『ムーミン谷の冬』の“おさびし山のかき氷”を作ろう

読んで楽しい、作っておいしいエッセー&レシピ 児童文学キッチン#09

ちょっぴり心配顔のムーミンに胸きゅんです。(撮影/青砥茂樹)

児童文学作家の小林深雪さんと、お菓子研究家の福田里香さんのかわいい本『児童文学キッチン お菓子と味わう、おいしいブックガイド』から、読んで楽しい、作っておいしい、エッセー&レシピを厳選してお届けします。

第9回目は、大人気の「ムーミン」シリーズから。福田里香さんから、心配顔のムーミンが愛おしいかき氷のレシピが届きました。

(「児童文学キッチン」のほかの記事を読む)

ムーミンママのジャム倉庫にあこがれています(福田里香)

<「おさびし山」は、すっかり雪におおわれて、まっ白なすがたをしてそびえていました。
月のない晩でしたけれど、しめった空気の中で、星はいつもよりつよく、きらきらとかがやいていました。> 
『ムーミン谷の冬』より

ムーミンママのジャム倉庫に昔からあこがれています。なぜなら、氷姫(こおりひめ)のせいで食べ物がなくなったひとたちの命を、ママのジャム倉庫が救ったからです。

みんなに配ったのは、もちろん冬眠しそびれたムーミントロール。

一番人気はいちごジャムで、不人気なのは、どろどろしたこけもものジャムでした。

北欧では、いろんなベリーをまぜたジャムがポピュラー。きっとママも作ったはず。

ジャムをゆるめに作ると、シロップに使えるので、峰(みね)の連なる険しいおさびし山が、大ふぶきでまっ白になったところを、かき氷にしました。

ところで、ムーミンの魅力って、心配顔や不審顔、困り顔。笑顔じゃないのがいいんです。(福田里香)

自分が受け入れたとき世界も自分を受け入れてくれる(小林深雪)

<雪って、つめたいと思うでしょ。だけど、雪小屋をこしらえて住むと、ずいぶんあったかいのよ。雪って、白いと思うでしょ。ところが、ときにはピンク色に見えるし、また青い色になることもあるわ。どんなものよりやわらかいかと思うと、石よりもかたくなるしさ。なにもかも、たしかじゃないのね。」>
『ムーミン谷の冬』より

「世界じゅうが、どこかにいっちゃったよ。」

ふと、ムーミントロールが目を覚ましたら、自分がよく知っているはずだった世界が、ぜんぜん知らない世界に変わっています。

お日さまがいなくなって、ずっと深い夜。空はほとんどまっ黒で、海は氷の下。雪とオーロラと森と湖の幻想的な世界。
 
ムーミン谷は真冬で、みんなは冬眠中。パパもママも友だちもだれも起きてきません。外に出ると雪に足をとられて、いくども転びそうになります。せまってきた夜の闇とあたりのさびしさが、たまらなく怖くなってきます。

北欧では、夏はずっと明るい白夜が続き、冬はずっと夜のように暗いのです。フィンランドという北の国に育った作者のトーベ・ヤンソンならではの作品です。

春から冬までの、にぎやかな事件がいっぱいのムーミン谷ではないのです。静かなムーミン谷には、冬の生き物たちがいます。
 
冬の世界の住人たちは、みんな孤独なさびしがりやです。水あび小屋で出会ったおしゃまさんは言います。

「この世界には、夏や秋や春にはくらす場所をもたないものが、いろいろといるのよ。みんな、とっても内気で、すこしかわりものなの。ある種の夜のけものとか、ほかの人たちとはうまくつきあっていけない人とか、だれもそんなものがいるなんて、思いもしないいきものとかね。」

ムーミンはおっかなびっくり、いつもとはちがう冬の世界を体験し、冬の生き物たちと出会います。すると、知らなかった世界や生き物が、知っている世界や友だちに変わっていく。そうしたら、もう怖くないし、孤独でもなくなる。

ムーミンが泣くのをやめて、ふと空を見上げると、雪が綿毛(わたげ)よりもやわらかく、ふわりふわりと落ちてくる。雪が鼻先でやさしく溶ける。(これが冬か。そんなら、冬だってすきになれるぞ。)と思うシーンは感動的です。

そうやって自分が「世界」を「人」を迎え入れたとき、世界も人も「わたし」を受け入れてくれる。この本はそう教えてくれます。(小林深雪)

大ふぶきのあとの、おさびし山のかき氷とムーミンママのベリージャム、 心配顔のムーミンクッキー添え(福田里香)

