2025年中学入試に多数出題! 元教師の実体験から生まれた「色覚障がい」の物語 「ありのままでいい」主役の少年に込めた確固たる思い

『ぼくの色、見つけた!』著者志津栄子さんインタビュー

ライター:山口 真央

色覚障がいの人が見ている世界をそのまま言葉にしたかった

(『ぼくの色、見つけた!』より)
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──『ぼくの色、見つけた!』を執筆するうえで、印象に残っていることを教えてください。

志津:「ちゅうでん児童文学賞」をいただいたとき、お世話になっている作家の先生に報告すると「贈呈式までに新しく1作書きなさい。それを持っていくのですよ」とアドバイスをもらいました。

一生懸命に原稿を書いて持参したのですが、1回目の贈呈式ではどなたに渡したらいいのかもわからずに、持ち帰ったのです。

2度目の贈呈式で、富安陽子先生にその話をすると「今日は持ってこなかったの?」と聞かれ「あります!」とこたえると、編集さんに橋渡しをしてくださったのです。

それが『ぼくの色、見つけた!』でした。

編集さんは「色覚障がいというテーマがいい」とおっしゃって、私に寄り添ってくださいました。編集さんの力を借りながら、推敲を重ねました。

信太朗が見ている世界をそのまま言葉にすることに、いちばん苦心したと思います。

多くの方に取材をするなかで、色覚障がいを抱える人は「赤」や「緑」などの一般名称で色をとらえているのではなく、「トマトの色」、「葉っぱの色」などと、物に置き換えて色を把握していることがわかりました。

それから編集さんと相談して、信太朗が色の名前をいわずに、「チョコの色」などと物におきかえて表現することにしました。大変でしたが、とてもやりがいのある工程でした。

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