きょうだい児に必要なのは「自己中に生きる」こと
──最後に、きょうだい児が自分の人生を生きるにあたって、アドバイスはありますか。
平岡さん
著書ではあえて、かつての私のように苦しんでいる人に向けて、「自己中心的に生きること」を提案しました。
きょうだい児の場合、他人の問題を自分のこととして捉えがちです。人からどう思われるかを気にして、自分を偽ってしまうのです。
しかし、自分は自分、人は人。境界(バウンダリー)を育むことが大切です。他人の意見も尊重しつつ、自分の価値観で生きてほしい。例えば、好きなものを買うことすら、きょうだい児はためらいがち。自分で自分をコントロールし、人生の舵を取ってほしいですね。
そのために有効なのは、世界を広げること。信頼できる人を見つけて自己開示をしましょう。
私は、X(旧Twitter)を通して多くのきょうだい児と交流しています。Xは、手軽さと匿名性が、きょうだい児のニーズに合っていると感じます。ゆくゆくは、対面で集まれる場所もつくりたいですね。
今回出版したのは、解決策を指南するマニュアル本ではありません。きょうだい児や、病気や障害のあるお子さんを育てる保護者の方、きょうだい児の周辺におられる方がメッセージを受け取り、自分なりの戦略を考えてくれることを願っています。
取材・文/中村 藍
平岡 葵
1歳年下の弟が重度知的障害、自閉症、強度行動障害を持つきょうだい児。保育園時代に一家でカルト宗教に入信し、修行等を強いられる。小学生のとき、母親の過去の不貞行為が発覚し、父親による家庭内暴力が始まる。母親は家出と薬の過剰摂取を繰り返すようになる。そうしたなかでも学業に励み、慶應義塾大学経済学部に合格・卒業。現在は家族と絶縁し、企業で働く傍ら、かつての自分と同じ境遇にいるきょうだい児たちとSNS等で交流し、彼らの精神的サポートもしている。
1歳年下の弟が重度知的障害、自閉症、強度行動障害を持つきょうだい児。保育園時代に一家でカルト宗教に入信し、修行等を強いられる。小学生のとき、母親の過去の不貞行為が発覚し、父親による家庭内暴力が始まる。母親は家出と薬の過剰摂取を繰り返すようになる。そうしたなかでも学業に励み、慶應義塾大学経済学部に合格・卒業。現在は家族と絶縁し、企業で働く傍ら、かつての自分と同じ境遇にいるきょうだい児たちとSNS等で交流し、彼らの精神的サポートもしている。