<ムーミンママの北欧ベリージャムを作りましょう>

材料:ムーミンママの北欧ベリージャム(作りやすい分量 約380ml分)

冷凍ミックスベリー 300g(1パック分)
レモン果汁 1/4個分
グラニュー糖 250g
バニラビーンズ 3㎝

*冷凍のミックスベリーの代わりに、いちご300gで作ることもできます。その際、いちごはへたを取り、4つに切り、砂糖と混ぜて、1時間置いてください。

作り方
1  
 ボウルに冷凍ミックスベリーとグラニュー糖、レモン果汁を入れ、木べらで軽く混ぜ合わせ、しっとりと水分が出るまで1時間置く。

 1とナイフでさやを2つに切ったバニラビーンズをさやごと、ホウロウ鍋に入れ、強火にかける。軽く木べらで混ぜながら、沸騰してあくが浮いてきたら、スプーンでていねいに取り除く。

  中火にして、焦げつかないように、木べらで鍋底のほうからゆっくり大きく混ぜながら、とろりとするまで5〜8分ほど煮詰める(写真参照)。

(撮影/青砥茂樹)

  シロップとして使うので、少しゆるいかな、というところで、鍋を火からおろし、一度冷ましてみる。ゆるすぎる場合は、再度、煮詰める。

 4をスプーンですくって、用意した清潔なびんに詰める。粗熱が取れたら、冷蔵庫に入れて保存する。日持ちは2週間くらい。密封容器に入れて、冷凍庫で保存してもいい。

<心配顔のムーミンクッキーを作りましょう>

材料:心配顔のムーミンクッキー(身長8㎝のムーミントロール約20匹分)


粉糖 50g
薄力粉 140g
アーモンドプードル 50g 
ベーキングパウダー 小さじ1/4

無塩バター 60g 
卵 1/2個分
ストロー 1本

アイシング1/2
 粉糖 大さじ8
 牛乳 少々

下準備:型紙をダウンロードしてプリントし、ハサミで切りぬく。オーブンを180℃にあたためておく。器に卵を割り、よく溶きほぐし、使用する1/2量を取り分けておく。

ムーミンクッキーの型紙をダウンロードしましょう

児童文学キッチン_ムーミンクッキーの型.jpg (17.4 KB)

作り方

 aを合わせて、ボウルにふるい入れる。

   1㎝角のサイコロ状に切った冷たいバターを1に加え、手でつまむようにして混ぜ、ぱらぱらのそぼろ状にする。

   2に卵1/2個を加え、ゴムべらでさっくり混ぜる。次に手で軽くこねて、ひとつにまとめ、ラップで包み、冷蔵庫で3時間休ませる(時間があればここまで前日に作り、1日ねかせるとよい)。

   クッキングシートの上に3の半量をのせる。打ち粉(分量外)をしためん棒で、厚さ4㎜にのばす。

   4の生地に型紙をあて、ナイフで切り取る。

   5をクッキングシートごと持ち上げて、天板にのせる。竹串などで余分な生地を取り除く(写真参照)。

(撮影/青砥茂樹)

 6を180℃にあたためておいたオーブンで15〜25分焼く。

  取り出したら金網にのせて冷ます。

残りの半量も同様に焼く。余分な生地はまとめてのばし、やはり同様に焼く。最後に残った生地は手でひも状にのばし、ニョロニョロの姿に成形して焼くとよい。

10  アイシングを作る。器に粉糖を茶こしでふるい入れる。1滴ずつ牛乳を加え、とろりとするまでスプーンで練り混ぜる。

11 10をジッパー付きビニール袋に入れる。袋の底の角をハサミで2㎜切り、絞り出し袋にする(直径2㎜の口金をつけた絞り出し袋でもいい)。クッキーにムーミンの顔、眉、目、手足を描き、乾かす。

<おさびし山のかき氷を作りましょう>

材料 (おさびし山のかき氷 約5人分)

氷 適量
ムーミンママの北欧ベリージャム 適量
練乳 適量
心配顔のムーミンクッキー 5枚

作り方

  氷をかき氷器でかく。よく冷やしておいた大きな器に、かいた氷を1/3まで入れ、上からムーミンママの北欧ベリージャムと練乳を適量まわしかける。

 1の上に山盛りに氷をかき、スプーンで押さえて、峰が連なる険しいおさびし山のように形を整える。心配顔のムーミンのクッキーをそえ、みんなで取り分けていただきましょう。

『ムーミン谷の冬』についてあれこれ(小林深雪)

