10歳までの性教育 親は子どもに「性の多様性」どう伝える? 専門家が徹底解説

vol.4 ジェンダーと多様性

及川 夕子

▲「ジェンダーと多様性」について子どもたちへの伝え方をわかりやすく解説します(写真:アフロ)

多様性の時代

最近、多様性やダイバーシティ&インクルージョン、性的マイノリティといった言葉を耳にする機会がとても増えました。時代が大きく変わってきたことを実感する方も多いのでは。

一方で日本の社会では多くの場合、「男か女か」で区別され、公共の場には性別区分をもとにした多くのルールやしくみが存在しています。そのため、新しい価値観を受け入れることを不安に感じる人もいます。

例えば、「性自認にかかわらず誰でも利用できる『オールジェンダートイレ』(ジェンダーレストイレともいう)は必要?」という議論がSNS等で過熱しています。

昨今、SDGsなど新しい価値観の広がりから、オールジェンダートイレが公共のビルや公園等に設置されることが多くなり、「女性が使いにくい」「このままでは、女性専用トイレがなくなるのでは?」「性犯罪の温床になるのでは?」「子どもには使わせたくない」といった批判の声があがっているのです。

また、この議論に関連して、心の性と生物学的性が一致しない「トランスジェンダー」の人たちが直面する、トイレの性別区分の課題も浮き彫りになりました。安全を守ることは誰にとっても大切ですが、だからといって他者を排除したり差別してもよいということにはなりません。

11人にひとりがLGBTQ+

▲LGBTQ+層に該当すると回答した人は8.9%。11人に1人、つまり、学校の40人のクラスであれば3人ぐらいはLGBTQ+に該当する人がいる割合です(写真:アフロ)

電通ダイバーシティ・ラボのLGBTQ+調査(2020年)によると、LGBTQ+層に該当すると回答した人は8.9%でした。これは11人にひとりがLGBTQ+という割合。学校の40人のクラスであれば3人ぐらいはLGBTQ+に該当することになります。

そうした性的マイノリティの方が、自分の性のあり方に気づくのは小学生から高校生ぐらいのときが多いそうです。

また、NPO法人ReBitが行なった調査(2020年)によると、10代の若者のうち、過去1年に自殺を考えた割合・自殺未遂をした割合は、いずれも性的少数者で3〜4倍高い(全国調査()との比較)と報告されています。この時期に、いじめや偏見などから自殺を考える子どもも少なくありません。

現在、世界は「性のあり方は多様であり、多様性を認める社会を目指そう」という方向へアップデートしてきています。

選択肢が増えることは歓迎すべきこと。オールジェンダートイレがあることで安心できる人がいるのは確かなので、その人たちの権利を潰すことなく、不安に感じる女性も守られるために何ができるのか。学校や社会で周囲の人に理解されない…と悩んでいる人たちも含めてどうしたらみんなが過ごしやすくなるか。

これからの社会は、みんなで知恵を出し合うことが求められます。

「10歳までに教えておきたい性教育」シリーズの第4回は、「ジェンダーと多様性」について、親世代が子どもにどう伝え、どう一緒に考えていくかを、TIPS(=コツ、ヒント)にまとめました。

『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』を参考に、医療ライターの及川夕子氏による執筆、日本の性教育の現状に詳しい産婦人科医の高橋幸子先生による監修でお届けします。

今回のPoint

・一人ひとりに違った「性」のあり方が存在することを知る
・ジェンダーと生物学的性の違いを理解する
・マジョリティ、マイノリティについて知る
・安心できる関係性を大事にする
・世の中にある差別や不平等に気づく
・一人ひとり違う個性、違う考えがある。人と違っていていい
・「あの人はこんな人」と決めつけないようにしよう

自分も「多様性の中の一員」という視点を持つ

TIPS1:いろいろな「性」があることを知ろう
●体の性(生物学的性)のほかに、心の性(性自認)、表現する性、好きになる性(性的指向)、恋愛感情を持つ・持たない性など「多様な性のあり方」がある
●LGBTQ+や性的マイノリティの意味を知る
●シスジェンダー、異性愛という言葉とその意味を知る
●性のものさしは1つじゃない、自分も多様性の中の1人
●どのような性のあり方でも認められていい。あなたはあなたのままでいい
●性のあり方を決められるのはその人だけ

ここで大切なのは、「性的マイノリティ」は特別な人ではなく、「そもそも人の性や価値観は多様である」ということ。

性の多様性を理解するには、性のあり方は何パターンもあり「自分も多様性の中の一員なのだ」と、気づくことがスタートです。日ごろからLGBTQ+についての知識や話題に触れておくと、親子でたくさんの会話ができるでしょう。

▲性の多様性を理解するには、性のあり方は何パターンもあり「自分も多様性の中の一員なのだ」と、気づくことがスタート(写真:アフロ)

【伝え方】

きっかけが欲しいときには、LGBTQ+に関する本を一緒に読んでみる。

テレビ、アニメなどでLGBTQ+の話題が出ていたら「いろいろな生き方があるね」などと話してみる。

●「LGBTQ+って何?」と聞かれたら…
「生まれたときの性や戸籍の性は男性/女性に分けられるけど、人の性は男女の2つだけじゃないんだよ」

「Lは女性を好きになる女性(レズビアン)のこと、Gは男性を好きになる男性(ゲイ)のこと、Bは男性も女性も好きになるバイセクシュアルのこと、Tは生まれた時の性別に違和感があるトランスジェンダーの頭文字を取った言葉だよ。Qには2つ意味があって、1つはクエスチョニング。これは自分の性のあり方について悩んでいる最中の人や昨日と今日で違うという人たちを指すよ。もう1つのクイアは、もともとは『変わり者』という意味の言葉だよ。性的指向で変わり者とされていた人たちが自ら『クイア』と名乗るようになって、今はプライドを持って使われているよ。そして最後の+には、それ以外の人という意味が込められているよ」

「LGBTQ+は、性的マイノリティの人たちの総称、という意味で使われることもあるよ」

●「性の多様性って何?」と聞かれたら…
「性のあり方=セクシュアリティは、体の性(生物学的性)のほかに、心の性(性自認)、表現する性、好きになる性(性的指向)、恋愛感情を持つ・持たない性などの要素からなる、と考えられているよ」

「このうち『表現する性』というのは、言葉づかい、見た目(ファッションやメイクなど)、態度などで表現する性のことを言うよ。社会には一般的に男らしいとされるものや女らしいとされるものがあるよね。その中で自分がどういう表現をしたいか、どういう表現が好きかということを指すよ。そもそも、10人いたら10人それぞれに、違う考え方がありそうだよね。だとすれば、組み合わせは無限にあるんだよ」

「心と体の性が一致している人を『シスジェンダー』、違和感がある人を『トランスジェンダー』って言うよ。異性を好きな人は『異性愛者(ヘテロセクシュアル)』 、同性が好きな人を『同性愛者(ホモセクシュアル)』って言うよ。恋愛の気持ちをもたない『無性愛者(アセクシャル)』の人もいるんだよ」

●「男の人なのになんで化粧をするの? スカートをはくの?」などと聞かれたら…
「男性も女性も、化粧したい人はしていいし、スカートをはきたい人は、はいていいんだよ」

「女性に生まれたけれど、心は男性だと感じる人もいるし、『自分はどっちでもないよ』とか『決められたくないな』とか、『迷っている』という人もいるんだよ。どう感じていても、誰を好きになっても、どんな格好をしても、その人はその人であることには変わらないよね」

「普通ってなんだろうね? なんだと思う? 女の子だからピンクが好きとは限らないよね。長い髪の子もいれば、短い髪の子もいる。肌の色も、目の色も、身長も、一人ひとり個性があるのと同じで、数学が好きな子もいれば、体育の授業が好きな子もいる。ズボンをはきたい女の子がいてもいいよね。男の子みんながヒーローになりたいわけでもない。それぞれ自分の好きや、得意なことがあっていいんだよ」

「誰にとっても自分らしく生きていけるのが一番だよね。こうあるべきって他人が決めるものではないし、正解はないんだよね。どんなセクシュアリティであっても、自分を無理に隠さなくてもいいし、恥ずかしく思う必要はないんだよ」

●SOGIとは
最近は「SOGI(ソジ)」という言葉が使われることもあります。SOGIとは「SO=Sexual Orientation(性的指向)とGI=Gender Identity(性自認)」の頭文字を取った言葉。LGBTQ+は性的マイノリティの総称として使われる言葉ですが、SOとGIの組み合わせはすべての人にあります。SOGIというときには「すべての人にSOGIがある」という使い方をします。

