ベビーカー100台超を徹底比較 ジャーナリスト厳選「移動に強いベビーカー」
安全・快適な「ベビーカー移動」のために2023 #3~「ベビーカージャーナリストに聞く選ぶ基準」編~
2023.02.22
ライター:遠藤 るりこ
2012年、長男誕生前にベビーカーのリサーチを始めた下田隆一郎(しもだ・りゅういちろう)さん。自身の子育て経験から、ベビーカージャーナリストを名乗り、ブログ「東京ベビーカーDB」を更新しています。
約10年で押し比べてきたベビーカーの数はなんと100台超! 「どんな1台が最適かわからない」というパパママに個別相談サービスをおこなってきたといいます。
「ベビーカーの選びの正解はスペック比較だけではわからない」が口癖の下田さんに、公共交通機関利用が多い世帯に向けて、ベビーカー選びのポイントを聞きました。
押すのか持つのか 2つの軸で考える
フリーのウェブディレクターとして働く、下田隆一郎(しもだ・りゅういちろう)さんは、3児のパパ。2012年の長男誕生の際にベビーカー選びをはじめたことがきっかけで、以来10年間、100台を超える数のベビーカーを押し比べてきました。自身のブログには、国内・海外問わず定番機種から珍しい機種まで、ベビーカーの最新情報が満載です。
また、ブログ読者たちから個々の生活スタイルを聞き取り、最適な1台のアドバイスもおこなってきた下田さんですが、一体どんなポイントでベビーカー選びをしたらいいのでしょうか。
「移動しやすい1台を考えるうえでは、ベビーカー利用におけるX軸(押して歩く)とY軸(持って歩く)の両方を想定することが重要です。日常の行動半径でどちらの割合が高いのか。X軸重視かY軸重視かを決めていきましょう。
X軸重視の場合は、多少重くても走行性が高い機種=悪路に強く、押し心地の軽いものがオススメ。一方、Y軸重視の場合は、2cm程度の段差を乗り越える性能を最低条件として、軽く持ち運びに便利なものがオススメです」(下田さん)
知っておきたい5つの数字とは
「数字、いわゆるスペックだけで決めるものでもないのですが」と前置きしながらも、公共交通機関を利用することが多いパパママのベビーカー選びでは、以下の「5つの数字」を頭に入れておくと良い、と下田さん。
「持って軽いと感じるのは、6kg台以下まで。折りたたんで持ち上げたり、階段の持ち運びができるのはこの程度の重さまでが限度でしょう。また、一般的な改札を通過するには、幅が55cm以下のものを。この幅なら、バス通路幅も安心できます」(下田さん)
さらに、一般的なベビーカーが安全に越えられる段差の高さは、おおよそ3cm以内。これは、人差し指の第二関節の長さ程度です。
「この段差の高さを目安にして、移動で多用するルートで段差が多い道が想定されるのか考えてみましょう。試乗する際には、これくらいの段差を、子どもを乗せた状態で難なく越えられるのかどうか、確認したしたほうが良いですね。
あとは、飛行機や新幹線などの長距離の移動が予測される場合は、機内持ち込み可能な、最短辺25cm以下のものがベスト(※各航空会社の規定により異なる)です」(下田さん)
ベビーカーに乗車する子どもの年齢も、重要な数字だと下田さん。
「子どものベビーカーの乗り方が変わり始める時期が、2歳半(月齢30ヵ月)です。しっかり歩き始めるとベビーカーを残して子どもに置いていかれることになります。このころを見据えて一台を選ぶというのもひとつの手。発育にあわせた乗り換えで保護者がラクになる場合もあるんです」(下田さん)
この数字を加味した上で、最適なベビーカー選びを、と言いたいところですが「もっとも手っ取り早く正解に近づけるのは、目の前にある体験談を参考にすることかも」と下田さんは続けます。
「例えば、プレママ・プレパパの時期から世間の育児中パパ・ママのベビーカーを押す様子に目を配り、『あっ、この夫婦素敵』、『子どもが幸せそうに乗ってる!』と、シチュエーションに共感を覚えたら、気さくに声をかけてみてもいいと思いますよ。
そのベビーカーが素敵だと感じたのだけれど、良いところや不満点、もし次に買うならどれを選びますか? など、突っ込んで聞いてみられるような勇気も大事かなと思います」(下田さん)
暮らす地域や生活スタイル、子どもの月齢などで、最適なベビーカーが変わってくるもの。まずは前述の数字と、目の前の体験談を参考にされると良いでしょう。
子連れ移動は放っておいてほしいがホンネ?
下田さんはベビーカーでの移動が世の中に迷惑だと思われがちな現状について、どう感じているのでしょうか。
「日本のパパママは、子どもとの移動時『大変なことがあれば手伝ってくれたらうれしい』と同時に、『できればそっとしておいてほしい』という気持ちもあると思います。
僕個人の勝手な展望ですが、Apple WatchやiPhoneといったデバイスとネットが連携し、子育て中の《家族》と、子育てしている人を手伝う気がある《他人》がゆるく薄くシグナルを感知しあえるようなサービスができたらいいのではと思います。
『助けてほしいです』の気持ちと、『助けてあげたいけど迷惑かな?』を上手につなげてくれるサービスがあれば、お互いが幸せですよね」(下田さん)
一方で、2022年末、双子のベビーカー移動で話題になった大山加奈さんの件については「双子の移動問題は、子ども1人のベビーカー移動とは似て非なるもの」と下田さん。
「双子の場合、子どもの安全・快適と、移動の便利とを両立させるのはどう考えても難しい。多人数用ベビーカーはそもそも出先でたたんだり、持ち上げたり、という動作に向いていないものがほとんどです。
キッズ専用もしくは優先バスなどの到来を待つか、1人を抱っこし、もう1人を1人乗りベビーカーにかわりばんこで乗車させる、のようなスタイルでやりすごすしか、適当なマネジメント方法を思い描けません」(下田さん)