子どもの「骨」大丈夫? 成長期までに作られた「骨量」が勝負! 整形外科医が説く「子どもの骨育」が必要なワケ

大人になってからではもう遅い! 成長期に骨を育てておく重要性 #1

運動・睡眠・栄養の3要素で骨は成長

──子どもの骨の成長と運動の関係について教えてください。

伊藤薫子先生(以下、伊藤先生):成長期に体を使う機会が少ないと、危険を回避する経験が減り、体をうまく使えずにけがをしやすくなります。運動不足は、けがだけでなく骨の成長にも影響が出ます。なぜなら骨は遺伝も影響するものの、外的要因として運動・睡眠・栄養の3つの要素が密接に関係して成長しているからです。

運動といっても、アスリートのように激しく鍛える必要はありません。学校生活の中で体育の授業を受け、通学で歩き、校内の教室移動に階段の上り下りをする程度で大丈夫です。

3~5年で全身の骨が入れ替わる

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伊藤先生:骨は常に新陳代謝を繰り返しています。骨には、骨を新しく再生するために古い骨を溶かしてカルシウムを血中に流す「破骨細胞」と、血中のカルシウムを取り込み、骨に定着させることで新しい骨に作り直す「骨芽細胞」があります。

この二つの細胞の働きで、大人では5ヵ月もすれば新しい骨に生まれ変わり、3~5年で全身の骨が入れ替わるといわれています。

成長期の子どもの骨は新陳代謝が特に活発なため、大人よりも再生スピードが速く、骨折しても2/3程度の期間で治ります。

運動して骨に刺激を与えるとさらに活性化し、骨量が増していきます。成長の過程で骨格ががっしりしてきて身長が伸びるのも、新陳代謝のおかげです。

そして人は、成長期までに作られた骨量で一生を過ごします。

増えてきた小児期からの肥満

伊藤先生:食が豊かになった今では、子どもがあまり運動をしないでたくさん食べ、肥満になるまで栄養を摂りすぎてしまうことがあります。栄養の摂りすぎが早期の骨の「成熟」を招き成長を止めてしまうことがわかっています。

また、肥満になるととっさの反応が鈍くなり、バランス機能が低下して転びやすく、骨折のリスクが上がります。それどころか、体内のホルモンバランスが乱れて骨密度が下がり、もし骨折すれば運動不足でさらに肥満になっていく……、という負のスパイラルを生み出します。

成長期に運動して骨量を増やし骨密度を高めておくことは、いわば将来への骨貯金です。

骨の土台は、保護者とともに過ごす成長期にでき上がります。そのため、大人になってから骨ケアをするよりも、骨育は成長期に行うことが重要なのです。

成長期 骨貯金をするために大切なこと

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