子どもが「好きな本」を何度でも読むことは「脳」を発達させる行動だった!?

「ならいごと」を始める前に親ができる大切なこと 〔細田千尋先生インタビュー 第4回〕

医学博士・認知科学者・脳科学者:細田 千尋

何度でも繰り返し丁寧に本を読む習慣をつけさせる

先ほど親自身が1日に読む本や新聞の量が大切という話をしましたが、親だけでなく、幼児期の子どもが本に触れることはとても重要だと思います。読み聞かせにも意味がありますし、本人が読むことにも意味があります。

特に幼児期の子どもに関しては、“文字を見分ける”ことに意味があると言えます。例えば「ち」と「さ」、「6」と「9」がそう。
似ている文字の判別ができるようになることは、認知能力の発達を促すと言われていて、これは日常的に本をきちんと読むことでも養われ、決して速読やフラッシュカードなどで養われるものではないんです。丁寧に本を読むことが脳の発達という点では重要になってくると思います。

視覚からの刺激で脳が発達するのですが、単に映像を観ているだけとは違います。細かな部分を判別する能力を高めるためには、映像ではなく丁寧にじっくり文字を追っていくことが大切です。同時に、記憶の定着を高める点からも重要と言えます。

“何歳までに何千冊の本を読ませなさい”という話を耳にしたことがあるお父さん、お母さんもいらっしゃると思います。本を読む量は個人差があるので、多くの子たちができる方法としては、“同じ本を何回も読む”のがいいと思います。

たくさんの種類を読むよりも、何の本でもいいので好きなものを何回も繰り返し読む。そうすることで、その本の内容の理解や文字の判別、脳の発達に非常にプラスになります。さらに、繰り返し学習する習慣をつけてあげる、という意味でも重要になってきますね。

好きな本を繰り返し読むことも、脳の発達にはプラスに。  写真:Paylessimages/イメージマート

子どもが求めるものに親が応じること

そのほか脳科学的に乳幼児期の親の関り方として注意すべきことは、子どもの成長をきちんと観察して、愛着形成をする、ということでしょうか。

愛着は子どもが求めるものに対して親が応じてあげられることで形成されます。愛着形成がなぜ重要かと言うと、小学生や中学生になったときに”チャレンジ精神”の持ち方が変わってくるからです。“何があっても帰ってくる場所がある”という帰属意識と安心感があれば、子どもは何にでもチャレンジできます。それは、3歳から5歳くらいの間に育てておくことが重要だとされています。


親が子どもを観察しているように、子どもも親をよく見て育つということを意識することが大事と細田先生。そのためにはいつでも安心できる場所を作ってあげることが、脳科学的にも子どもの成長につながっていきます。

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第5回は、子どものやり抜く力を育てるために、幼児期からできること、そして3人の母親でもある細田先生ご自身の現在の子育てについてもお聞きします。

取材・文 山田祥子

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ほそだ ちひろ

細田 千尋

医学博士・認知科学者・脳科学者

東北大学加齢医学研究所及び、東北大学大学院情報科学研究科准教授。 内閣府 moonshot研究目標9プロジェクトマネージャー(わたしたちの子育て―child care commons―を実現するための情報基盤技術構築)。 内閣府・文部科学省が決定した“破壊的イノベーション”創出につながる若手研究者育成支援事業(JST創発的研究支援)によって、日本全国の大学や研究機関などから選ばれた252名の研究代表者のうちの1人。 脳科学から子どもの非認知能力を育てる研究の親子モニター募集 https://gritbrain.wixsite.com/experiment2022-04 東北大学加齢医学研究所 https://www.idac.tohoku.ac.jp/site_ja/ 細田千尋研究室㏋​ https://neurocog.is.tohoku.ac.jp/

東北大学加齢医学研究所及び、東北大学大学院情報科学研究科准教授。 内閣府 moonshot研究目標9プロジェクトマネージャー(わたしたちの子育て―child care commons―を実現するための情報基盤技術構築)。 内閣府・文部科学省が決定した“破壊的イノベーション”創出につながる若手研究者育成支援事業(JST創発的研究支援)によって、日本全国の大学や研究機関などから選ばれた252名の研究代表者のうちの1人。 脳科学から子どもの非認知能力を育てる研究の親子モニター募集 https://gritbrain.wixsite.com/experiment2022-04 東北大学加齢医学研究所 https://www.idac.tohoku.ac.jp/site_ja/ 細田千尋研究室㏋​ https://neurocog.is.tohoku.ac.jp/