「銭天堂」廣嶋玲子の新作　名作を読まずに大人になる子どもたちに挑戦？

「こどもの本総選挙」で第１位を獲得した廣嶋玲子氏。“子どもたちが発見した最高におもしろい作家”の人気は、今や大人たちにも拡がっています。

待望の新作、ストーリーマスターズ①『ふしぎな図書館と魔王グライモン』は、なんと、世界の名作を舞台にした話題作です。ストーリーマスターズ第１巻である本作では、おもしろい本をひとりじめするために、世界の名作をつまらなくしてしまう魔王グライモンによって、グリム童話がトンデモストーリーに改変されてしまいます。

世界で一番多くの言語に翻訳されていると言われる物語『グリム童話』。

特に人気の「白雪姫」（グリム童話）では、白雪姫は女王の毒リンゴを食べて死んでしまいます。その死をいたんだ７人のこびとは、白雪姫をガラスの棺に入れて、森の奥深くに安置し、日々、白雪姫の死を悲しみます。

そこに王子が通りかかり、白雪姫の姿を見て、恋に落ちてしまうのです。７人のこびとに、「強い愛」を打ち明け、白雪姫を棺ごともらえないか？　と頼みます。

え？　死んだ人に片思いしたの？ ……と言う突っ込みが聞こえそうです。

それはそうと毒リンゴを食べて死んだ白雪姫は、どうやって生き返り、王子と結婚することになったのでしょう？

白雪姫が生き返るといえば、もちろん答えは〇〇しかありませんよね！

まるで生きているように見える白雪姫の亡骸に一目ぼれした王子さまは、ガラスの棺ごと、白雪姫の亡骸を連れ帰り、自分の行くところどこにもそのガラスの棺をもってついて回るように、家来に命令します。

第１版では、毎日重い棺を持ち歩くのにうんざりした家来が、なんと白雪姫を棺から出して、「なんでこんなにつらい目に」と腹立ちまぎれに手で白雪姫をたたきました！　

その拍子に毒リンゴが飛び出し、白雪姫は生き返りました。

たしかに棺を持ち歩かされるのが仕事……というのはとってもうんざりしそうですよね。家来が腹が立つのもわかります。

というわけでロマンチックさのかけらもありませんが、第１版では、答えはCでした。

ある意味、王子の度を越した強い愛が、家来をうんざりさせたので、王子の強い愛でよみがえったといえるかも？

町や村で大人が『白雪姫』を語るとき、このパートはコメディーパートだったのかも。大人も子どもも、このパートで大笑いして、「生き返ってよかったよかった」と胸をなでおろしたかもしれませんね。

「白雪姫」第１版、皆様の記憶とぴったり重なりましたか？

小さなころに読んだ本の原作、実はすごく奥深かったんだ……と思っていただけたらうれしいです。

最近の子どもは名作を読まないまま大人になってしまうことが多いといいます。

でも何十年何百年生きのこった名作には、人間の心を動かすカタルシスが詰まっています。

廣島氏の新作では、このグリム童話のおもしろさ……が、魔王グライモンによって盗まれて、つまらない物語に変えられてしまいます。

何が物語から盗まれたのか？　推理するうちに、名作が読みたくなってくる『ふしぎな図書館と魔王グライモン』を書いた理由を廣嶋さんはこう語ります。

「魔王が物語の大事なパーツを盗んでいったせいで、よく知っているおとぎ話が、急につまらなくなってしまった。

いったい何を盗まれたか？

読者さんたちが想像しながら読んでくれたら、うれしいです。

そして、読み終わった時、自分なりの「もし、このおとぎ話が別の物語だったら？」というのを考えてもらえたら、最高です！」

『ふしぎな図書館と魔王グライモン』といっしょに名作を楽しんでみませんか？

今日誰かに話したくなる名作クイズ！　ちょっと興味を持ったら、本屋さんや図書館にぜひ足を運んで「あなただけの１冊」を探してみてください。

本の魔法で幸せな時間がすごせるはず！