トーベ・ヤンソン(1914~2001)は、フィンランドの作家で画家。ムーミンのイラストは、すべて作者の手によるものです。彫刻家と画家の両親のもとで育ち、パリなどの美術学校で学び、はじめは、デザインの仕事をしていたそうです。

ムーミンのお話の1冊目は『小さなトロールと大きな洪水』。『ムーミン谷の彗星』『たのしいムーミン一家』と続いていく「ムーミン」シリーズは、不思議でユーモラスで、そして、ちょっと怖いところが魅力です。

『ムーミン全集[新版]5 ムーミン谷の冬』
作:トーベ・ヤンソン 訳:山室 静 講談社

長年愛されているムーミン童話集の改訂版。
(c)Moomin Characters TM
『ムーミン谷の冬 (新装版)』
作・絵:トーベ・ヤンソン 訳:山室 静 講談社青い鳥文庫

すべての漢字にふりがなつき。青い鳥文庫でもムーミン童話全9巻を読むことができます。
(c)Moomin Characters TM

​​

お話から生まれた23のかわいいお菓子がレシピ付きで作れる!

『児童文学キッチン  お菓子と味わう、おいしいブックガイド』
文:小林深雪  料理:福田里香  講談社

読んで楽しい、作っておいしい!小林深雪先生の大好きな児童文学作品にインスパイアされたかわいいお菓子を福田里香さんのレシピつきで紹介!
*現在入手困難です。図書館などで探してみてくださいね。

(編集協力/俵ゆり)

こばやし みゆき

小林 深雪

Miyuki Kobayashi
作家

埼玉県生まれ。東京在住。武蔵野美術大学卒。ライター、編集者を経て、1990年作家デビュー。 「泣いちゃいそうだよ」「これが恋かな?」「作家になりたい!」シリーズ(すべて講談社青い鳥文庫)や、 エッセイ集『児童文学キッチン』、『おはなしSDGs /つくる責任つかう責任 未来を変えるレストラン』『スポーツのおはなし/体操 わたしの魔法の羽』、『どうぶつのかぞく/ホッキョクグマ ちびしろくまのねがいごと』『おしごとのおはなし/まんが家 ゆめはまんが家』(以上、すべて講談社)など著書は200冊を超える。 『デリシャス!』『恋人をつくる100の方法』など、漫画原作も多数手がけ、『キッチンのお姫さま』で講談社漫画賞受賞。

埼玉県生まれ。東京在住。武蔵野美術大学卒。ライター、編集者を経て、1990年作家デビュー。 「泣いちゃいそうだよ」「これが恋かな?」「作家になりたい!」シリーズ(すべて講談社青い鳥文庫)や、 エッセイ集『児童文学キッチン』、『おはなしSDGs /つくる責任つかう責任 未来を変えるレストラン』『スポーツのおはなし/体操 わたしの魔法の羽』、『どうぶつのかぞく/ホッキョクグマ ちびしろくまのねがいごと』『おしごとのおはなし/まんが家 ゆめはまんが家』(以上、すべて講談社)など著書は200冊を超える。 『デリシャス!』『恋人をつくる100の方法』など、漫画原作も多数手がけ、『キッチンのお姫さま』で講談社漫画賞受賞。

ふくだ りか

福田 里香

Rika Fukuda
菓子研究家

福岡県生まれ。武蔵野美術大学卒。大学の同級生だった小林深雪さんの書籍に携わったことから、この道に入る。これまでに小林深雪さんの4冊のレシピブック『キッチンへおいでよ』『ランチはいかが?(編集)』、『デリシャス! スイート・クッキング(スタイリング)』、『児童文学キッチン(共著)』(以上、講談社)に携わる。 単著に『民芸お菓子』(Discover Japan)『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)、『新しいサラダ』(KADOKAWA)、『フードを包む』(柴田書店)、『まんがキッチン』(文春文庫)、『まんがキッチン おかわり』(太田出版)、共著に『R先生のおやつ』(文藝春秋)がある。

福岡県生まれ。武蔵野美術大学卒。大学の同級生だった小林深雪さんの書籍に携わったことから、この道に入る。これまでに小林深雪さんの4冊のレシピブック『キッチンへおいでよ』『ランチはいかが?(編集)』、『デリシャス! スイート・クッキング(スタイリング)』、『児童文学キッチン(共著)』(以上、講談社)に携わる。 単著に『民芸お菓子』(Discover Japan)『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)、『新しいサラダ』(KADOKAWA)、『フードを包む』(柴田書店)、『まんがキッチン』(文春文庫)、『まんがキッチン おかわり』(太田出版)、共著に『R先生のおやつ』(文藝春秋)がある。