子どもが「色覚異常」と診断されたら… 「色覚異常は“進化型“だ」作家・川端裕人が説く「色覚と進化のひみつ」に超ナットク

『いろ・いろ 色覚と進化のひみつ』著者 川端裕人さんインタビュー

「色覚異常」への過剰な警戒に気をつけて

──色覚について知るためにオススメの作品はありますか。

川端:私が書いた『いろ・いろ 色覚の進化のひみつ』は、低年齢から小学生のお子さんと大人の方が一緒に読むのをおすすめしています。診断された子、周囲の大人が、初動の段階でポジティブな受け止めをできるように、という目的で書いたものですから。「色覚異常」とされること自体で足を引っ張られるような社会通念が根強いと、その後の支援にも響きます。周囲が心配しすぎることで、当事者が自分自身に「呪い」をかけてしまうことだってあるんです。

志津栄子さんが描いた児童文学『ぼくの色、見つけた!』は、子どもへの接し方において、とても勉強になると思います。主人公の信太朗くんが、「色覚異常」と診断されたことによって植え付けられた「呪い」から、脱却していく物語として読むことができます

信太朗くんも、お母さんから心配されたり、描いた絵を揶揄されたりすることで自信を失いますが、ある先生とのコミュニケーションのなかから、少しずつ居場所を回復していきますよね。第71回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書にも選ばれたとのことで、ことし多くの小学生が読んでくれるのを、私も楽しみに感じています。

(『ぼくの色、見つけた!』より)
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川端:さらに、「色覚異常」の現状についてもっと詳しく知りたい方は、拙著の『新版「色のふしぎ」と不思議な社会 ──2020年代の「色覚」原論』(ちくま文庫)も読んでみてください。

少数派の色覚を話題にするときにつきまとうネガティブなイメージをなくし、ポジティブに受けとめられる社会になること。そのために、多くの人が色覚の多様性について、知識を持ってほしいと思います。そう、「正常」だと自分のことを思っている人も含めて、多様性の一部なんですよ。

川端裕人さんの「色覚」にまつわる書籍

川端裕人
作家。1964年兵庫県明石市生まれ、千葉県千葉市育ち。東京大学教養学部卒。1995年にノンフィクション『クジラを捕って、考えた』、1998年に小説『夏のロケット』で作家活動を開始、幅広い分野で執筆活動を行う。ノンフィクションに『我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち』(講談社ブルーバックス 監修:海部陽介氏))、『新版「色のふしぎ」と不思議な社会 2020年代の「色覚」原論』(ちくま文庫)、『おしゃべりな絶滅動物たち 会えそうで会えなかった生きものと語る未来』(岩波書店)など。小説に『銀河のワールドカップ』『エピデミック』『空よりも遠く、のびやかに』(集英社文庫)、『川の名前』『青い海の宇宙港』(ハヤカワ文庫JA)、『ドードー鳥と孤独鳥』(国書刊行会)などがある。2018年、ブルーバックス『我々はなぜ我々だけなのか 』が科学ジャーナリスト賞・講談社科学出版賞、2024年、『ドードー鳥と孤独鳥』が新田次郎文学

読書感想文全国コンクール課題図書『ぼくの色、見つけた!』

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じどうとしょへんしゅうちーむ

児童図書編集チーム

講談社 児童図書編集チームです。 子ども向けの絵本、童話から書籍まで、幅広い年齢層、多岐にわたる内容で、「おもしろくてタメになる」書籍を刊行中! Twitter :@Kodansha_jidou YA! EntertainmentのTwitter :@KODANSHA_YA_PR

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かわばた ひろと

川端 裕人

Kawabata Hiroto
作家

1964年兵庫県明石市生まれ、千葉県千葉市育ち。東京大学教養学部卒。1995年にノンフィクション『クジラを捕って、考えた』、1998年に小説『夏のロケット』で作家活動を開始、幅広い分野で執筆活動を行う。 ノンフィクションに『我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち』(講談社ブルーバックス 監修:海部陽介氏)、『新版「色のふしぎ」と不思議な社会 2020年代の「色覚」原論』(ちくま文庫)、『おしゃべりな絶滅動物たち 会えそうで会えなかった生きものと語る未来』(岩波書店)など。小説に『銀河のワールドカップ』『エピデミック』『空よりも遠く、のびやかに』(集英社文庫)、『川の名前』『青い海の宇宙港』(ハヤカワ文庫JA)、『ドードー鳥と孤独鳥』(国書刊行会)などがある。 2018年、ブルーバックス『我々はなぜ我々だけなのか』が科学ジャーナリスト賞・講談社科学出版賞、2024年、『ドードー鳥と孤独鳥』が新田次郎文学賞を受賞。最新刊に『いろ・いろ 色覚と進化のひみつ』(作・川端裕人 絵・中垣ゆたか)がある。

1964年兵庫県明石市生まれ、千葉県千葉市育ち。東京大学教養学部卒。1995年にノンフィクション『クジラを捕って、考えた』、1998年に小説『夏のロケット』で作家活動を開始、幅広い分野で執筆活動を行う。 ノンフィクションに『我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち』(講談社ブルーバックス 監修:海部陽介氏)、『新版「色のふしぎ」と不思議な社会 2020年代の「色覚」原論』(ちくま文庫)、『おしゃべりな絶滅動物たち 会えそうで会えなかった生きものと語る未来』(岩波書店)など。小説に『銀河のワールドカップ』『エピデミック』『空よりも遠く、のびやかに』(集英社文庫)、『川の名前』『青い海の宇宙港』(ハヤカワ文庫JA)、『ドードー鳥と孤独鳥』(国書刊行会)などがある。 2018年、ブルーバックス『我々はなぜ我々だけなのか』が科学ジャーナリスト賞・講談社科学出版賞、2024年、『ドードー鳥と孤独鳥』が新田次郎文学賞を受賞。最新刊に『いろ・いろ 色覚と進化のひみつ』(作・川端裕人 絵・中垣ゆたか)がある。