
【公民館がスゴいことになっていた!】沖縄「若狭公民館」子どもと大人たちが“アート“で生み出す新しい価値観とは?
シリーズ「地域をつなぐ みんなで育つ」#3‐3 「若狭公民館」【1/2】(沖縄県那覇市)
2025.04.07
ライター:太田 美由紀
「アートの良さは、必ずしも結果に焦点を当てないところです。取り組むプロセスにおいてさまざまな変化に柔軟に対応できるしなやかさと包摂(ほうせつ)性を備えています。さらに、生涯学習と深く関わっているのです」(宮城さん)

「生涯学習」の理念として、教育基本法第3条には次のように規定されています。
〈国民一人一人が自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。〉
「人によってとらえ方も変わると思いますが、私は、アートとは感性が揺さぶられ、価値観が更新され、新しい自分に出会う体験を与えてくれるものだととらえています。
公民館は、『生涯学習』の拠点です。アートに触れることで起こる体験は、生涯学習で起こることに近い。
異なる他者やものに出会い、価値観が揺さぶられるのは少し不安もありますが、それによって新しい自分に出会う体験をおもしろがることができるといいですよね」
若狭公民館がある地域は、琉球王国時代から中国を中心にアジアの商人や職人が行き交う国際色豊かな港町でしたが、第二次世界大戦後、住んでいた人は土地を接収されました。
その後、何もなくなった土地にあらゆる地域から多様な人たちが流れ込み、観光客も増え、今のような歓楽街になりました。
コミュニティで同じ価値観や文化が積み重なっていくだけでは、「こうあるべき」が強化されていきます。そのような地域では、しがらみや煩わしさが居心地の悪さにつながってしまうこともありますが、館長の宮城さんは、アートにより価値観が揺さぶられる場をつくることで、多様な人たちが共に生きていく地域を育むことができると考えています。
「アート(芸術)と文化は裏表のようなところがあります。公民館は地域のコミュニティを育む場所ですが、その前提として一人ひとり違う存在であることがなおざりにされてはならない。
一人ひとり違う存在が集まってコミュニティ=文化をつくっていく。そこを大事にしています」
子どもたちは、既成の価値観の中に合うように生きていくのではなく、価値観を更新して社会をつくる存在です。
学校では出会えないさまざまな年代の多様な文化を持つ人たちとの交流拠点として、地域に新しい価値を生み出す創造拠点として、あなたの街の公民館を見直してみませんか。
第4回は、引き続き「若狭公民館」のお話です。生活圏に公民館がない地区のニーズに応え、パラソル一つから生まれた「パーラー公民館」をご紹介します。
取材・文/太田美由紀
【関連サイト】
●那覇市若狭公民館
●NPO法人地域サポートわかさ

太田 美由紀
1971年大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。雑誌編集部を経て独立。育児、教育、福祉を中心に、誕生から死まで「生きる」を軸に多数の雑誌、書籍に関わる。NHK Eテレ『すくすく子育て』の番組制作やテキスト制作に関わる(2020年まで)。 2011年より新宿区教育委員会・家庭教育ワークシートプロジェクトメンバー。2017年保育士免許取得。子育てコーディネーターとして相談現場でも活動。「人間とは何か」に迫るため取材・執筆を続けている。 自著『新しい時代の共生のカタチ~地域の寄り合い所 また明日』(風鳴舎)、近著として学校取材を担当した『学校とは何か 子どもの学びにとって一番大切なこと』(編著/汐見稔幸・河出新書)がある。 ●『新しい時代の共生のカタチー地域の寄り合い所 また明日』(風鳴舎)
1971年大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。雑誌編集部を経て独立。育児、教育、福祉を中心に、誕生から死まで「生きる」を軸に多数の雑誌、書籍に関わる。NHK Eテレ『すくすく子育て』の番組制作やテキスト制作に関わる(2020年まで)。 2011年より新宿区教育委員会・家庭教育ワークシートプロジェクトメンバー。2017年保育士免許取得。子育てコーディネーターとして相談現場でも活動。「人間とは何か」に迫るため取材・執筆を続けている。 自著『新しい時代の共生のカタチ~地域の寄り合い所 また明日』(風鳴舎)、近著として学校取材を担当した『学校とは何か 子どもの学びにとって一番大切なこと』(編著/汐見稔幸・河出新書)がある。 ●『新しい時代の共生のカタチー地域の寄り合い所 また明日』(風鳴舎)