産後ママの身体と心の回復を 「産後ケア施設」が必要な理由とママたちの声

「産後ケア施設」を知ろう #1 産後ケア施設について医学博士・福島富士子先生が解説

医学博士:福島 富士子

民間企業が運営する産後ケア施設『マームガーデン葉山』では、助産師、保育士、専門スタッフによる授乳サポートや沐浴指導などが受けられます。  写真提供:マームガーデン葉山
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出産直後から赤ちゃんと24時間一緒にいる環境は、ママにとって休まる暇がなく、非常にストレスがかかる状況です。無理に妊娠前の日常生活に戻そうとすると、身体の不調はもちろん、心が疲れてしまうことも。

しかし、里帰り出産や家族のサポートが受けられないなど、さまざまな事情から自分だけで産後を乗り切らなければならないママが多くいるのが現状です。

そこで、産後直後から安心して過ごせる場所として注目が高まっているのが「産後ケア施設」です。東邦大学看護学部教授であり、産前産後ケア推進協会理事でもある医学博士・福島富士子先生は、「産後ケア施設を利用して、ママの身体と心が整えられる時間を持てることがもっと当たり前になってほしい」といいます。

1回目は、福島先生に産後ケア施設についての解説と、なぜ産後ケア施設が必要なのかをお話しいただきました。

(全4回の1回目)

福島富士子
(ふくしま・ふじこ)

医学博士。国立保健医療科学院、上席主任研究者を経て、2014年東邦大学看護学部教授。2018年同看護学部長。一般社団法人出産・子育て包括支援推進機構理事。一般社団法人ドゥーラ協会理事。専門は母子保健政策、ソーシャルキャピタル。

産後のサポートを受けられないママの利用が多い

──まず、産後ケア施設とはどのような施設なのでしょうか? また、利用したいと思っているママや利用しているママはどのような環境の方が多いのでしょうか?

福島富士子先生(以下、福島先生):産後ケア施設とは、出産直後から主に4ヵ月ごろまでを目安とした母子に対して、母親の身体的・心理的回復を促進し、母子とその家族が健やかな育児ができるように支援するための施設です。ただし、施設によっては、出産2ヵ月まで、4ヵ月まで、1年までなど、バラつきが見受けられます。

現在の利用者は、パートナーとふたりで出産・子育てをしているママたちがメインですね。ご実家が遠方だったり、親世代が定年退職後も現役で働いているなど、さまざまな理由から親御さんのサポートを受けられない状況にあるケースの方が多いです。

最近では「実家が近くにあっても、母親との関係がうまくいっていないため、実家滞在は2~3日が限度」、「赤ちゃんを見るだけなら良いけれど、お世話を手伝ってもらうのは嫌」などの理由も聞かれるようになりました。

宿泊できる各部屋のほか、自由に利用できる館内は明るく開放的な雰囲気。他のママたちとの交流も。  写真提供:マームガーデン葉山

また、都心に限らず、地方でも核家族化が進んでおり、親と同居していない人が多いため、地域問わず全国で産後ケア施設のニーズが高まっているように感じています。

ちなみに産後ケア施設自体は10年以上前からありましたが、注目度が上がった理由は、インターネットなどで情報が出回るようになったからでしょう。

産後ケア施設の存在が周知されることで、たくさんのママたちに利用してもらえるようになるのは大変嬉しいことです。産後の心身の回復などを考慮すると、可能なら1週間以上滞在してほしいですね。

産後ケアが必要な理由

──出産や産後は個々によって体感が大きく異なります。また「産後うつ」の問題も近年は特に社会問題となっています。

福島先生:私が関わっているママたちのなかに、「育児は他のものに代えがたい喜びや幸せがあるけれど、こんなにハードだとは想像していなかった」と、普段ハードに働いていても、そう嘆いているママさんがいらっしゃいます。

また、「産後うつ病」と診断されるママ自体は多くありませんが、厚生労働省の調査(2019年度)によると、「産後うつ病の可能性があるママ」は、約10人に1人と多い傾向にあります。

「マタニティブルーズ」という言葉を聞いたことがある方も多いと思いますが、これは妊娠中だけでなく、産後も該当するんです。産後もホルモンバランスの変化によって、ものすごく気分が落ちます。これこそ、まさに「産後うつ病の可能性がある」といわれる理由です。

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