子どもが「好きな本」を何度でも読むことは「脳」を発達させる行動だった!?

「ならいごと」を始める前に親ができる大切なこと 〔細田千尋先生インタビュー 第4回〕

医学博士・認知科学者・脳科学者:細田 千尋

脳科学者の細田千尋先生に解説してもらう、脳科学的に考える幼児期のならいごと連載。第3回では、子ども自身が苦手だと思っているならいごとは伸びない、継続させるには、普段から子どもの様子をよく観察して声のかけ方が大切というお話しでした。今回は、幼児期の子どもに対して、親からどのような働きかけができるのか。ならいごとや教育の在り方について考えてみましょう。

医学博士・認知科学者・脳科学者の細田千尋先生。  撮影:森﨑一寿美

ノーベル賞学者が投じた「早期教育論」の問題点

幼児期のならいごとや早期教育と子どもの発達について話題になった論文があります。後にノーベル経済学賞を受賞したアメリカのジェームス・ヘックマンという経済学者が『サイエンス』誌に発表した論文です。ヘックマンは、「幼児期の教育は、将来の賃金や社会的なサクセスに影響する」と論じたのです。ノーベル賞を取った人がそんなことを言うものだから、世の中は騒然としました。

しかし、2020年にヘックマンの説の再現性を問題視する有力な論文がデイビッド・レアとトニー・バートンという研究者によって発表されました。つまり、5歳までの未就学児に投資することで将来のサクセス率を上げる、というのは必ずしも再現できないということなのです。

親がどんな姿勢で生活しているかを子どもへ見せることが重要

私たちの研究では、“親の忍耐強さ”や“がんばれる人”か、といった性質が、子どもに影響することが分かっています。

例えば、親自身が1日に読む本や、読む新聞の量が重要だとされていて、子どもに対してどう働きかけるか、という点だけではなく、親自身の学習や生活への向き合い方が子どもに影響するのです。

お金をかけて教室へ通わせればそれでいい、ということではなく、どんな家庭環境の中で、親が“どういう考えを持って、どんな姿で生活しているか”が大切なのです。認知能力も非認知能力も、遺伝の影響も受けていると言われています。ただし、環境影響と遺伝的要素両方が大事であることが、双子の研究などからも分かっています。 

‟親がどんな姿を子どもに見せているか”、これは親である私自身への戒めでもありますが、常に忘れてはいけない点なんじゃないかな、と思います。

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