SOGI「SO=Sexual Orientation(性的指向)とGI=Gender Identity(性自認)」の頭文字を取った言葉。すべての人にSOGIがある

共感する力「エンパシー」を育てよう

TIPS2:マイノリティは学校や社会で困ることがあることに気づく
●性的マイノリティの人はさまざまなことで困っている
●どうして多様性を理解する必要があるのか考えよう
●友だちだったら、自分だったら…って考えてみよう
●ホモ・オカマ・レズという言葉は性を否定し、人を傷つける言葉
●困っている人と一緒に行動することもできる
●アウティングをしてはいけない

性的マイノリティの人は40人のクラスに3人ほどいると推測されています。もし出会ったことがないとしたら、あなたの周囲にいる性的マイノリティの人はさまざまな事情で「言えない」か「言いたくない」のかもしれません。

多様性を認め合い尊重する人が増えることで、性的マイノリティの人たちがあえてカミングアウトしなくても気持ちよく過ごしていける社会を作ることができます。

子どもたちが性的マイノリティについて、からかったり、特別な存在だとみなしていたりしているようだと気づいたら、話し合って想像力を働かせてみることを子どもに促したいですね。

相手の立場になって相手がどう感じているか、何を考えているかを想像する力のことを「エンパシー」と言います。同情(シンパシー)ではなくエンパシー(共感性)を育てていきましょう。

●ワーク:マイノリティとは少数派という意味。自分が少数派になったときを想像してみよう
「クラスで多数決をとったら、みんなと意見が違っていたときや少数派のグループになったとき、自分はどう感じた?」
「グループ分けで仲間外れにされたらどう思う?」
「男女のどちらかしか選べないとか、女の子はピンク、男の子は青しか選べないとしたら窮屈じゃない?」

など、親子で話し合ってみる機会を持ちましょう。「その人らしさを認める」ということがどんなことなのか、大人でさえ子育てに忙しく深く考えることはできていないかもしれません。でも、想像する力は誰にでもあって考える機会を増やせば、きっと理解は深まるはず。

まずは、大人も子どもも自分ごとに置き換えてみること。それが多様性について学ぶきっかけになり、どう行動したらみんなが気持ちよく生きていけるのかを想像し、行動を変えていくきっかけになるでしょう。

●性的マイノリティの人たちが「困っていること」を知ろう
性的マイノリティの人たちは社会や学校などさまざまなシーンで、困ることがあります。

・心の性と異なる制服を着るのが苦痛で不登校になってしまう
・「オカマ・レズ・ホモ」とからかわれ傷ついた
・トイレが男性用/女性用しかなく入りにくい
・入浴施設や更衣室などの施設が利用しづらい
・同性同士の恋愛が周囲に理解されない
・無視されたり、仲間外れにされたりする
・就職や就学などで差別を受けたり、ハラスメントを受けたりする
・同性カップルは家を借りづらい、緊急事態(事故や入院など)のときに家族として認めてもらえない

●こんな行動や態度は「ハラスメント」
・「おとこおんな」「オカマ」などの差別的な言葉やからかい
・「早く彼氏(彼女)を作りなよ」「なんで結婚しないの?」など、その人が聞かれたくないプライバシーを無理に聞くこと
・「あの子、レズなんだって」など、許可なくその人の性的指向や性自認を他人にバラしたりうわさを流したりすること(アウティングと言う)
・SOGIを理由としたいじめ、無視、暴力行為
・決められた男女の制服を着ないという理由で転校を強要するといった、不当な入学拒否・転校・退学など
・施設やサービスを正当な理由なく利用拒否すること

誰かを傷つけていないか、親子で振り返ってみましょう。

●カミングアウトされたときは?
いつ、誰に「カミングアウト」するかは本人が決めることであり、周囲が強要することであってはいけません。また、当事者が話してくれたとしても、「理解されないのでは?」という、不安を抱えているかもしれません。

子どもが友達からカミングアウトされたときや、親が子からカミングアウトされたときの望ましい対応は、信じて話してくれたことに対してまず、「話してくれてありがとう」と伝えることです。その上で「何かできることはある?」と伝えると、相談しやすくなるでしょう。

当事者から具体的な対応を求められた場合には、そのことを「誰になら話していいか」「すでに他の誰かに話したかどうか」を確認し、誰か第三者に相談したりする場合には「本人の了承」を得るようにします。アウティングはプライバシーの侵害になります。

●「性的マイノリティの友達がいじめられている、どうしたらいい?」と子どもに相談されたら

【伝え方】
「打ち明けてくれてえらかったね、ありがとう。性の多様性を理解して、その人の助けになりたいと考える人を『アライ』って言うんだよ。友達も勇気が必要だったよね。えらいよね。相談されたあなたは、ありのままを受け止めて、これまで通りに友達でいること、そして話を聞いてあげるだけでも友達の助けになると思うよ」

「たとえ助けてあげたい、力になりたいと思っても、性的指向や心の性を、他の誰かに勝手に伝えることは、してはいけないよ。他の人に話してもいい?って聞いて、許可をもらってから、誰かに相談することが大切だよ」

LGBTQ+当事者やその家族・友達などが助けを必要としている時には、行政の相談室などに話してみるのも1つの方法です。

法務省「こどもの人権110番」0120‐007‐110(平日8時30分~17時15分 無料)
法務省「みんなの人権110番」0570-003-110
よりそいホットライン 0120-279-338 (岩手・宮城・福島県からは0120-279-226)https://www.since2011.net/yorisoi/

このほか、都道府県や市区町村がLGBTQ+相談ダイヤルを設置(委託を含む)している場合があります。

ジェンダー観への気づきが、意識を変えるきっかけに

TIPS3:身の回りにあるジェンダーについて子どもと一緒に考える
●ジェンダーとは社会や文化が作った男女の役割やイメージのこと
●なぜ「男らしい」とか「女らしい」というのか、本当にそうなのか考えてみよう
●女らしさ、男らしさより「自分らしさ」に目を向けよう
●身の回りのジェンダーにとらわれない「もの・こと」を探してみよう
●力があること、数が多いこと、性別の違いが、差別や不平等につながることがある

『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』では、5〜8歳の時点で「生物学的性とジェンダーの違いを理解することが重要である」と学び、9〜12歳では「ジェンダーステレオタイプ(固定観念)は偏見や差別や暴力につながる可能性があること」を学びます。

子どもたちがこれから生きていくのは、多様性や「その人らしさ(個性)」を受け入れ認め合う、フラットでグローバルな社会です。しかし、集団生活の中では、他の子と違うことでいじめや仲間外れにあったり、からかわれたりということが起こります。同調圧力や同質性(性別を含む)にこだわることから生まれる差別や偏見は、大人の集団生活の中でもしばしば見られることです。

そもそも同質性にこだわる習慣は、「男子なんだから泣かないの」「女の子は料理ができた方がいいわね」「女の子は色白でなくちゃね」といった、「無意識の決めつけ」や「期待される性別イメージ」の押し付けが影響していることは、容易に想像できます。家庭の中にあるジェンダー観は、多様性の広がりを阻む、最も身近な要因といえるかもしれません。

まずは、親自身が伝統的なジェンダー観がもたらす影響を知って、「なぜ、多様性を認め合う社会を作る上で、ジェンダーが障害になるのだろう?」「身近なジェンダー不平等には、どのようなものがあるだろう」と考える機会を持ちたいものです。その上で、子どもたちへのコミュニケーションを、意識的に変えていきましょう。そのヒントをあげてみました。

個を大切にした子育てのヒント
●性別でピンクとブルーなどの色分けをしない
●家庭の中で、男だから、女だからという理由で役割分担を決めない。性別でなく、家族で協力し合うためにそれぞれが役割を持つ、という考え方にする
●男だから、女だからという口ぐせをやめる
●子ども自身が興味を持つもの・ことを大切にする
●たくさんの選択肢から、子どもが自ら選ぶ機会を作る
●異なる意見を否定しない、安心して思っていることを言える居場所を作る
●「人間は一人ひとり違っていていい」「男らしさ、女らしさにこだわらなくていい」ことを伝える

ジェンダーにとらわれないものを探してみよう
社会的な性別イメージにとらわれないファッションなどが広がり始めています。こうした話題をきっかけに、ジェンダーについて話し合うのもおすすめです。
●ジェンダーニュートラルなファッション
●ジェンダーニュートラルな制服、水着
●誰でもトイレ、オールジェンダートイレ
●ランドセル、家電などもジェンダニュートラルカラーが増えている
●「バービ人形」で知られるマテル社の、ジェンダーニュートラルな人形キット(「クリエイタブル・ワールド」シリーズ)

違いを大切に。人権の意味を改めて考える

TIPS4:人権についてわかりやすく伝える
●人権とは誰もが生まれながらに持っている、人間が人間らしく生きていくための権利のこと
●マジョリティもマイノリティも、多様性の中の1つに含まれる
●「普通の人」と「普通でない人」という枠組みにとらわれていると人権が見えなくなる
●人権教育とは、違和感を対立に向けるのではなく、違いをプラスに捉える力を育てること

▲人権とは誰もが生まれながらに持っている、人間が人間らしく生きていくための権利のこと(写真:アフロ)

人権というものを日常的に意識することは、これまでなかったかもしれません。多様性とは、さまざまな社会(人種・国籍・宗教・障がいの有無)、民族的背景、異なる性別、性的指向など、それぞれの人々が持つ多種多様なバックグラウンドのことをさします。

多様性社会では、ひとりひとりが固定観念を問い直し、自分と違う人を受容し、すべての人が持つ人権というものを意識しながら生きていく必要があります。

日本で、女性が初めて参政権を行使したのは昭和21年(1946年)。こども基本法が日本で施行されたのは令和5年(2023年)。国際的には、最初に女性参政権を認めたのはニュージーランドで1893年、子どもの権利条約は1989年に国連総会において制定されました。

長い人類の歴史の中で、子どもと女性の人権の歴史は、まだ百年にも満たないのです(※)。そう考えると、私たちは人権について、しっかりと学ぶ必要があるでしょう。(※参考:「百年の子」(小学館)古内一絵:著)

「人権」そして「ジェンダーと多様性」を学ぶことについては、以下のように考えることも大切です。

「『人権教育』に求められるのは,これまで『普通』といってきたマジョリティが、マイノリティを『普通』の仲間に入れてあげることではありません。むしろマジョリティが『普通』の枠から降り、自分を『多様性』の中の一つとして位置づけ直すことにあります。つまり、『LGBT』や『性的マイノリティ』について学ぶのではなく、『マイノリティ』を知らなくてもよいとしてきた社会(自分)を問い、自分自身を含む『性の多様性』について学ぶということです」

(出典:渡辺大輔(埼玉大学 基盤教育研究センター)「倉敷市教育委員会 人権教育実践資料3 性の多様性を認め合う児童生徒の育成II 「巻頭のことば」より)

こうした背景も知っておきながら、子どもたちに「人は生まれた時から、大切にされるべき存在で、自分らしく、安全に、楽しく、健康に生きていく権利があること」を伝えていきたいですね。

【伝え方】

子どもが守られる社会を目指すために、子どもの声をちゃんと聞きましょう、SOSを見逃さないようにしましょう。

日頃から「一緒に考えるよ」「気持ちを言っていいよ」「思ったことを伝えていいよ」と伝え、子どもと一緒に考えていく姿勢を見せてあげてください。

「人は誰でも、大切にされ、自分らしく生きる権利があるよ。子どもは、どんな国、親、性別に生まれようと、社会から守られ健康に育つ権利があるんだよ」

「みんな一人ひとり違うことはステキなことなんだよ。違いを大切にできたらみんなに居心地のいい世界になるよ」

「全ての子どもは平等に権利を持っているよ。国の違いや、性の違い、どのような言葉を使うか、どんな宗教を信じているか、どんな意見をもっているか、心や体に障がいがあるかないか、お金持ちであるかないか、親がどういう人であるか、などによって差別されないんだよ」

「子どもだから意見を言えないなんてことはないよ。自由に意見を言える権利があるよ」

「どんなときでも、君には伝える力、意見を言う力があるんだよ。気持ちを大切にしていいし、意見を言う権利があるよ。困っていること、悩んでいること、おかしいなと思ったら、信頼できる大人を探して伝えるんだよ」

「人はみんな心に何かを感じて生きている。つらい、悲しい、嬉しい、好きとか、どんな気持ちも大切。自分の気持ちを否定しなくていいよ」

子どもの権利条約(国際条約)4つの原則とは
この4つは、日本の「こども基本法」(2023年4月施行)にも入っています。
●安全安心に成長する権利(生命、生存及び発達に対する権利)
●子どもにとってもっとも良いことを国や大人に考えてもらう権利(子どもの最善の利益)
●意見を伝え参画する権利(子どもの意見の尊重)
●差別されない権利(差別の禁止)

「こども基本法」について詳しくはこちら

【子どもたちが「性教育」を学ぶ必要があるのはなぜでしょうか。それはつまり、自身の体について正しく学び、自己の性と健全に向き合うことは、私たちがよりよく生きるために必要なことだからです。また、自己決定権を尊重し、自己と他者との境界線(バウンダリー)を尊重することは、普遍的人権につながっています。

『10歳までの「性教育」』シリーズは全4回。〈10歳までに教えておきたい〉をキーワードとし、ユネスコの『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』に基づき、「Vol.1 同意とバウンダリー、自分の体と心の守り方」「Vol.2 ボディイメージと、初経・精通・妊娠のしくみ」、「Vol.3 プライバシーと安全、SNSとのつきあい方」「vol.4 ジェンダーと多様性」を解説します。】

参考・出典
ユネスコ 国際セクシュアリティ教育ガイダンス
ユネスコ 子どもの権利条約 日本ユニセフ協会

性教育について詳しく知る本

あかちゃんはどうやってできるの?
文:コーリー・シルヴァーバーグ、絵:フィオナ・スミス、訳:たち あすか

あかちゃんはどこからくるの?と幼い子どもにきかれたら、この本の出番です。性別を表す言葉をいっさい使わず、肌の色を特定しないカラフルな色づかいで、人が生まれるしくみについて、わかりやすく楽しく語ります。多様な〈生〉と〈性〉を尊重する精神に貫かれた、すべての子どもとすべての家族のための、画期的な性教育の絵本!

はたらく細胞LADY 10代女性が知っておきたい「性」の新知識
著:及川夕子 監修:高橋幸子・原田重光・乙川灯・清水茜

「娘と性について話したいけど……」と悩むお母さん、お父さんへにおすすめの、10代女性の「心」と「体」を守る最新情報を1冊にまとめた本。これから体の変調を迎え、さまざまな悩みを抱えることになるティーンの女性に向けて、ユネスコの提唱する世界基準の「包括的性教育」に沿って、正しい性の知識を紹介する本です。学校ではしっかり教えてもらえない、心と体がラクになる「性」の知識を得て、幸福に生きる(Well Being)ためのスキルを手に入れましょう。

プロフィール/
及川夕子(おいかわ・ゆうこ)
女性の健康と医療、更年期、性暴力、ジェンダー、SRHRなど、主に「女性」に関わる取材・執筆を得意とする医療ライター、エディターであり、メノポーズカウンセラー。 近著『はたらく細胞LADY 10代女性が知っておきたい「性」の新知識』(講談社)では、ティーンの女性に向けて、ユネスコの提唱する世界基準の「包括的性教育」にそって、心と体がラクになる「性」の知識や幸福に生きる(Well Being)ためのスキルをわかりやすく紹介。

高橋幸子(たかはし・さちこ)
サッコ先生の愛称で年間160回もの性教育の講演を行う産婦人科医。埼玉医科大学 医療人育成支援センター・地域医学推進センター/産婦人科/医学教育センター助教。日本家族計画協会クリニック非常勤医師。彩の国思春期研究会西部支部会長。著書に『サッコ先生と!からだこころ研究所 小学生と考える「性ってなに?」』(リトル・モア)など。

たかはし さちこ

高橋 幸子

Sachiko Takahashi
産婦人科医

サッコ先生の愛称で年間160回もの性教育の講演を行う産婦人科医。埼玉医科大学 医療人育成支援センター・地域医学推進センター/産婦人科/...

おいかわ ゆうこ

及川 夕子

医療ライター

新聞社勤務を経てフリーランスに。新聞、雑誌、WEBメディアなどで、記事の企画、編集、執筆を手がける。近年は、女性の健康・美容、更年期の...