を瞬時に判断・行動するのが面白いところです。勝った・負けたはただの結果なので、あまりそれにとらわれすぎないでと伝えてあげましょう。

また子どもよりも、ママ・パパのほうが熱心になってしまうこともあります。しかし、大人が熱くなりすぎると子どもは嫌になってしまうことも少なくないですから、ママ・パパも普段から勝ち負けにこだわらないように気をつけましょう。

ポイント②フィードバックをしてあげる(運動神経を開発する親の関わり方)

幼児期と同様にゴールデンエイジのころも、大人がきちんと子どもにフィードバックをしてあげることが大切です。新たな技を習得したときや良いプレーをしたときには、必ず感じたことを伝えてあげてください。子どもの有能感につながったり、やる気を引き出すきっかけになります。

またぜひ行ってほしいのが、試合があった場合、勝ったときには気になった点・改善点を、逆に負けたときには良かった点を一緒に考えてみること。勝ったときはその結果に満足してしまいがちなので、あえて気になった点・改善点を考えることで、子どもの向上心に火がつくと思います。

一方で負けたときには、子どもは“負けた”という結果にとらわれ、落ち込んでしまいます。この場合は、良かった点や頑張った点にスポットを当てて、運動へのモチベーションが下がらないようにうまくフォローしましょう。

ただ、子どもは試合をしているときは必死ですから、自分がどのようなプレーをしたかはあまり覚えていないことも。そのため、子どものほうから答えが出てこなかったら、客観的に試合を見ていたママ・パパがあの場面でどんな気持ちだったか、あるいはどうしたかったのか聞いてあげるのも手です。

ポイント③「自分でどうにもできないことは気にしない」とアドバイス(運動神経を開発する親の関わり方)

子どもに伝えてあげてほしいのが、「自分がコントロールできないことにエネルギーを使わない」ということ。例えば試合中、納得できないジャッジを審判が下したとします。しかしそれに怒ったり不満を言ったりするのは、エネルギーの無駄遣いです。

余計なところにエネルギーを使うと、100%自分のプレーに力を注げなくなってしまいます。「仕方のないことは仕方ない」とパッと切り替えられるよう、大人がサポートしてあげてください。その切り替え能力も、コーディネーション能力を養ううえでは大切です。

黄金期に培った運動神経は一生もの

「体力などは運動をやめると落ちてしまいますが、運動神経にかかわる神経回路は、一度形成させてしまえば、急激に衰えることはありません。そのため、神経系が完成に向かう8歳~12歳ごろのゴールデンエイジ期を見逃さず、この時期にさまざまなスポーツを経験させてあげてください。

継続的に体を動かしていくことで、運動神経は着実に開発されていきます。私が指導してきた子どもたちは、最初は体を動かすのがぎこちなくても、運動を続けていくうちに、スムーズに体を動かせるようになりました。また、自分で考え、判断する力も身につき、自分の意見をどんどん言えるようになっています。

それが、『次はこの技をやってみたい』『次の試合で違ったプレーに挑戦したい』など、新たな良い意識と感情を生み、どんどん運動が好きな子に育っていきます。

コーディネーション運動の指導風景。続けていくうちに、子どもたちは自分の思った通りに体を動かせるようになります。  写真提供:コーチングバリュー協会

ママ・パパは、ぜひそうした子どもの自発性や意欲、挑戦を後押ししながら、成長を見守ってあげてください」(東根先生)

体を巧みに動かすことはもちろん、コーディネーション能力に含まれる「その場の状況に応じて、自分で考え、判断する力」は、人生のさまざまな場面で必要です。子どもの自発性や柔軟性を育てることにも意識を向けながら、幼いうちからさまざまな運動経験をさせてあげましょう。

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◆東根 明人(あずまね あきと)
一般社団法人コーチングバリュー協会代表理事。東京保健医療専門職大学特任教授。
1981年早稲田大学教育学部卒業。1984年順天堂大学大学院修了。1995年JOC(日本オリンピック委員会)の在外研修により、ライプチヒ大学(ドイツ)に留学しコーディネーショントレーニングを学び、以後日本での普及に取り組む。JOCタレント発掘プロジェクト、日本体育協会ジュニアスポーツ指導員カリキュラム策定委員を務めた。
主な著書に、『「動きことば」で苦手な子も楽しめる! 幼児のためのコーディネーション運動』『楽しみながら運動能力が身につく! 幼児のためのコーディネーション運動』(明治図書出版)など。


取材・文/阿部雅美

『子どもの運動神経を上げる方法』の連載は、全3回。
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(公開日までリンク無効)

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あずまね あきと

東根 明人

Akito Azumane
東京保健医療専門職大学特任教授

一般社団法人コーチングバリュー協会代表理事。東京保健医療専門職大学特任教授。 1981年早稲田大学教育学部卒業。1984年順天堂大学大学院修了。1995年JOC(日本オリンピック委員会)の在外研修により、ライプチヒ大学(ドイツ)に留学しコーディネーショントレーニングを学び、以後日本での普及に取り組む。JOCタレント発掘プロジェクト、日本体育協会ジュニアスポーツ指導員カリキュラム策定委員を務めた。 【主な著書】 『「動きことば」で苦手な子も楽しめる! 幼児のためのコーディネーション運動』『楽しみながら運動能力が身につく! 幼児のためのコーディネーション運動』(明治図書出版)など

一般社団法人コーチングバリュー協会代表理事。東京保健医療専門職大学特任教授。 1981年早稲田大学教育学部卒業。1984年順天堂大学大学院修了。1995年JOC(日本オリンピック委員会)の在外研修により、ライプチヒ大学(ドイツ)に留学しコーディネーショントレーニングを学び、以後日本での普及に取り組む。JOCタレント発掘プロジェクト、日本体育協会ジュニアスポーツ指導員カリキュラム策定委員を務めた。 【主な著書】 『「動きことば」で苦手な子も楽しめる! 幼児のためのコーディネーション運動』『楽しみながら運動能力が身につく! 幼児のためのコーディネーション運動』(明治図書出版)など

あべ まさみ

阿部 雅美

Masami Abe
ライター

タイ・バンコクの日本人向け情報誌・WEBメディア、東京の編集プロダクションを経て、フリーランスの編集・ライターに。そのなかで保育雑誌や書籍、企業誌、食メディアなど様々な媒体を経験。 現在は、育児・教育や占い、グルメなどさまざまなジャンルの記事を編集・執筆している。

タイ・バンコクの日本人向け情報誌・WEBメディア、東京の編集プロダクションを経て、フリーランスの編集・ライターに。そのなかで保育雑誌や書籍、企業誌、食メディアなど様々な媒体を経験。 現在は、育児・教育や占い、グルメなどさまざまなジャンルの記事を編集・執筆している。