子どもとママの法律相談 ママ友が立て替えたお金を返してくれない スマートな催促法を弁護士が解説

こんな時、どうすればいい? 子どもとママに関わる法律相談〔第7回〕

弁護士:西田 穣

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お金の貸し借りで、ママ友との関係がぎくしゃくしてしまうことがあります。しかも、お茶代やランチ代といった金額は、少額だけに強く言いにくく、いつまでももやもやすることも。うっかり忘れていただけの人、ちょっとズルくてできれば払わずにすませたい人、それぞれに対する対処法を、弁護士の西田穣(にしだみのる)先生に聞いてみました。少額からまとまったお金まで共通の「お金の貸し借り」に関する知識。ちょっと弱気でなかなか催促できないママ必見です。

1000円程度のお金の貸し借りがモヤモヤした状況に

ママ友何人かとお茶やランチをしたときに「あ、お財布忘れた。ごめん!ちょっと貸しておいてくれない?」なんていうことはよくあることです。あるいは、ママ友の出産祝いを仲良しグループで贈るときに、幹事のママが立て替えて払っておくこともめずらしくないでしょう。

たいていは数日内に「この間は助かった! ありがとう」と返してくれると思います。最近は、PayPayなどのQRコード決済で送金してくれるママも増えているかもしれません。

ただ、なかにはいつまでたっても返してくれないママもいるのではないでしょうか。その後何回か顔を合わせているのに、向こうからちっともその話がでないのでこちらからも言い出せずにいる、ということもあるでしょう。大金ならともかく、お茶代やランチ代くらいの額だとかえって催促もしにくいもの。とはいえ、ずっとそのままでもなんだかモヤモヤします。

結論から言えば、そのママは忘れているだけかもしれないので、「この間のランチ代だけど、もしかして忘れてるでしょ(笑)?」と気軽に聞いてみればいいと思います。「相手も気まずいだろうから2人っきりになったときに聞こう」などと深刻に考えず、みんながいるときにさらっと聞くのがポイントです。対面でなくても、グループLINEで何かを話しているときに、ふと思いついたというようにその話題を持ち出してもいいですね。

「立て替え」が「奢った」ことに!? 相手に悪意がある場合

問題になるのは、ママ友がわざとやっている場合です。ママ友に限らず、男性でも女性でも「ちょっとだけズルい人」という人はどこにでもいるものです。会計のときにわざとトイレに行く、みんなよりも少し早く帰って「用事があるから先に帰るけど、後で割り勘の金額を教えてね」などと言っては、しつこく催促されるまでお金を払わないなど。会社の同僚や親せきのなかにだって「ああ、またあの人か」とため息とともに噂される人が、一人や二人はいるのではないでしょうか。

法律的にみると、お金を渡すというのは2通りの解釈があります。「贈与」と「貸金」です。贈与というのは、文字どおり「あげたお金」です。先ほどの例でいえばお茶やランチを「奢ってあげた」状態です。

もちろん、払ったほうにしてみれば単に立て替えてあげているだけで、奢ったつもりはまったくないでしょう。しかし「貸金」の前提は「返還約束(将来返済すると約束している)」があること。つまり、「お財布忘れたからちょっと払っておいてもらえる?」「わかった。じゃあ今度会ったときにね」というやりとりでは、成立しないことになります。相手は一言も「返す」とは言っていないわけですから。

「え? てっきり奢ってくれるものだと思ってたけど」と言われてしまえばそれまで。もしくは、もうちょっとしたたかな相手であれば「割り勘という意味ではなくて、交互に支払うという約束だと思っていた。つまりこの間は奢ってもらったけど、今度は自分が奢るよというやりとりのつもりだった(その“今度”はまだきてないけど)」などと言われてしまうかもしれません。

「返すつもりだ」 重要な相手の一言を残す方法

これを防ぐには、相手から「お金を借りている」「返すつもりがある」という言葉を確実に引き出しておくことが必要です。「ちょっと払っておいて!」には「次会えるのは来週の参観日のときだから、そのときに返してもらうのでいい?」と具体的に提示し、必ず「わかった」という返事をもらいましょう。LINEのやりとりなら文字に残るので、なおいいでしょう。グループLINEならそのやりとりを他のママたちも見ています。

あと、とても細かいことですが、内容と金額についてもはっきりさせておくほうがいいですね。返還約束はいくら返すかということも大切だからです。例えばコーヒーとケーキ代を立て替えた場合、「お茶代」とざっくり言ってしまうと、コーヒー代しか含まれないと言われてしまうかもしれません。もらったレシートをグループLINEで送って、「私も忘れちゃうからメモ代わりにレシート送っておくね!」などと書いておけば、ケチな人だと思われる心配は無用です。

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「ここまでしなければいけないママ友なんて、そもそも付き合わなければいいのに」と思う人もいるでしょう。ただ、どうしても付き合いをやめることができない場合もあります。親たちも仲が良くて家族ぐるみの付き合いをしている、ママ友であると同時に親戚(義妹や義姉やいとこなど)でもある、幼馴染でママ友としても付き合っているといったように距離を置くに置けない場合は、自衛手段のひとつとして覚えておいたほうがいいかもしれません。

金額の大小にかかわらない 書面に残すべき「4つの項目」とは

また、これはお茶代やランチ代といった話だけではありません。単なるママ友だけの付き合いではなく親戚や幼馴染みでもあるといったように関係性が入り組んでいた場合、貸し借りするお金が多額になる可能性もあるでしょう。家の建て替えの費用、高齢の親戚を施設に入れるための費用、子どもの進学や留学のための費用、不景気で家業が倒産したなどやむにやまれぬ事情でお金を貸してくれと言われたときは、「貸金」であることを証明するために、

①いつ
②何代として
③いくら借りて
④いつ返す予定か


を、書面に残しておきましょう。メール、ラインでのやりとりでも、きちんと相手から①から④の内容を引き出せていれば十分です。

厳密には口約束でも法的効力は生じますが、目に見える形にして、第三者にもわかるようにしておくほうが、解決は図りやすくなります。

現実の生活ではトラブルがおこるたびに、漫画やTVドラマのように「訴えてやる!」というわけにはいきませんが、法律の考え方をちょっと知っておくと、トラブルを解決しやすくなります。ぜひ、身近な法律に興味をもってみてください。

にしだみのる

西田 穣

Minoru Nishida
弁護士

慶應義塾大学文学部(史学科)卒業。西武鉄道株主訴訟弁護団(2004年~2016年)、日本弁護士連合会取調べの可視化本部事務局次長(20...