アナウンサー堀井美香さんの“駄菓子付き”読み聞かせ「幸せな子育てを終えたら次は自分の番」

シリーズ「令和版駄菓子屋」#7‐2番外編 ~アナウンサー・堀井美香さんインタビュー後編「読み聞かせと駄菓子」~

フリーアナウンサー:堀井 美香

TBSを退社し、フリーランスとなってから始めた「読み聞かせ」。駄菓子持参で全国の子どもたちに会いに行く堀井美香さんにお話を伺いました。  撮影:タナカヨシトモ
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全国津々浦々の図書館や児童養護施設を回り、絵本の読み聞かせを行っているフリーアナウンサーの堀井美香さん。

「気になる施設に自分でアプローチして、負担なく、快く受け入れてくださるようなら訪ねていく」というスタイルで、読み聞かせ活動の企画から運営まで、すべて一人でこなしているというから驚き。

現在は、数ヵ月に一回、不定期で「こどもとえほんの会」を開催。子どもたちに読み聞かせをしたあとは、お土産として持っていった駄菓子タイムが始まります。

「子どもたちの記憶に少しでも残ってくれたらいいなと思って、駄菓子を持っていくことにしたんです」と堀井さん。子どもたちと駄菓子についてお話を伺いました。

堀井美香(ほりい・みか)PROFILE
1972年生まれ、秋田県出身。1995年にTBS入社、2022年退社しフリーアナウンサーに。現在はさまざまなナレーションを担当するほか、自身で朗読会も開催。ジェーン・スーさんとのPodcast番組『OVER THE SUN』は世代やジェンダーを問わず大人気となり月間リスナー80万人。

※1回目/全2回(#1を読む

点数制の駄菓子屋を開店!

読み聞かせ会の開催が決まると、駄菓子を仕入れに行く堀井さん。参加する子どもたちの人数を把握して、必ずひとりにひとつずつは行き渡るよう、何種類もの駄菓子を大量に購入します。

「駄菓子を選んだり、準備をしている時間も楽しい。私は定番駄菓子のヤングドーナツが大好きなんです。子どもたちには、プチプチ占いチョコが人気ですね。

娘や姪にも準備を手伝ってもらうこともあるのですが、『おもちゃ付き駄菓子は子ども同士でもめるかもしれないから、やめたほうがいいんじゃない』なんてごもっともなアドバイスをされたりして、会話が弾みます」(堀井さん)

施設にスペースがあり、《駄菓子屋さん》が開店できるときは、車のトランクに、おもちゃ収納のラックを設置。ケースにギュギュッと駄菓子を詰め込んで、商品棚に。トランクを開けると、即席の移動式駄菓子屋に変身です。

レンタルしたバンの後部座席が駄菓子屋に変身。収納ケースに並べられた駄菓子を見れば、誰もが楽しい気持ちに。  写真提供:堀井美香

読み聞かせが終わって駄菓子屋が開店すると、子どもたちは大騒ぎ。好きなものを選び取る時間を大切にしたいとの思いから、いくつかのルールを設けています。

「ルールはその時々に変わるのですが、それぞれの駄菓子に1~3点の点数をつけておいて、『13点まで選んでいいよ』なんて決めています。

駄菓子を選ぶのは、小さな子から順番に。小さな子が一生懸命悩んでいる後ろで、お兄ちゃんお姉ちゃんたちはヤキモキ。『もう、早くしろよ~!』って怒り出したり、『私がほしいの、なくなっちゃうかも』なんて半べそになっていたり(笑)」(堀井さん)

子どもたちの、そんなありのままがとっても愛おしい、と語る堀井さん。

「全員に行き渡るようにたくさんの駄菓子を持っていっていますし、余った分も全て施設に置いてくるのですが、みんなその瞬間は必死に選んでくれるから微笑ましくって。

パパッと決めちゃう子もいますけど、ずっと何にするのか悩んでいる子もいたりして、そんな子どもたちの姿をいつまでも見ていたいなって思いますね」(堀井さん)

