
【子どもの口のケガ】 治療後のホームケアと回復の目安 予防法を〔小児歯科専門医指導医〕がわかりやすく解説
子どもの口のケガ〔宮新美智世先生〕#3
2025.08.14
日本外傷歯学会副理事長:宮新 美智世

子どもの口トラブル連載3回目。今回は、口のケガの回復期間や、治りをよくする方法、また家庭でのケガの予防方法などを日本外傷歯学会副理事長・宮新美智世先生にお聞きしました。
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目次
合併症を防ぐために定期フォローが重要
──ケガの種類にもよると思いますが、口のケガの回復期間の目安を教えてください。
宮新美智世先生(以下、宮新先生):まず、唇や口の粘膜、舌などの傷は、比較的早く回復します。清潔を保つことができれば、だいたい7~14日でかなり治ります。
ただし、歯とその周り(歯周組織)のケガは少し異なります。自然に治る部分はごくわずかで、特に歯は自然治癒することはありません。治療開始が遅れるほど、治りが良くないのが一般的です。
歯と歯周組織に実際どれくらいの衝撃が加わったのか、実際のダメージがどれほどかを、外見だけで判断するのは、歯科医師であっても無理です。
完全に治るまでの目安は3ヵ月~1年。なかには合併症が出ることがあり、10年以上経ってから出る合併症もあります。
【回復の目安】
●口の粘膜の傷→2~14日
●唇、口の粘膜、舌→清潔を保てば7~14日(美しく治すには要治療)
●歯の揺れ→治療を受けてから2~4週間以上
●歯の歯根破折→治療を受けてから7ヵ月以上
●歯の回りの骨→治療を受けてから1ヵ月半以上 ※骨は成熟も考え合わせると6ヵ月以上
──合併症とはどのようなものですか?
宮新先生:まずは、当初見つけることができなかった微細な損傷(歯の亀裂など)や異物が、次第に拡大したり、感染を起こし、後になって発見されることがあります。
歯には「歯髄(しずい)」と呼ばれる神経や血管が通っている部分があり、ここがダメージを受けることで、神経や血管が破裂され、そこから感染が起きる場合も。
また、歯の根(歯根)が折れている場合や、細菌が感染し、歯周病のような症状をが現れることもあります。
さらに「歯根吸収」という特殊な合併症も。これは歯の根が溶けてしまい、最終的には歯そのものが消失してしまう状態です。
こうした合併症が起きていないかを確認するために、ケガをしてから数日以後、最低でも3ヵ月、できれば1年間は定期的なチェックが必要です。