会社員絵本作家が 我が子に読み聞かせた 想像力がふくらむ絵本3冊!

ただいま絶賛子育て中 きいてみよう! 絵本作家のえほんばこ〜はっとり ひろきさん〜

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素敵な絵本を生み出している絵本作家さんたちは、絵本を通して子どもたちとどのような時間を育んでいるのでしょう? その素敵な“物語”をご紹介します! 今回は、はっとり ひろきさんの登場です。

(「たのしい幼稚園」9月号(2021年7月30日発売)掲載)より

子供たちにも やりたいことにチャレンジする大人になってほしい。
会社員をしながら絵本を描く僕の姿が
いい影響を与えられたらなと思っています。

絵本は寝かしつけに 有効ではなかった(笑)

早いもので2人の息子は14歳と12歳になりました。とても仲が良くて、小さい頃はずっと2人で遊んでいたほど。たとえば庭に穴を掘って水を流して泥だらけになったりしていました。2人とも普段はおとなしいのですが、一緒に遊び始めると手がつけられなくなるんです。まあ、最後は僕も一緒になって水をかけていましたが (笑)。

そんな2人が小さかった頃の絵本時間は、家族の時間でもありました。子どもが寝る前に家族4人が集まって、子どもたちが持ってきた絵本を僕か妻が読んでいました。お気に入りは言葉が面白い作品。

中でも『みみかきめいじん』は、耳かきをするときのオノマトペ(「ほじほじほじ」「ふにゃら ふにゃら」などの擬声語・擬態語)が楽しいようで、いつも真似をしていました。それでテンションが上がって寝ないので、電気を消して、真っ暗な中で僕が想像で作った話をしていました。そうするとまたテンションが上がって、結局なかなか寝てくれなかったです(笑)。

はっとり ひろきさんのおすすめ絵本❶ 『みみかきめいじん』

『みみかきめいじん』
作●かがくい ひろし
定価●1320円(税込)
発行●講談社

この本で子供たちは
耳かきを覚えました!


耳かきやのひょ・うーたん先生が、ぞうさんやうさぎの団体など、いろんなお客さんに耳かきをして気持ちよくなってもらうお話。「次はどうなっちゃうの!? という展開に、子供たちはドキドキしていたようです。
『ほじほじほじ』とか『ふにゃら ふにゃら』という独特のオノマトペも、クセになって真似していました」(はっとりさん)

「じぷた」を本気で心配する 優しい息子たち

やんちゃな兄弟に思われたかもしれませんが、2人ともとても優しくて人の気持ちがわかる子に育っていると思います。お兄ちゃんは弟思いなので、弟もお兄ちゃんが大好き。好きすぎて、僕がお兄ちゃんと仲良くしているとヤキモチを焼くほどなんです。中学生になった今も、2人で布団をかぶって何かゴソゴソ楽しそうにやっていますよ。

2人とも思いやりのある性格だからか、『しょうぼうじどうしゃ じぷた』という絵本が大好きです。これは、小さな消防自動車・じぷたが、最後に大活躍するお話。読んであげると、いつも真剣な顔でじぷたの心配をしていて、じぷたが活躍するとスッキリした顔をしていました。そんな優しいところは、今も変わっていないと思います。

はっとり ひろきさんのおすすめ絵本❷ 『しょうぼうじどうしゃ じぷた』

『しょうぼうじどうしゃ じぷた』
作●渡辺茂男 絵●山本忠敬
対象年齢●読んであげるなら4歳から
     自分で読むなら小学校初級むき
定価●990円(税込)
発行●福音館書店

誰かを思いやる気持ちを
養ってくれた1冊


働きものの小さな消防自動車・じぷた。大きくてカッコいい消防自動車たちの陰に隠れてなかなか活躍の場がありませんでしたが、ある日、山小屋で火事が起こり……。
「子供たちの反応がとくに良かった1冊。じぷたの気持ちに寄り添って、真剣に聞いていました」(はっとりさん)

