地獄の不登校時代に「死なない理由」が見つかって… 世界的分身ロボット開発者を救った「親の行動」とは

シリーズ「不登校のキミとその親へ」#2‐2 分身ロボット開発者・吉藤オリィ氏~不登校時代の苦しみと救われたこと~

ロボットコミュニケーター:吉藤 オリィ

分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」のコンセプトは“心を運ぶ車椅子”。カメラ、マイク、スピーカーが搭載され、遠隔からタブレットなどを介して操作でき、アクションや会話ができる。  写真:日下部真紀

将来のことを言われるのがいちばんつらかった

不登校になってすぐのころは、親もどうにか学校に行かせようとしました。励まそうとして、いろんな言葉をかけてくれた。だけど、自分ではどうにもできない。

いちばんつらかったのは、将来のことを言われることでしたね。「このままだと将来たいへんなことになるよ」とか。本人も、それはもうわかってるわけです。

会社が危ないときだって、具体的にどうすればいいかではなくて、このままだと倒産するよと言われたって何の助けにも救いにもなりません。もちろん親に悪気はないのだけど。

「○○ちゃんは、きちんと学校に通ってるのに」と、人と比較されるのもつらかった。学校に行かずに家にいればいるほど、友達との差は開いていく。実際はそうじゃないのだけど、自分では「もう取り返しがつかない」という気持ちになります。

親が人と自分を比較するのもつらかったけど、本当は自分自身が、人と自分を比較して苦しんでいたのかもしれない。

そんな状態が続いて、いつしか親に対して敬語を使うようになりました。生気がなくて、死んだ目をしていたと言われます。

そうなったときに、親は考えを切り替えてくれました。笑ってくれているだけでいい、好きなことをして目を輝かせてくれたら、親としては十分だと言ってくれた。その言葉を聞いて、気持ちがずいぶん楽になったのを覚えています。

不登校になる前は、少林寺拳法からミニバス(ミニバスケットボール)からピアノから、いろんなことをやらせてくれました。それは不登校の間も同じでした。いろいろやらせてくれて、何が向いているか自分探しを手伝ってくれた。

ミニバスは1ヵ月も続かなかったけど、トライ&エラーで「じゃあ、次に行こう」とまた別のことを探してくれた。この子は何かできるはずだと信じて、可能性を追い求めてくれたことには本当に感謝しています。

親が「何でもやらせてみよう」と思ってくれたおかげで、私は今の道につながるきっかけをつかむことができました。「あの先生に学びたい」という人に出会って、その先生がいる高校に入るために中3から学校に通い始めた。

「どうして学校に行かないんだ」「とにかく学校に行ってくれ」と言われ続けていたとしたら、どうなっていたかわかりません。


取材・文/石原壮一郎

サステナブル(続ける)をテーマに、オリィさんの開発した「OriHime」、魚を逃がす漁師、しあわせを運ぶチョコレートなど、ノンフィクションストーリー3本を記した『世界でいちばん優しいロボット』(岩貞るみこ/講談社)
オリィさんの大人気講義「これからの時代に知っておくべき考え方」を書籍化した『ミライの武器 「夢中になれる」を見つける授業』(吉藤オリィ/サンクチュアリ出版)

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【関連サイト】
オリィ研究所公式HP
分身ロボットカフェ「DAWN」Ver.β公式HP
・X(旧Twitter)オリィ研究所@人類の孤独を解消する 
@OryLaboratory
・X(旧Twitter) 分身ロボットカフェ『DAWNver.β』 
@DAWNcafe2021
・X(旧Twitter) 吉藤オリィ@分身ロボット 
@origamicat

20 件
よしふじ おりぃ

吉藤 オリィ

Ory Yoshifuji
ロボットコミュニケーター

1987年奈良県生まれ。株式会社オリィ研究所共同創設者代表取締役 所長。ロボットコミュニケーター。分身ロボット開発者。 小学5年から中学2年まで不登校。高校時代に電動車椅子の新機構の発明に関わり、2004年の高校生科学技術チャレンジ(JSEC)で文部科学大臣賞を受賞。翌2005年にアメリカで開催されたインテル国際学生科学技術フェア(ISEF)に日本代表として出場し、グランドアワード3位受賞。2022年、コンピューター界のアカデミー賞と言われる世界的な賞「アルスエレクトロニカ ゴールデンニカ」ほか、受賞多数。 「孤独の解消」を人生のテーマと定め、高専で人工知能を学んだ後、早稲田大学にて自身の研究室を立ち上げる。その後、対孤独用分身コミュニケーションロボット「OriHime」を開発。株式会社オリィ研究所を設立し、「OriHime」のほか、ALS等の難病患者向け意思伝達装置「OriHime eye」、車椅子アプリ「WheeLog!」、分身ロボットカフェなどを開発提供。 2016年には「Forbes誌が選ぶアジアの30歳未満の30人」に選出。「第24回文化庁メディア芸術祭」エンターテインメント部門ソーシャルインパクト賞(2021)、「グッドデザイン賞2021」グッドデザイン大賞(2021)、「アルス・エレクトロニカフェスティバル」ゴールデン・ニカ賞(2022)などを受賞。趣味は折り紙。 著作に『「孤独」は消せる。』(サンマーク出版)、『サイボーグ時代』(きずな出版)、『ミライの武器 「夢中になれる」を見つける授業』(サンクチュアリ出版)など。 オリィ研究所公式HP  X(旧Twitter):吉藤オリィ@分身ロボット @origamicat

1987年奈良県生まれ。株式会社オリィ研究所共同創設者代表取締役 所長。ロボットコミュニケーター。分身ロボット開発者。 小学5年から中学2年まで不登校。高校時代に電動車椅子の新機構の発明に関わり、2004年の高校生科学技術チャレンジ(JSEC)で文部科学大臣賞を受賞。翌2005年にアメリカで開催されたインテル国際学生科学技術フェア(ISEF)に日本代表として出場し、グランドアワード3位受賞。2022年、コンピューター界のアカデミー賞と言われる世界的な賞「アルスエレクトロニカ ゴールデンニカ」ほか、受賞多数。 「孤独の解消」を人生のテーマと定め、高専で人工知能を学んだ後、早稲田大学にて自身の研究室を立ち上げる。その後、対孤独用分身コミュニケーションロボット「OriHime」を開発。株式会社オリィ研究所を設立し、「OriHime」のほか、ALS等の難病患者向け意思伝達装置「OriHime eye」、車椅子アプリ「WheeLog!」、分身ロボットカフェなどを開発提供。 2016年には「Forbes誌が選ぶアジアの30歳未満の30人」に選出。「第24回文化庁メディア芸術祭」エンターテインメント部門ソーシャルインパクト賞(2021)、「グッドデザイン賞2021」グッドデザイン大賞(2021)、「アルス・エレクトロニカフェスティバル」ゴールデン・ニカ賞(2022)などを受賞。趣味は折り紙。 著作に『「孤独」は消せる。』(サンマーク出版)、『サイボーグ時代』(きずな出版)、『ミライの武器 「夢中になれる」を見つける授業』(サンクチュアリ出版)など。 オリィ研究所公式HP  X(旧Twitter):吉藤オリィ@分身ロボット @origamicat

いしはら そういちろう

石原 壮一郎

コラムニスト

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか