【ファストドクター現役小児科医が回答】家族が夜間・休日に急な体調不良 対応法を伝授

救急車、救急外来受診、往診、オンライン診療…増える選択肢の上手な使い分けとは

写真提供:ファストドクター
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子どもが急な体調不良になったときの新たな選択肢として、オンライン診療や救急往診の認知が広がりを見せています。

関心を持つママ・パパが増えている一方で、救急車や救急外来の判断に迷う方、興味はあるが使ったことがないという方が多いことが、前回のアンケート結果からあきらかになりました。

今回は、救急医療の現場に多く立ちあい、現在救急往診で診察もおこなっている小児科医の西田明弘(にしだ あきひろ)先生にお話をうかがい、緊急時に受診するかどうかの判断ポイントや、適切な対応などを教えていただきました。

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西田明弘(にしだ あきひろ)先生
片村クリニック勤務。
日本小児科学会小児科専門医。
専門領域はアレルギー、小児腎臓病。
2010年に京都府立医科大学を卒業後、これまで京都、大阪、兵庫を中心に小児科医として勤務し、夜間・休日はファストドクターの提携医療機関の非常勤医として勤務。

「救急車を躊躇せず呼ぶべきケース」は年齢によって異なる

──夜間や休日の体調不良で、どうしたらよいか判断に困ったというお母さんが多くいます。まずは「こんな症状があるときは救急車を呼ぶべき」という具体例を教えていただけますか?

まず、患者さんが成人の場合ですが、

・会話が成り立たない
・けいれんが止まらない
・けいれんが止まったあとも意識が戻らない
・意識がない、もしくは反応が悪い

このような異常が見られるときは、すぐに救急車を呼びましょう。

また、突然症状が表れたときも要注意です。

・胸や背中の激痛
・顔面のマヒ(ろれつがまわらない)
・手足のマヒ

これらの症状が「突然」起こったときは、すぐ救急車を呼ぶ判断をしてよいと思います。

続いて子どもの場合です。

呼吸の症状では、咳が止まらない、会話ができないくらいゼイゼイと苦しそう、呼吸が弱い状態などが挙げられます。顔色があきらかによくないときや、唇が紫色になってしまっている「チアノーゼ」というサインが出ているときは、緊急と判断してよいでしょう。

けいれんが5分以上続くときも、救急車を呼んだほうがよいでしょう。頭痛とけいれん、意識障害を併発している場合は脳内の出血が疑われるため、一刻を要します。

また最近はアレルギーをもつ患者さんが増えてきています。単純なじんましんは緊急性が低いですが、じんましんとあわせて「嘔吐」「咳込み」「ぐったりしている」「けいれん」など2種類以上の症状が出ているときはアナフィラキシーの疑いがありますので、緊急性が高いと判断して救急要請してください。

近年身近になったオンライン診療や救急往診 救急外来との上手な使い分けは?

──コロナ禍を経て、オンライン診療や往診の認知が広まりつつあります。機会があれば使ってみたいという方に向けて、上手な使い分けについて教えていただけますでしょうか?

症状の程度に応じて、救急外来・オンライン診療・救急往診のどれが最適なのか、適宜判断が必要になってくると思います。

例を挙げますと、息苦しさがある、咳がとまらない、めまいが続くなどの症状があるときは、救急外来での受診が望ましいです。

オンライン診療は、基本的には急を要しない症状の方が受診を迷ったときに、相談窓口的な使いかたをするのがよいと思います。家で様子を見るか一次救急を受診するかを的確に判断するため、緊急時の受診を遅れさせないためにご活用いただくとよいでしょう。

救急往診は、医師が通院困難性と症状の緊急性が高いと判断した場合に適応される受診方法です。自力で通院することができない高齢の患者さんや、ご兄弟がいて体調が悪いお子さんだけを病院まで連れていくことがむずかしいときなどに適しています。足腰が悪くて外出することが困難な患者さまに救急往診に行ったとき、自宅で診察が受けられることを非常によろこんでおられました。

「救急外来」軽症者も診てもらえる一次救急、重症者の受け入れが可能な二次救急

──体調急変時の受診先としてまっさきに思い浮かぶ「救急外来」ですが、どんな特徴がありますか? また、どんな患者さんが利用される場所なのでしょうか?

