子どもの「骨」大丈夫? 成長期までに作られた「骨量」が勝負! 整形外科医が説く「子どもの骨育」が必要なワケ

大人になってからではもう遅い! 成長期に骨を育てておく重要性 #1

骨貯金のための3つのポイント

1.カルシウムの摂取
学校では給食があり、栄養計算された食事を摂ることができます。毎日の献立に含まれている牛乳は手軽にカルシウム摂取ができる代表選手です。牛乳1本(200ml)でカルシウムは約220mgが摂れます。家庭では小魚、海藻、大豆製品なども摂取し、1日につき幼児で500mg、小学生で700mg、中高生で700~900mgのカルシウムを積極的に取り入れましょう。

2.正しい姿勢を保つ
学校にいる間はよくても、家に帰るとゲームや携帯端末などを長時間使用して首や腰に負担がかかり、ストレートネックや猫背、腰痛を訴える子どもも出てきました。
正しい姿勢は強い骨と骨を支えている筋肉があって保たれます。頭の重さは体重の約10%といわれており、3歳で約1.5kg、12歳で約3~4kg、中学生で約4~5kgです。前のめりになって突き出た頭を首の一点で支え続けると、首が悲鳴をあげます。その首を守るために前傾姿勢になり、頭痛や肩こり・腰痛を誘発すれば、勉強にも身が入りません。

正しい姿勢を保つには、胴体の真上に頭が乗っていることが大事です。画面を見続けても1時間したらできれば休憩を挟み、肩甲骨を回す体操をしましょう。

【肩甲骨体操】
① 肩を数回上下に揺らして、上半身の力を抜く。
② お腹の中心を縦に伸ばすよう意識しながら、お腹とお尻をキュッと締める。
③ 両腕を曲げて肩の上に指を置く。
④ 呼吸を止めずに、前から後ろに5回、肘を大きく回す。
⑤ 後ろから前にも5回、肘を回す。

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3.十分な睡眠
眠っている間に脳の下垂体から「成長ホルモン」が分泌され、骨や筋肉の成長を促進します。分泌される時間は、かつて22時から夜中2時までがゴールデンタイムといわれていましたが、最新の睡眠研究では就寝後1~3時間とされています。そのため、成長ホルモンを効果的に出すには、睡眠の前半に多く見られる「深睡眠」という最も深い眠りが重要です。

しかし、騒々しい場所で寝ていて常に眠りが浅かったり、睡眠不足を補うお昼寝時間が多すぎたりすると、就寝しても熟睡できず成長ホルモンが十分に分泌されなくなります。成長ホルモンの分泌低下は身長の伸びを鈍らせ、体幹部に体脂肪が増えて肥満になる恐れもあります。

厚生労働省の指針によると、子どもの理想的な睡眠時間は次のように推奨されています。

ライターが「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」を参考に説明図を制作

親が夜更かしすると子どもも寝るのが遅くなり、睡眠時間が足りないお子さんが増えています。睡眠不足は骨の成長だけでなく、脳の発達にも関与します。「寝る子は育つ」ということわざには根拠があるのです。

朝日を浴びると脳の活動を調整するホルモンのセロトニンが分泌され、一日の生活リズムがリセットするので、早寝早起きの習慣になるよう生活リズムを見直しましょう。

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骨量は第二次成長が始まる思春期に特に上がる率が高いので、この時期にいかに骨量を増やし、骨の強度を上げておくかが肝心だと伊藤先生は話します。だからこそ、「子ども時代の骨育」は重要です。

次回は成長期の骨の成長に欠かせない3要素の最後の一つ、「栄養」についてレシピなどを紹介します。

取材・文/石牟礼ともよ

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◆伊藤 薫子(いとう かおるこ)
「かおるこHappyクリニック」院長。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医。東京女子医科大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部整形外科学教室へ入局。関連病院勤務、アメリカ留学を経て慶應義塾大学病院骨粗しょう症外来を担当。2021年7月、帝国ホテル東京内に女性のための整形外科クリニックを開院。
「いくつになってもハイヒール」をモットーに、女性一人一人の骨と関節の悩みに寄り添う診療に定評がある。症状が悪化してから来院する患者さんを年間1000人以上診てきた経験から、最近では骨がスカスカになる前に対処する「予防医学」にも力を入れている。『Dr.クロワッサン 一生歩くための骨活。』(MAGAZINE HOUSE MOOK)を監修し、4ヵ月オンラインで行う骨活プログラムが人気。

かおるこHappyクリニック

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