子ども同士でおもちゃの取り合いが起きたらどうすべきか 専門家が答えます

こんなときどうする?子育てQ&A#31「おもちゃの取り合いが起きたとき、どう対応したらいい?」

教育学博士:渡辺 弥生

写真/Adobe Stock
すべての画像を見る(全6枚)
1~3歳での友だちとの関わり合いで多いのが、何かの取り合いが起きたときの対応をどうしたらいいかという悩みでしょう。

発達からいっても、ちょうど「自分のもの」ということがわかってくる時期ですし、友だちの真似をしたい気持ちも出てきて、どうしても取りあいがおこりやすくなります。

でも、友だちと遊ぶ力は成長とともについてきます。
発達心理学の専門家・渡辺弥生教授が子育ての悩みに答えます。

「支援センターなどにいくたびに、おもちゃを取られて大泣きして帰ってきます。1〜3歳の子ども同士の交流って必要なの?」(2歳・女の子)

おもちゃを取られて大泣き。子ども同士の交流って必要なの? 写真/Adobe Stock

友だちと遊ぶ力は成長とともについてきます

1~3歳の子どもに友だち遊びは必要なのかどうかという悩みですね。

発達心理学では、この時期の子どもの遊びを「並行遊び」と呼んでいます。

友だちに興味は示していますが、会話はなく、協力して遊ぶ力はまだない年齢です。

ですから、無理して友だちと遊ばせなくてはいけないということはありません。

ただ、互いに関心があるので、今後、「連合遊び」や「協力遊び」など、友だち遊びの段階に入ることを考えると、交流の機会を一切なくしてしまうのも考えものです。

ときどきでも、友だちのなかで遊ぶ機会を作ってあげると、やがて楽しく遊べるようになっていきます。

「公共の遊び場で、知らない子とおもちゃの取り合いが起きたとき、相手の子の親のこともあるし、仲裁すべきか、経験と割り切って見守るのがいいのか悩みます」(1歳・男の子)

知らない子とおもちゃの取り合いが起きたとき、仲裁すべき? 写真/Adobe Stock

楽しく遊ぶためにもフォローが必要な時期

1~3歳は、問題を解決する力がないので、仲裁に入って遊び方を教えてあげたほうがいいですね。

親同士の関係を気にするより、子ども同士が楽しく遊び続けるための方法を教えたいもの。

たとえば、「今、これ使っているからあとでね」とか、「こっちのおもちゃもおもしろいよ」などと、わが子も相手の子も辛くならないようにフォローしてあげましょう。

親同士の会話はそのあと。

「すみませんね~。この年齢の子は難しいですね。仲よく遊べる方法を上手に教えられたらいいんですけどね」というような話ができるといいですね。

「お友だちに『貸して』といって断られると、その子を避けようとします。逆に『貸して』といわれると、悲しそうな顔で貸しています。親はどうフォローしたらいい?」(3歳・男の子)

親はどうフォローしたらいい? 写真/Adobe Stock

貸し借りができるようになることをあせらないで

楽しく遊ぶためにルールが必要だとわかるようになるのは3歳後半から4歳ごろになってからです。

1~3歳では発達からいっても貸し借りは難しい時期と知っておきましょう。

貸したくないのに無理に貸せば、子どもが悲しい思いをすることになります。

今は、「貸してあげると喜ぶね」と伝えるくらいにして、相手の子には、ママが「ごめんね。また今度ね」と断っても大丈夫。

折を見て「順番こ」のルールを教えてあげてもいいですね。

もし、人のものを取りあげたときは、叱るのではなく、「今、お友だちが遊んでいるから取っちゃダメよ」と、理由を教えてあげましょう。

取り合いがおこるのは当然な時期ですから、遊び方を教えるチャンスだと思って対応していきましょう。

文/宇野智子 写真/Adobe Stock
※この記事は幼児誌「げんき」に掲載された記事を再構成したものです。
この記事の画像をもっと見る(6枚)
わたなべ やよい

渡辺 弥生

教育学博士(発達心理学、発達臨床心理学)

大阪府生まれ。1983年筑波大学卒業。同大学大学院博士課程心理学研究科で学んだ後、筑波大学、静岡大学、途中ハーバード大学客員研究員を経て、法政大学文学部心理学科教授。同大学大学院ライフスキル教育研究所所長兼務。教育学博士。専門は、発達心理学、発達臨床心理学。主な著書に『まんがでわかる発達心理学』、『11歳の身の上相談』(講談社)、『親子のためのソーシャルスキル』(サイエンス社)など。

大阪府生まれ。1983年筑波大学卒業。同大学大学院博士課程心理学研究科で学んだ後、筑波大学、静岡大学、途中ハーバード大学客員研究員を経て、法政大学文学部心理学科教授。同大学大学院ライフスキル教育研究所所長兼務。教育学博士。専門は、発達心理学、発達臨床心理学。主な著書に『まんがでわかる発達心理学』、『11歳の身の上相談』(講談社)、『親子のためのソーシャルスキル』(サイエンス社)など。