救急外来には、各都道府県に配置されている休日夜間急患センターなどの一次救急、入院での対応も含めて受け入れをおこなっている総合病院などの二次救急、そして救命救急センターのように生命に関わる重症の方に対応する三次救急があります。

一次救急では入院の必要がない軽症の方に対応しており、必要に応じてお薬の処方、点滴や吸入、浣腸といった処置をしてもらえます。

その一方で、夜間・休日に診療できる医療機関は限られているため、どうしても待ち時間が長くなる傾向があります。また、各自で交通手段を確保しないといけないところもデメリットかもしれません。

さらに、一次救急には入院設備がない医療機関が多く、もし入院となった場合には移動していただくことになります。

二次救急のメリットは、総合病院のため設備が整っており、手術や入院などに対応できることです。

デメリットは、緊急性が低いと判断された患者さんの場合、診察を断られる可能性がある点です。二次救急は入院中の患者さんや救急車搬送の受け入れ対応が必要なので、軽症の方は一次救急や救急往診、オンライン診療をご検討いただくといいと思います。

自宅のベッドが待合室 リラックスして受診できる「救急往診」

──続いて、「救急往診」の特徴も教えてください。先生が往診に行った現場でなにか感じたことがありましたら、そちらもぜひお聞かせいただけますか。

これまでの救急往診経験から受けた印象として、患者さんたちは自宅で診察を受けられるので、とてもリラックスしている様子でした。

「病院に行ったときはすごく泣いてしまい大変だった」というお子さまを持つご家族から「往診のときは泣かずに検査ができました」という声をいただいています。

病院では待ち時間が長くなりがちで、家から病院までの移動時間も負担になると思います。待合室のイスで待つのと家で寝ながら待つのとではどちらがラクかを考えますと、患者さんとご家族にかかる負担が違ってくるのがおわかりいただけるのではないでしょうか。

薬に関しては、一部出せない薬もあるもののだいたいのお薬はその場でお渡しすることができます。お子さん用には、体重別に分けて処方薬を用意していますので安心してください。

処方せんを出す場合には、FAXやアプリを使って処方せんを送ると家まで薬を届けてくれるような各薬局のサービスをうまく使っていただければと思います。

救急往診のデメリットとしては、対応できる範囲が限られてしまうことです。医療施設にはある大がかりな検査機器は一般家庭にはありませんし、救急往診の際に持参できる設備にも限りがあります。

そのため、救急往診の結果、より詳しい検査や処置を受けられるように病院での受診を促すケースもあります。

常用薬をもらいたいときや受診を迷ったときは「オンライン診療」が適切

──それでは最後に、今後さらなる普及が期待される「オンライン診療」の特徴について教えてください。

オンライン診療は、自宅に限らず通信設備さえあればどこからでも受診できますから、たとえば仕事の休憩時間にオンラインでつないで常用薬を処方してもらうといった柔軟な時間の使いかたができます。定期的な再診の患者さんであれば、デメリットはあまりないといっていいのではないかと思います。

ご自身が小さなお子さんを同伴して受診しなければならないときや患者さん自身が動けないときなど、通院の負担がないことはメリットだと思います。

デメリットを挙げるとしたら、やはり対面での診察と比べて顔色や様子がわかりにくく、どうしても評価が不十分になる場合があることです。ご家族が病院に連れていくか迷うようなグレーゾーンのときというのは、わたしたちにも判断がむずかしいケースがあります。

ていねいな問診をおこない診察をしていますが、十分に判断がつかない場合は救急外来での受診をすすめることもあります。

上手に使い分けて適切な医療機関にかかろう

手軽に使えるオンライン受診や自宅で待つことができる救急往診は、非常に便利な手段です。

「今までは救急外来か自宅待機しか選択がなかったところ、そのあいだを埋めつつ両方のメリットを持つような取り組みは、患者さんにとってメリットが非常に大きいと思います」と西田先生。

うまく使い分けて適切な医療機関にかかれるよう、本記事を参考にしてみてください。

次回も引き続き小児科医の西田先生にお話をうかがい、急なケガや病気になった家族を「自宅で様子見」をする際に気をつけるべきポイントなどを解説していただきます。

取材・文/大沢ゆい・笹川かおり (AnyMaMaエニママ)

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