子どもが起きて泣き叫ぶ「夜驚症」 寝室の明かりを消すなど症状改善策を小児科医が解説
小児科医・ふらいと先生に聞く「夜驚症」 #2 夜驚症での受診のタイミングと改善策
2024.03.08
小児科医・新生児科医:今西 洋介
今西洋介先生(以下、今西先生):2日に1回とか、毎日夜間に叫ぶ、暴れてしまうという場合は、発症している子どもの体力消耗や、睡眠不足に陥ることが考えられます。
また、ママやパパも症状が出ているときは、ずっと子どもの様子を見ていなければいけませんし、ご近所への配慮も考えると気が気じゃないでしょう。一緒に寝ている保護者の二次的な影響も大変です。そういった保護者の方の苦労を考えると「困っているなら受診をしてみませんか」と僕はお伝えしたいですね。
また、夜驚症と思いきや、実は別の病気が潜んでいる可能性もあります。たとえば、「夜間性前頭葉てんかん」の場合。全身を硬直させて痙攣することもあれば、大声を出したり、手足を振り回したりすることもあるので、夜驚症と見分けがつきにくいのです。なんだかおかしいな、と感じるときは遠慮なく小児科を訪ねてください。
睡眠時の光と音が症状を悪化させる
──受診をするほど頻発はしていないけれども、症状が出る場合に家庭でできる症状改善方法はあるのでしょうか?
今西先生:夜驚症の誘因のひとつには、不規則な睡眠リズムもあげられます。家庭によっては、平日は夜早く寝かせるけれど、休日は大人と一緒に遅くまで起きているという場合もあるでしょう。しかし、生活のリズムを整えてあげるということが、夜驚症を防ぐ方法の一つになります。
また、睡眠時の環境を整えるという意味では、光や音の刺激を最小限にしてあげることはとても大切です。たとえば、小学校の修学旅行や林間学校、家族でキャンプに行った後などに、夜驚症が悪化するというケースが見受けられますが、これは通常よりも音や光の刺激が強い環境にいるため起こると考えられます。
──光や音の刺激が悪化要因になるということですが、例えばテレビゲームやスマートフォンが非常に身近にある今の子どもたちにとって、これらが夜驚症を悪化させるということは考えられるのでしょうか?
今西先生:本当に寝る直前までゲームをしていたら、間接的には悪影響になるでしょうが、実際は起きているときの光や音の影響ではなく、睡眠中の音や光の刺激が夜驚症に影響を与えると考えられています。
ですから、ゲームやスマホより、子どもが寝ている隣の部屋で大人がテレビを見ていたりすると、その音のほうが子どもにとってはよくありません。光と音の刺激を与えないことも夜驚症を改善させる方法のひとつです。
──光の影響と聞いて気になるのが、就寝時の明かりです。特に小さい子どもは「寝るときはこわいから」と言って、灯りをつけたがりますが、これも良くないのでしょうか?
今西先生:そうですね。できれば寝る前から部屋の灯りは少しずつ暗くして、寝るときには灯りがないほうが睡眠環境としてはベストです。
ですので、寝かしつけのときには、小さいオレンジ色のライトみたいなものをつけても良いのですが、子どもが完全に寝たときにはそのライトも消して、真っ暗にしてあげてください。
僕は新生児科医でもあるので、NICUで赤ちゃんを見ているのですが、そこでも照明を一日の太陽の光度に合わせて次第に明るくしたり、暗くしたりという工夫をして、赤ちゃんの睡眠を促しています。実は赤ちゃんや子どもだけでなく、人間にとって光というのは、非常に影響が大きいものなんですよ。
また、夜驚症で悩まれているご家庭には、太陽の光に合わせて光度が変化するライトを導入するのもおすすめです。このライトは、夕方から夜になるにつれて、徐々に自然と光が穏やかになっていきます。使用したことで症状が良くなったという子もいますよ。
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夜驚症が発生する原因がわかっているからこそ、睡眠環境を整えることが、親ができる一番の対処法ということがわかりました。
とはいえ、あまりにも症状が出る頻度が高いのであれば、ママパパが疲弊する前に受診するようにしましょう。
3回目では、夜驚症が発生しやすいケースについて、引き続き今西先生に教えていただきます。
取材・文/知野美紀子
夜驚症の記事は全3回。
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(※3回目は2024年3月9日公開。公開日までリンク無効)