「あれもほしい、これも気になるって、何度も駄菓子を置いたり取ったりする子も。真剣に悩んでいる姿ってかわいいですよね」と堀井さん。  撮影:タナカヨシトモ

今日が人生のきっかけになる日かも

「駄菓子を持っていくのは、子どもたちに気に入られるために媚(こび)を売っているだけ」なんて謙遜する堀井さんですが、とある素敵な話を教えてくれました。

「私の後輩でドラマのプロデューサーをしている子がいるんです。彼は地方で生まれて、テレビの世界とは縁遠い小さな町で育ってきた。そんな彼が子どものころ、地域の公民館に東京のテレビ局の方がいらして『お土産にどうぞ』って、フジテレビのステッカーをくれたんですって」(堀井さん)

その日、彼の人生の行く先が決まった、と堀井さんは続けます。

「小学生だった彼は、そのフジテレビのステッカーをもらって、幼心にとっても感動して『テレビ局ってすごいな。俺は、ドラマを作る人になりたい』って思ったらしいんですよ。

子どもって素晴らしく単純だから、何かをもらって嬉しくて決心するとか、そういうのって素敵だなって。私の読み聞かせや駄菓子が大きなことにつながるとは思わないですけど、嬉しい記憶のひとつになれたらいいなという思いはあります」(堀井さん)

大人にとっては小さなことでも、子どもには人生を変えるとっておきのプレゼントになることも。  撮影:タナカヨシトモ

堀井さんの活動に賛同し、おもしろい仲間たちが読み聞かせの会についてきてくれることも。

「私がこういうことをしているよと話をすると、『一緒に行かせてほしい!』と言ってくれるお友達がたくさんいます。音楽があったりすると楽しいので、ピアノ演奏者の友人を連れていくことも」(堀井さん)

子どもたちはまずピアノの周りに集まってきて、「ねぇ、BTSの曲弾いて!」なんて自由にリクエスト。

「そんな子たちに『ごめん。今日は絵本を読みにきたんだから、まずちょっと、2冊だけでいいから絵本も聞いてくれない?』とかってお願いしたりして(笑)」(堀井さん)

映画編集を手がける友人を連れていったときにも、微笑ましい光景がありました。

「このお姉さんは、こんな映画を作ってるんだよって最初に紹介したんです。すると、読み聞かせが終わってみんな駄菓子を選んでいるときに、何人かの子どもが彼女のもとに近寄っていって『映画ってどうやって作るの?』みたいな質問を始めたんです。

この映画はこうやって、こういうふうに撮影していてね……と話す彼女に、もうずっとその子たちは夢中で。そういう出会いって、素敵ですよね」(堀井さん)

そういう小さな出会いが鮮烈な記憶となって、未来へのきっかけになることもあるかもしれません。

助けられてきたから次は自分の番

これからも読み聞かせを続けていきたい、と堀井さんは言います。

「おじいさんやおばあさんが町の花壇のお世話をするのと同じ。『自分の時間を使って、誰かのために何かをしたい』みたいな感情は、私たち世代になると生まれてくるものだと思うんですよね」(堀井さん)

そんなとき、誰に対して何ができるのか。堀井さんにとって、それが「子ども」で「読み聞かせ」だったのかも、と話します。

「人によって、自分はこの分野なら、っていうものがあると思っていて。私は母が保育士だったし、私自身も子どもがずっと近くにいて、子どもが大好き。

そして何より私自身が子育てしていた時期、私も子どもたちも周囲の人にとっても恵まれて助けられてきた。だから、じゃあ次は私がほかの子どもたちに何かを、っていうのはあるのかもしれないですね」(堀井さん)

読み聞かせをしながら、全国の子どもたちを愛おしむ堀井さん。

「子どもが大きくなると、母でもなく、親でもなく、妻でもなく、『自分』に戻ってくるときが訪れるんです。子育てから離れてみて改めて『幸せな子育てだったな』って思えたら、余った力で子どもたちに小さい幸せを渡せるんじゃないのかな、と思ったりもするんです。微力ですけれど……」(堀井さん)

