子どもの「しあわせ脳」を育てる5つの金のルールとは 「夫のトリセツ」の黒川伊保子さんが解説
人工知能研究者がすすめる楽でリーズナブルな子育て #1 しあわせ脳を育てる「金のルール」
2024.04.01
早寝と早起きでワンセット
ここまでで、早寝の大切さを身にしみていただけたはず。でもね、それだけじゃ、不完全。脳の学習効果は、《早起きして早寝》のワンセットでピークに達する。
早寝は、脳の知識工場を最大限に稼働する手段だった。その知識工場に、“資材”を送り込む立て役者がセロトニンというホルモンだ。セロトニンは、朝日の視神経刺激で分泌が加速される。このため、早起きをしておくのが得策なのである。
また、セロトニンは、メラトニンの前駆体に当たる。朝日を目撃することでセロトニンの分泌が加速した時刻から約15時間後、セロトニンが自然にメラトニンに変化し始める。つまり、朝6時に起きた人は、夜9時過ぎ、自然に眠りに誘われるってことだ。
その上、セロトニンは、別名「しあわせホルモン」とも言われ、自己充足感の高い、落ち込みにくい、キレにくい日常を過ごせる秘訣でもある。
朝日の恩恵、すなわちセロトニンの恩恵に浴さない手はないでしょう?
セロトニンは脳神経信号のアクセル役。脳全体に信号がいきわたりやすくする脳内神経伝達物質である。セロトニンが十分に充塡されれば、脳は、素早く活性化される。ご機嫌で一日が始められることになる。
また、全体にうまく機能していれば、脳自身は充足感=「しみじみと満ち足りた気持ち」を覚えるため、セロトニンがよく分泌されている脳は、幸福感を得やすい。
私たちは、「いい思いをしたから、満足感を得る」と思っている。美女に生まれて、いい仕事ができ、周囲にちやほやされ、おいしいものを食べて、なのに太らなくて、子どもも出来がよく、夫が優しくて、お金持ちだったら、きっと満ち足りた思いをするだろうと考える。
けど、そういうものでもないのである。毎日、ちゃんとセロトニンが分泌されている脳は、ささやかなことでしみじみできる。朝日がきれい、風が心地よい、信号がジャストタイミングで変わった、子どもが笑った……そんなことでしあわせなのだ。で、肌がイキイキして、瞳が潤む。
一方、セロトニンが足りないと、人も羨むセレブ生活を送っていたって満たされない。
こうやって脳を追究していくと、幸福は自噴するもので、与えられるものじゃないんだなぁというのがよくわかる。
子育てに後悔はいらない!
この記事や著書『子どもの脳の育て方』には、「これをするといい」、あるいは「これはしないほうがいい」という書き方がしてある。ときには、「〇歳までに、ぜひしてほしい」という書き方も。
そうすると、「それ、やっちゃった」「間に合わなかった」と後悔する方もいるのではないかしら。
先に宣言しておくね。子育てには、決して後悔はいらない。〇歳までにしておくといいと書いたことのほとんどは、何歳からでもマスターできる。ただ、多少根気がいるだけのこと。
やっちゃったことも後悔しなくていい。そのおかげで、子どもの脳には、個性が生まれる。
それにね、なににせよ、親がよかれと思ってやったことに、基本、間違いはない。あなたの遺伝子を受け継いだ(たとえ血縁がなくても、強い縁であなたのところにやってきた)子どもたちである。あなたの脳と、感性や思念の波動が、きっと共振しているはずだもの。
子育て中の親たちは、本当に忙しい。なのに、山ほどの育児情報に押しつぶされそうになる。それでも必死に頑張ってるのに、子どもが思いどおりになってくれない。そんなふうに感じていたら、ぜひ、読んでみてほしい。
子育ての方針は、人それぞれ。このとおりにしなくてもいいけど、「力の抜き方」がきっとわかるはず。
AIとともに生きる人類には、頑張りすぎる必要がない。「しあわせな子育て」で育った「しあわせ脳」が活躍できる時代だから。
どうか、子育てを楽しんで。
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黒川伊保子さんの「子どもの脳の育て方」は全3回。第1回の今回はしあわせ脳を作る「金のルール」についてご紹介しました。第2回、第3回は「金のルール」のひとつ「読書の効能」について、掘り下げてご紹介します。
取材・文/佐々木奈々子
黒川伊保子さんの「子どもの脳の育て方」は全3回。
第2回 「読書」が子どもの脳に与える好影響 「妻のトリセツ」の黒川伊保子さんが解明
第3回 【年齢別読書法】0歳〜2歳/7歳まで/9歳〜12歳 黒川伊保子さんが実践した「しあわせ脳」の育て方とは
■今回ご紹介した書籍はこちら
『子どもの脳の育て方 AI時代を生き抜く力』
近未来に必須の人間力を、どうしたら脳に授けられるのか。その答えがここにある。
【本書の内容構成】
1 金のルール
2 AI時代の子育てに欠かせないセンス
3 銀のルール
4 大切なあなたに、伝えたいこと
黒川 伊保子
1959年、長野県生まれ。人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピュータメーカーでAI(人工知能)開発に携わり、脳とことばの研究を始める。1991年に全国の原子力発電所で稼働した、“世界初”と言われた日本語対話型コンピュータを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。著書に『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』『夫婦のトリセツ 決定版』(いずれも講談社+α新書)、『人間のトリセツ──人工知能への手紙』(ちくま新書)、『話が通じないの招待──共感障害という謎』(新潮文庫)など多数。
1959年、長野県生まれ。人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピュータメーカーでAI(人工知能)開発に携わり、脳とことばの研究を始める。1991年に全国の原子力発電所で稼働した、“世界初”と言われた日本語対話型コンピュータを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。著書に『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』『夫婦のトリセツ 決定版』(いずれも講談社+α新書)、『人間のトリセツ──人工知能への手紙』(ちくま新書)、『話が通じないの招待──共感障害という謎』(新潮文庫)など多数。