子どもが走り出すほど面白い「分解実験」とは

自然循環への理解を深めるために、ムッレ教室では実際に、こんな「実験」を取り入れていると言います。

「森のなかで、木の板の上にいくつかの『もの』を張りつけます。プラスチック袋、あき缶、紙。そして子どもたちが食べたお弁当の残りです。この時(写真)はリンゴの芯でした。

この板を森に置いていき、1週間後に来たときにどのように変化しているかを観察します」(高見さん)

自然のなかで分解されるものを実験。上からプラスチック袋、リンゴの芯、あき缶、紙を置きました。
写真提供:高見幸子

「子どもたちは興味深々。森に来ると真っ先にこの板の場所に走っていくほどです。毎週少しずつ形を変え、写真は2ヵ月ほど経ったときの様子です。

リンゴの芯は跡形もなく消えています。一方、プラスチックやあき缶、紙はそのまま残っています。

この実験で、子どもたちは、自然のなかで分解されるもの、されないものについて学びます。

子どもたちには普段から、『プラスチックや紙、缶などは、必ず持ち帰らなくてはいけない』と話していますが、それがなぜなのか、本当の意味で『理解する』ことができるのです。

さらにこの実験は、『リンゴの芯(自然のもの)は分解されて土に還る』ということだけでなく、『土の養分となり植物を育てる→その植物を動物が食べる』という食物連鎖への理解に発展していきます。

ひとつの観察や実験が『もっと知りたい』、『調べてみたい』という興味につながるのです」(高見さん)

「きっかけ」さえあれば、子どもは自ら成長していく

秋にはなぜ葉が紅葉するのか。実物を並べて、葉っぱの一生を考えます。
写真提供:高見幸子

「本来、子どもは自然が大好き。自然のなかで起こることにとっても敏感です。

ムッレ教室では、リーダー(訓練を受けた大人)の役割を重視していますが、それはあくまで子どもたちが持っている『知りたい』『やってみたい』という好奇心を引き出すサポーターとしての位置づけです。

先ほどお話しした『分解の実験』のように、リーダーは自然の循環の一部を取り上げますが、子どもは最初に『面白い』と好奇心を持ってしまえば、あとは自分でどんどん調べて、探究していくことができるのです」(高見さん)

第3回は、日本にも拡大している森のムッレ教室の実践と、子どもたちの変化について伺います。

取材・文/川崎ちづる

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寄稿家紹介

高見幸子 たかみさちこ

たかみさちこ。1974年よりスウェーデン在住。野外生活推進協会の活動である「森のムッレ教室」(5〜6歳児対象の自然教育)にてリーダーとして活動後、日本にも紹介し、普及活動を展開している。環境視察のコーデイネートや執筆活動等を通じて、スウェーデンの環境保護、幼児教育などを日本に紹介。現在、スウェーデン「ヨスタ・フロム森のムッレ財団」副理事長、「日本野外生活推進協会」(森のムッレ協会)事務局長。
【主な訳著書】
『スウェーデンにおける野外保育のすべて』(訳書/新評論)、『幼児のための環境教育』(共著/新評論)、『エコゴコロ』(共著/共同通信社)、「日本再生のルール・ブック」(海象社)など