思春期の子どもの「精巣・金玉・睾丸」はセルフチェックが重要! 泌尿器科医がわかりやすく解説
泌尿器科医・岡田百合香先生に聞く、「精巣(金玉)」トラブル #3 ~思春期編~
2024.11.12
泌尿器科医:岡田 百合香
陰嚢のコブは5人に1人の割合で出現
精巣の上の方にコブができる「精索静脈瘤」という病気があります。静脈は、身体から心臓に戻っていく血管。 つまり精巣から心臓に戻っていく血管にできるコブのことを指します。
「精巣の静脈の合流先は右と左で異なっていて、左側のほうが流れが悪くなりやすく、精索静脈瘤のほとんどが左側にできると言われています」(岡田先生)
「健康な人の20%の割合で認められる症状ですが、程度が軽い人だと気が付かなかったり、何の症状もない場合も。
痛み・違和感が強い場合や不妊で悩んでいる場合には手術による治療を検討します。一方で、幼児期や思春期、今すぐに子どもが欲しいという段階でない状態で治療をするべきかというと、明確な基準がなく議論が分かれるところです」(岡田先生)
治療の時期や有無は、個別の判断になることが多いと岡田先生。もし、子どもの頃にコブを発見したら、一度専門医にかかって診断してもらったあと、子どもにその事実を伝えておくことが大事です。
「精索静脈瘤に限らず、停留精巣や鼠径ヘルニアといった本人の記憶が残らない年齢の治療歴も子どもが成長していく上で必要な健康情報です。
将来泌尿器科系のトラブルや悩みを持った時に、本人が幼少期の既往歴、治療歴を把握していることは検査や治療を考える上でも非常に重要です。
その都度子どもに分かる言葉で情報を伝え、『大人になってから気になることがあったら泌尿器科で相談してね」と伝えておいてください」(岡田先生)
大人も子どもも定期的にセルフチェックを
性器周辺の病気については、保護者が正しい知識を持つことと同時に、「幼少期から、子ども自身にもきちんと伝えておくべき」と岡田先生は言います。
「精巣は、『痛みがあったり、左右で大きさが違ったらすぐに病院に行かなきゃダメだよ』ということと、『日頃から触ってセルフチェックをしてほしい場所だよ」ということを伝えてください。
命に関わる病気である精巣腫瘍(癌)も若い世代に多くみられ、左右差や腫れで気が付くケースが多いです。セルフチェックは、できることなら学校の保健体育の授業などで教えてほしいところ。女性が乳がんのセルフチェックの大切さを啓発されているように、男性にも精巣のセルフチェック習慣の大切さがもっと伝わってほしい、と感じています」(岡田先生)
子どものころは保護者がチェックし、ある程度の年齢からは自分でチェックできるようにしておきたいところ。
「保護者が直接確認できるのは幼少期だけ。子どもが自分の身体のこととして知識を持って、触って確認して、変化に気づいたら病院へ行くという行動が選択できるよう、小さなころからの子どもへの知識や情報、スキルの提供が重要になってくると思います」(岡田先生)
───◆─────◆───
筆者(3兄弟の母)の長男は、現在小学校6年生。修学旅行のお風呂では、「誰々にちんちんの毛が生えてきた!」なんて話題で大盛り上がりの年齢です。岡田先生の話を伺って、親子で照れることなくおちんちんの話をしてみよう、とチャレンジ。
「毛が生えるっていうのは、大切なところだからだよね。毛で守ってるんだよ」「そういえばおちんちんで気になるところはある?」「タマタマ(金玉)が急に痛くなる病気があるんだよ」などとある日話してみたところ、最初はニヤニヤと面白がりながら聞いていた我が子も、病気の話には真剣な顔をしていました。
女性である母親には、いまいちピンとこない男性器まわりのトラブルですが、男性器も子どもの身体の一部。身体と同じく、おちんちんや金玉も日頃から労って、痛みなどのトラブルがあれば病院にかかって当たり前のこと。「トラブルがあったら受診する」ことの大切さを、子どもたちには、今後も伝え続けていこうと思います(夫にも)!
取材・文/遠藤るりこ
岡田百合香先生による「精巣トラブル」は全3回。
1回目を読む。
2回目を読む。
遠藤 るりこ
ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe
ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe
岡田 百合香
泌尿器科医。1990年岐阜県生まれ。2014年岐阜大学医学部卒業。愛知県内の総合病院泌尿器科に勤務する傍ら、助産院や子育て支援センターで乳幼児の保護者を対象にした「おちんちん講座」や「トイレトレーニング講座」、思春期の学生向けの性に関する授業などを行っている。男児(2018年生まれ)と女児(2021年生まれ)の母。 『泌尿器科医ママが伝えたい おちんちんの教科書』(誠文堂新光社刊)。
泌尿器科医。1990年岐阜県生まれ。2014年岐阜大学医学部卒業。愛知県内の総合病院泌尿器科に勤務する傍ら、助産院や子育て支援センターで乳幼児の保護者を対象にした「おちんちん講座」や「トイレトレーニング講座」、思春期の学生向けの性に関する授業などを行っている。男児(2018年生まれ)と女児(2021年生まれ)の母。 『泌尿器科医ママが伝えたい おちんちんの教科書』(誠文堂新光社刊)。