友だちにあいさつしたのに、無視された？【今日の禅語】大愚元勝・福厳寺住職

本記事は現在発売中の書籍『１日３分でしなやかな心が育つ　禅のことば』の一部を抜粋、編集したものです。

仏教には、仏さまの教えを伝えるさまざまな経典（きょうてん）があります。

そうした経典のなかでは「兎角亀毛（とかくきもう）」ということばが、たびたびつかわれます。

たとえば『楞伽経（りょうがきょう）』というお経には
「ことばは妄想（もうそう）であって、兎角亀毛のようなものである」
と書かれています。

みなさんも知っているように、ウサギに角は生えていませんし、カメに毛はありません。

つまり兎角亀毛は「ありもしないこと」という意味です。

私たちはよく、兎角亀毛のような、ありもしないことを考え、かってに不安になることがあります。

たとえば、友だちにあいさつしたのに返事がなかったら、
「無視された？　なにか、きらわれるようなことをした？」
と不安になって、どんどん悪いほうに考えてしまう人もいるでしょう。

でも、友だちの返事がなかったのは、ただあなたの声が聞こえなかっただけかもしれません。

「まだ起きていないこと」にやたらビクビクする必要はありません。

そういう不安や心配が生まれたら、「兎角亀毛」ということばを思い出してみてください。