子供は絵本を通して 先取り体験している

実は僕自身は子供時代、ほとんど絵本を読んでこなかったんです。だから子育てで絵本に触れるようになって、すごく新鮮でした。絵本の一番の魅力は、空想の世界でいろいろなことを先取り体験できることだと思います。絵本を読んであげると、子供たちは翌日、その内容を真似していて。

『まよなかのだいどころ』という絵本もお気に入りだったのですが、これはミッキーという男の子が真夜中の台所で不思議な体験をするお話。その中のセリフを覚えて、2人で「ミルクがない!」「しあげはミルク!」と遊ぶんです。そんなふうに物語を吸収している姿を見ると、僕も小さい頃、もっと絵本を読めば良かったなあと思いました。

はっとり ひろきさんのおすすめ絵本❸ 『まよなかのだいどころ』

『まよなかのだいどころ』
作●モーリス・センダック 訳●じんぐう てるお
定価●1540円(税込)
発行●冨山房

ミッキーの不思議な体験に
子供たちはとりこに


真夜中に目を覚ましたミッキーが降りたのは台所。そこではパンやさんがケーキを焼いていました。ミッキーはミルクと間違えられて生地と一緒にオーブンに入れられたり、「ミルクがない!」と慌てるパンやさんのためにミルクを取りに行ったり……。
「何が起こっても動じないミッキーを、子ども達が一生懸命目で追っていたのを思い出します」(はっとりさん)

人生は何足ものわらじを 履くことができるはず

小さい頃は何をしていたかというと、僕は絵に描いたような天真爛漫な子供で、いつもフザけて走り回ってばかりいました。ただ絵を描くのは得意で、よく漫画のキャラクターの絵を描いたりしていていました。小さい頃は、漫画家になりたいなと思っていたんです。

その夢が大人になって「レーサーになりたい」に変わり、建設機械やフォークリフトの整備士をしながら20代はずっとそこを目指していました。しかし、いろいろあって挫折。その後、結婚して子供が産まれて絵本に出会ったときに、「そうだ、絵を描くことが好きだったんだ」と思い出して。

子どもたちに向けて描いていたところ、2人とも僕の作品が好きで「読んで、読んで!」と言ってくれたので、「もしかしたら自分にもできるかも」と勘違いしまして。絵本塾で勉強をして、コツコツ描き続けた結果、大きな賞を受賞してデビューすることができました。そして今も会社員を続けながら、好きな絵本を描き続けている、というわけです。

僕は、人生は1つのことだけじゃなくて、いくつものことができると思っています。だから子供たちも、やりたいことにチャレンジする大人になってくれたら嬉しい。今、上の子は小説を書きたいと言っています。だから、「おお、書け書け。お前の文章は面白いぞ」と背中を押しているのですが、二足のわらじで奮闘する僕の姿が少しはいい影響を与えられているのかな、なんて勝手に嬉しく思っています。

はっとりさんの新刊絵本『ぽっかりライトせんせい』

『ぽっかりライトせんせい』
作●はっとり ひろき
発行●講談社
定価●1430円(税込)
『ぽっかりライト せんせい』より

子供たちに想像力を
届けたくて描いた絵本です


懐中電灯のお医者さん・ぽっかりライト先生が、目覚まし時計や掃除機など、さまざまな患者さんの病気を治してくれるお話。
「子供たちに想像力を届けるだけでなく、大人が見ても胸に刺さるものがある絵本を作りたい、という想いから生まれました」(はっとりさん)

取材・文/山本奈緒子

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はっとり ひろき

絵本作家

1978年岐阜県海津市生まれ。小さいころから絵を描くことと、F1が好きだった。高校卒業後、建設機械及びフォークリフトの整備士として勤める傍ら、絵本作家を目指す。2016年よりメリーゴーランドの絵本塾に通う。 2017年、『いっぺん やって みたかってん』で第39回講談社絵本新人賞受賞。三重県在住。2児の父。

1978年岐阜県海津市生まれ。小さいころから絵を描くことと、F1が好きだった。高校卒業後、建設機械及びフォークリフトの整備士として勤める傍ら、絵本作家を目指す。2016年よりメリーゴーランドの絵本塾に通う。 2017年、『いっぺん やって みたかってん』で第39回講談社絵本新人賞受賞。三重県在住。2児の父。