オランダの性教育は5歳から! 「LGBTQ先進国」の多様性・個人の尊重
海外の子ども・生き方がわかる! 世界の子育て01「オランダ」後編 性教育先進国・オランダの教えはマインドと相手へのリスペクト
2021.07.02
異国の家族のあり方や子育て事情をレポートする、連載「世界の子育て」。さまざまな国の実情と日本の“イマ”を照らし合わせ、小さな気付きをお届けします。
オランダ前編では、オランダにおける結婚への意識、オランダ人の働き方について紹介しました。
➡世界の子育て01『オランダが「世界一子どもが幸せな国」なワケは“多様性&フレキシビリティ”』を読む
後編では、オランダならではの教育や、オランダの冬の風物詩について駐日オランダ王国大使館の全権公使、テオ・ペータスさんにお聞きしています。
相手への思いやりから始め 妊娠・避妊へとステージを上げる性教育
前編でも簡単に触れたように(➡「前編」を読む)、オランダは2001年4月、世界で初めて同性婚を合法化しました。LGBTQや、障害を持つ人たちとともに暮らす、より良い社会づくりのため、多様性への理解に取り組んでいる、世界でも最先端の国といえます。
それを象徴しているのが、義務教育で「性の多様性」を教えていることです。
オランダでは、憲法23条で「教育の自由」が保障されており、「設立・理念・方法」が自由なことから、学校が自ら理念を掲げ、教育方法を独自に選択できます。
そんななか、オランダ政府は1993年、「中核目標」という「生徒が卒業までに身につけるべき内容」を教科ごとに設定。内容は数年ごとに改訂され、2012年には、セクシュアリティに関して「初等教育期間中(5~12歳)に、社会における性的多様性を尊重することを学ぶ」と追記されました。
「多くの学校が、毎年3月に春の性教育ウィークを定めて、性教育を行っています。毎週決まった曜日・時間にある授業というよりは、特別授業のようなプログラムで、年齢に合わせてステージを上げていく授業内容です。
オランダの子どもたちは、『性』そして『性の多様性』を、普通のことと捉えて成長する機会を持っているといえます」(ペータス全権公使)。
独自のカリキュラムを組む学校が多いため、一例として、とある学校の授業内容を紹介します。
早いと4歳前後から性教育をスタートする学校もありますが、まずは前提となる「愛情の大切さ」「自分の意思の伝え方」「他人の気持ちの尊重」といった、「他者との関わり」から始める場合が多いといいます。肉体的接触についても、「自分の意思を伝えて良い」「自分の意思を通す権利がある」と学ぶそうです。
その後、10歳前後から「生殖や妊娠出産の仕組み」、12~14歳頃に「避妊に関してや性感染症のリスク」等、多岐にわたって学びます。
ネット上には山のように情報があふれ、子どもたちが簡単にそれを手に入れられる時代です。子どもたちが、誤った知識、年齢にそぐわない情報をインプットするくらいなら、学校教育で年齢に沿った正しい知識、情報を教えようという姿勢がうかがえます。
また、セックス=早熟=ダメと押さえつけるのではなく、「こうすれば妊娠しない(病気にならない)」「こうしたら相手も自分も幸せ」というアプローチにも、多様性を認め、個人を尊重するオランダのお国柄を感じます。
「オランダの性教育は70年代に入ってからですが、ヨーロッパではすでにスウェーデンで始まっていました。
当初は、『妊娠しないように』『(性病等の)病気にならないように』ということに注力していましたが、『相手には尊敬や尊重が不可欠だ』という内面的な部分をはじめ、時代の変化とともに教える内容が徐々に広くなったようです。ピンポイントに、セックス、妊娠、病気だけを教えるのではなく、今は学校ごとに、ホリスティック(包括的)な性教育になっています」(ペータス全権公使)。
オランダは、日常的にキスやハグ等のスキンシップをはかる国ですが、それでは家庭でも性教育に積極的なのかといえば、それは違うようです。
「日本もそうだと思いますが、親や家庭によりますよね。オランダには宗教的な多様性もあるので、性に対して保守的な人、自由な考えを持つ人、さまざまです。
家庭でも性教育をしたい親には、どう教えればいいか、どう話を切り出すべきかをまとめた手引きのようなものを国が支援するファンデーション(組織・財団等)が製作し 、ネットで公開して、国民をサポートしています」(ペータス全権公使)。