子どもの「運動能力」 「運動神経は何歳からでも開発できる」 新事実を専門家が解説
【子どもの運動神経を開発する方法 #1】運動能力が低下している!? 原因や対策を専門家が解説
2024.06.03
コーディネーション能力を構成する5つの力
運動神経=コーディネーション能力は、5つの力に分類されると東根先生は説明します。
「コーディネーション能力は、『リズム能力』『バランス能力』『操作能力』『反応能力』『認知能力』の5つに分けることができます。
コーディネーション能力は5つの力
①リズム能力
②バランス能力
③操作能力
④反応能力
⑤認知能力
リズム能力とは、リズムやタイミングをとる力です。運動やスポーツ全般で使います。
バランス能力とは、バランスを保ったり、姿勢を立て直す力。例えば片足で立つときはもちろん、転びそうになったときには体勢を立て直すためにも使われる力です。
操作能力は、手足や用具を精密に操作する力。ラケットなど道具を使うスポーツだけではなく、包丁を扱う、鉛筆を持つなど日常生活のさまざまな場面で必要です。
反応能力は、合図に素早く反応し、動く力。状況が切り替わったときに、別の動作に素早く切り替える力で単純反応(※1)と選択反応(※2)があります。
認知能力は、考えたり、判断する力。目や耳などから入ってきた情報をもとに、状況に合わせてどのような行動をするのが適切かを考え、それを実行に移す力です。
運動をする際にはそれぞれの能力が個別に働くのではなく、いくつかの能力が連動して働きます。行動を調整する力、つまり運動神経は、これら5つの能力をバランスよく鍛えることで開発することができます」(東根先生)
※1 単純反応…一つの情報刺激に対し、一定の動きを行うこと。
※2 選択反応…複数の情報刺激に対し、状況に適した動きを行うこと。
“頭の柔らかさ”も運動神経の一つ
コーディネーション能力は運動に関連する力なので、単に体を鍛えれば良いと考えがち。しかし、コーディネーション能力には「認知能力」も含まれるため、思考の柔軟性も重要です。
「スポーツでは、相手のプレーの傾向や試合の展開など、さまざまな情報を考慮した上で、次にどのような動きをするのかを瞬時に判断しますよね。このように、状況に合った行動を判断する『認知能力』も、コーディネーション能力のうちの一つであると説明しました。ですので、柔軟に考える力も非常に大切なのです」(東根先生)
1995年、ドイツにわたり、コーディネーションを学んだ東根先生。ドイツでは、相手が子どもであっても発言に耳を傾け、意見を尊重する風土があったそう。その風土が、子どもの柔軟性を育てていたといいます。一方、昭和の教育がまだ残る日本では、思考の柔軟性が不足している子が多いと先生は指摘します。
「これまでの学校教育では、『指導者の言うことは絶対』といった、軍隊のような指導がなされてきました。スポーツをするときにも、正しいフォームで行うことであったり、勝つことが優先されてきました。型にはめられた子どもは、柔軟に考えるどころか、自分の意見を言えなくなり、ついには思考することも諦めてしまいます。
自分で考え判断し、状況に合わせて柔軟に動く力は、コーディネーションにおいては欠かせない能力です。昔の教育を受けた親世代の私たちも、子どもが柔軟に考える機会を奪わないように気をつけたいものです」(東根先生)
運動神経は何歳からでも開発できる
運動神経は、もともとすべての人が持っているものなので、トレーニングをすることで何歳からでも開発することができます。とはいえ、運動神経を開発するのに大事な時期があります。
その一つが幼児期。このころは何に対しても先入観を持っていませんから、運動に対してポジティブなイメージを持ってもらうのに絶好なタイミングです。この時期に働きかけることで、その後の人生においても運動をすることが増える、つまり運動神経を開発できるチャンスが増えます。
続く第2回では、幼児期に子どもの運動能力を開発する具体的な方法を紹介していきます。
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◆東根 明人(あずまね あきと)
一般社団法人コーチングバリュー協会代表理事。東京保健医療専門職大学特任教授。
1981年早稲田大学教育学部卒業。1984年順天堂大学大学院修了。1995年JOC(日本オリンピック委員会)の在外研修により、ライプチヒ大学(ドイツ)に留学しコーディネーショントレーニングを学び、以後日本での普及に取り組む。JOCタレント発掘プロジェクト、日本体育協会ジュニアスポーツ指導員カリキュラム策定委員を務めた。
主な著書に、『「動きことば」で苦手な子も楽しめる! 幼児のためのコーディネーション運動』『楽しみながら運動能力が身につく! 幼児のためのコーディネーション運動』(明治図書出版)など。
取材・文/阿部雅美
『子どもの運動神経を開発する方法』の連載は、全3回。
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(公開日までリンク無効)
阿部 雅美
タイ・バンコクの日本人向け情報誌・WEBメディア、東京の編集プロダクションを経て、フリーランスの編集・ライターに。そのなかで保育雑誌や書籍、企業誌、食メディアなど様々な媒体を経験。 現在は、育児・教育や占い、グルメなどさまざまなジャンルの記事を編集・執筆している。
タイ・バンコクの日本人向け情報誌・WEBメディア、東京の編集プロダクションを経て、フリーランスの編集・ライターに。そのなかで保育雑誌や書籍、企業誌、食メディアなど様々な媒体を経験。 現在は、育児・教育や占い、グルメなどさまざまなジャンルの記事を編集・執筆している。
東根 明人
一般社団法人コーチングバリュー協会代表理事。東京保健医療専門職大学特任教授。 1981年早稲田大学教育学部卒業。1984年順天堂大学大学院修了。1995年JOC(日本オリンピック委員会)の在外研修により、ライプチヒ大学(ドイツ)に留学しコーディネーショントレーニングを学び、以後日本での普及に取り組む。JOCタレント発掘プロジェクト、日本体育協会ジュニアスポーツ指導員カリキュラム策定委員を務めた。 【主な著書】 『「動きことば」で苦手な子も楽しめる! 幼児のためのコーディネーション運動』『楽しみながら運動能力が身につく! 幼児のためのコーディネーション運動』(明治図書出版)など
一般社団法人コーチングバリュー協会代表理事。東京保健医療専門職大学特任教授。 1981年早稲田大学教育学部卒業。1984年順天堂大学大学院修了。1995年JOC(日本オリンピック委員会)の在外研修により、ライプチヒ大学(ドイツ)に留学しコーディネーショントレーニングを学び、以後日本での普及に取り組む。JOCタレント発掘プロジェクト、日本体育協会ジュニアスポーツ指導員カリキュラム策定委員を務めた。 【主な著書】 『「動きことば」で苦手な子も楽しめる! 幼児のためのコーディネーション運動』『楽しみながら運動能力が身につく! 幼児のためのコーディネーション運動』(明治図書出版)など