「寅さんのように全国を回りながら、読むことを続けていきたい」という堀井さん。その活動は始まったばかりです。  撮影:タナカヨシトモ

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個人店から堀井美香さんまで、駄菓子を通したさまざまなつながりを取材したコクリコの「令和版駄菓子屋」。

人と人の関係性の希薄さや孤育て(孤独な子育て)、子どもの居場所の必要性などが社会課題となる一方で、全国の駄菓子屋で生まれている小さくても温かな出会いやエピソードをたくさん知ることができました。

令和に育つ子どもたちが駄菓子を手にするとき、その背景にはいつも誰かとのやさしい思い出が浮かびますように。

堀井美香さんが企画⁉ 子どもに人気の名曲が聴ける“クラシック演奏会”を8/12(祝)開催!!

堀井美香さんがナレーション・司会に、企画プロデュースまで行ったクラシック演奏会が8/12(祝)に開催。『スター・ウォーズ』や『となりのトトロ』など人気の名曲を新日本フィルハーモニー交響楽団が演奏。「クラシックをもっと身近に」とTシャツでもOK。驚くアイディアで、子どもも大人まで楽しめます。
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イベント名:Hello!! シネマミュージック in Summer
日時:2024年8月12日 (月・祝)、14:00開演(13:15開場)
会場:すみだトリフォニーホール
料金:[全席指定]S¥5,500、A¥4,500、学生(高校生以下)¥2,500 ※未就学児入場不可、「すみだ区割」あり
・公演情報はこちら 
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ほりい みか

堀井 美香

フリーアナウンサー

フリーアナウンサー。1972年3月22日生まれ、秋田県出身。法政大学法学部を卒業後、1995年にTBSに入社して以来、局アナとして第一線で活躍。 これまでには多くのナレーションを担当し、ナレーションの名手としての存在感を放つ。TBSアナウンサーによる朗読会『A’LOUNG(エーラウンジ)』のプロデュースを担当するなど、朗読にも注力している。2022年3月TBS退社。同年4月よりフリーアナウンサーとして活躍中。 TBSラジオ「メタウォーター  presents    水音スケッチ 」(月曜〜金曜13時)、Podcast番組『WEDNESDAY HOLIDAY - 働くの実験室(仮)By SmartHR』(毎週水曜17時)を配信のほか、ジェーン・スー氏との大人気Podcast番組『Over the sun』(毎週金曜17時)で活躍。 私生活では一男一女の母。子どもたちが幼いころには、自分なりに工夫した絵本の読み聞かせを実践していた。 著書『音読教室 現役アナウンサーが教える教科書を読んで言葉を楽しむテクニック』(カンゼン)、『一旦、退社』(大和書房)、『聴きポジのススメ』(徳間書店)など。

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フリーアナウンサー。1972年3月22日生まれ、秋田県出身。法政大学法学部を卒業後、1995年にTBSに入社して以来、局アナとして第一線で活躍。 これまでには多くのナレーションを担当し、ナレーションの名手としての存在感を放つ。TBSアナウンサーによる朗読会『A’LOUNG(エーラウンジ)』のプロデュースを担当するなど、朗読にも注力している。2022年3月TBS退社。同年4月よりフリーアナウンサーとして活躍中。 TBSラジオ「メタウォーター  presents    水音スケッチ 」(月曜〜金曜13時)、Podcast番組『WEDNESDAY HOLIDAY - 働くの実験室(仮)By SmartHR』(毎週水曜17時)を配信のほか、ジェーン・スー氏との大人気Podcast番組『Over the sun』(毎週金曜17時)で活躍。 私生活では一男一女の母。子どもたちが幼いころには、自分なりに工夫した絵本の読み聞かせを実践していた。 著書『音読教室 現役アナウンサーが教える教科書を読んで言葉を楽しむテクニック』(カンゼン)、『一旦、退社』(大和書房)、『聴きポジのススメ』(徳間書店)など。

えんどう るりこ

遠藤 るりこ

ライター

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe