
子どもの「性被害」を防ぐ【おうち性教育】 親の対応は? どこに相談? 小児科医が詳しく説明
2025.04.28
子どもが被害を打ち明けたとき、まずすること

「今日、幼稚園でお友だちに後ろから抱きつかれたの……」
ある日、わが子が泣きそうな顔で打ち明けてきたとしたら、あなたはどんな言葉を返しますか?
「ふざけただけよ」と軽く受け流す? それとも、「何があったの?」「どういうこと?」などと詳細を尋ねる?
「このようなときには、まず子どもの話をきちんと受け止めてから、『話してくれてありがとう』という言葉をかけてあげてください」
こう教えてくれるのは、医師の森 重智(もり・しげとも)さん。『あいち小児保健医療総合センター』の総合診療科に務める小児科医で、ご自身も子育て真っ最中の父親です。

森先生は、保育園や幼稚園、小中学校の出張授業で「子どもたちが笑顔でいられる教育」を広める活動を行っています。
子どもから訴えがあったとき、まずは話を受け止めて「ありがとう」と声をかけることも、この「子どもたちが笑顔でいられる教育」をふまえたものだそう。
「ありがとう」の声かけについては後ほど詳しく説明しますが、まずは「子どもたちが笑顔でいられる教育」についてお聞きします。
「笑顔でいられる」……ごく普通のことのように思えますが、実際にはどういう教育なのでしょうか?
必要なのは子どもたちの「生きる力」を育てること
「“笑顔でいられる”には2つのアプローチがあります」
「ひとつは、いじめや性暴力などを減らしてマイナスをゼロに近づけること。もうひとつは、良好な人間関係を築き、自己肯定感を育ててゼロをプラスにすること。僕は、その両方を支える教育に取り組んでいます」
先生が実践しているのは、実は、今、令和の新常識として、少しずつ広まっている「包括的性教育」。これは、単なる性に関する知識を教えるだけでなく、人権や多様性への理解も含めた、より広い視点の教育です。
「“包括的性教育”というと、ちょっと難しい感じがするかもしれませんが、要は、“生きる力”を育ててあげるというのでしょうか。ただ単に知識を教えるのではなく、実際に困ったときに行動できるようにしてあげる。そして、より良い人生を歩めるようにサポートしたい」
「日本の若者は自己肯定感が低いと言われていますが、この教育によって、前向きに生きられるようになることも期待しています」
「話しやすい」環境を作る
「この50年間で、日本における子どもの数は半分になった一方で、いじめ・自殺・虐待は増加し、性暴力の被害も深刻化しています。教育現場の声を聞くと、園児同士の性のトラブルも増えているようなんですね」
だからこそ、森先生は「子どもたちが心や身体を病んでしまう前に予防したい」という強い思いから、包括的性教育の普及に力を入れています。
そして同時に、家庭でも包括的性教育を日常的に行うことの重要性を語ります。
「家庭でも日常的に性について話し合える環境が大切です」
「例えば、“水着で隠れるプライベートゾーンは人に見せない・触らせない”といった基本を、絵本などで学ぶことで、万が一、性のトラブルに巻き込まれたときにも、子ども自身が気づきやすくなり、親にも話しやすくなります」
