木版作家の"子どもを魅了する" 身の回りのことが学べる絵本3冊!

ただいま絶賛子育て中 きいてみよう! 絵本作家のえほんばこ〜彦坂有紀さん、もりといずみさん〜

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素敵な絵本を生み出している絵本作家さんたちは、絵本を通して子どもたちとどのような時間を育んでいるのでしょう? その素敵な“物語”をご紹介します! 今回は、彦坂有紀さんともりといずみさんの登場です。

(「たのしい幼稚園」12月号(2021年10月29日発売)掲載)より

どんなジャンルの絵本も好きな娘。
絵本に限らず、何事も否定せず育てていきたいと思っています。
でもつい、自分好みではない絵本は隠してしまったり……(笑)。

娘は絵本から、世の中を学んでいる真っ最中です

彦坂有紀 娘は来年から幼稚園で、今、プレ幼稚園に通っています。私に似ず、社交的。初日から楽しんでいます。私は子供の頃、放課後に絵を描いていて、ふと顔をあげたら、教室からみんないなくなっていた、ということがあったほど、1人静かに絵を描いているのが好きで、あまり周りになじめず小学校と中学校はずっと苦痛でした。

美術の高校に進んでから、やっと楽しくなったんです。娘にはこう育ってもらいたい、というのはないですが、しいて言えば私に似ないでほしい、と思っています(笑)。

もりといずみ 反対に僕は、学校が終わったらいつも友達とつるんでいたタイプ。今のところ娘は、僕に似ているのかな、と思います。

彦坂 娘はとにかく絵本を読むのが大好き。寝る前は必ず読み聞かせているのですが、それ以外に、朝もお昼寝の前も夜ご飯の前もと、時間さえあれば「読んで」とせがんできます。

今日は2人で取材ということで、娘は祖母に預けているのですが、多分、今も祖母に「絵本を読んで」とせがんでいると思います。

もりと 中でもシリーズものがとくに好きで、『ころわん』シリーズは0歳のときから読み続けています。風邪を引いて鼻水が出ると『かぜひき ころわん』、雨の日は『あめのひの ころわん』。

絵本から世の中のことを覚えていっているようで、「風邪をひいたら病院に行きたい」と自分から言い出したこともありました。

彦坂有紀さんともりといずみさんのおすすめ絵本❶ 『しろい しろい ころわん』

『しろい しろい ころわん』
作●間所ひさこ
絵●黒井 健
定価●1320円(税込)
発行●ひさかたチャイルド

かぜひき、クリスマス……
どの「ころわん」シリーズも娘は大好き


ころころ子犬のころわんの無邪気な姿が共感を呼ぶ人気シリーズ。

「雪が降れば『しろい しろい ころわん』、風邪をひけば『かぜひき ころわん』、クリスマスが近づけば『クリスマスの ころわん』を読んだり。絵本で覚えた物事を私たちに紹介してくれることもあります。

山梨の清里にある、『ころわん』シリーズの絵を手掛けている黒井健さんの絵本ハウスに行って以来、娘はますますころわん好きになりました」

彦坂 『オフロケット』は、お風呂の中で数を数える絵本なのですが、この本から数字を覚えて、時計の数字を意識するなど生活の中でも応用できるようになりました。

もりと 先日もテレビ東京の7チャンネルを押したら、「『7 なでなで かおふく ナマケモノ』と一緒だね」と、娘は『オフロケット』に出てくるページの話をしていました。

彦坂 読んで実際に体験するのが好きなようです。プレ幼稚園で先生がサンドイッチの本を読みながら、みんなにサンドイッチを食べさせるフリをしたんです。コロナ禍なのでみんなはマスクごしでしたが、娘だけマスクを取って「あーん」と実際に食べるかのような仕草をしたので、本当に絵本の世界に入り込んでいるんだなあと思いました。

彦坂有紀さんともりといずみさんのおすすめ絵本❷ 『オフロケット』

『オフロケット』
著者●ザ・キャビンカンパニー
定価●968円(税込み)
発行●白泉社

お風呂がさらに好きになったうえ
数字を覚えるきっかけにも!


「10 じゃっぷん ジュゴンが ジャンプして」、「9 きゅっきゅっ おゆはる キュウカンチョウ」と、お風呂で数を数えていくお話。お風呂嫌いの子もきっとお風呂が好きになる1冊。

「娘はもともとお風呂が好きだったけど、さらに好きになりました。絵本と同じように、毎回最後は『ザッパーン』と言っています。数字を覚えるきっかけにもなった、本当にいい本です」

彦坂の木版画に一目惚れして  一緒に活動するように

彦坂 私たちの絵本は、私が絵を描いて、もりとがそれを木版に彫る、という共同作業で作っています。たいていは私が「クッキーの絵が描きたい」などテーマを考えて、もりとがそれをどう絵本にしていくかアイディアや内容を考える、という流れです。

もりと 彦坂と出会ったのは、僕が大学の卒業制作でファッション誌を作っていたとき。なじみのカフェの店長に、「誰か面白い人いませんか?」と相談したら、「木版画をやっている人がいる」と彦坂を紹介されたんです。

彼女の作品を見て感動して。「これは絶対デビューしたほうがいい!」と彦坂木版工房を設立して、2人で活動するようになりました。

彦坂 その作品を見た講談社さんが声をかけてくれて、『パン どうぞ』が生まれ、絵本作家として活動できるようになりました。

娘が生まれてから 絵本作りにも変化が

もりと 僕の両親は、僕が興味を持ったことは何でもやらせてくれたので、娘も同じように育てたいと思っています。海でも遊園地でも、行きたいと言えば連れて行ってあげたい。何でも否定しないでいこう、と。

でも、仕事柄たくさんの絵本が家にありますが、僕が面白くないかなと思う本は隠してしまうんですよね。だけど娘はどこからか見つけてきて、「読んで読んで」と言うんです (笑)。 

彦坂 逆に娘からも、私たちが作る絵本のヒントをたくさんもらっています。娘が生まれる前は、私が絵本のアイディアを提案することが多かったんです。

でも今は、もりとが娘とのやり取りや読み聞かせの中で、どんどんアイディアが湧いてくるようで。いつも、「また思いついた、どうしようどうしよう」と言っています(笑)。

もりと その一つが、新刊の『のりものクッキー』です。僕と娘がともに好きな絵本に『でんしゃ くるかな?』という1冊があって。これを読んだ娘は電車に興味を持って、平日の空いている時間帯に1、2駅だけ乗りに行ったりしているんです。

僕は男兄弟だけだったので、「女の子も乗り物が好きなんだ」と驚いて。それで『どうぶつクッキー』に続いて、乗り物バージョンを作ることに。そんなふうに娘から影響を受けまくっています。

彦坂有紀さんともりといずみさんのおすすめ絵本❸ 『でんしゃ くるかな?』

『でんしゃ くるかな?』
作●きくち ちき
定価●880円(税込み)
発行●福音館書店

娘の乗り物に対する興味を
引き出してくれた1冊


ゾウさんやキリンさんなど動物のお友達と、電車が来るのを待ったり、「ばいばーい」と見送ったり、最後はみんなで一緒に乗ったり。

「1歳を過ぎた頃から乗り物に興味を示し始め、この絵本を読んだところ大ハマリしました。線路沿いで『くるかな? くるかな? きたー!』と”でんしゃ くるかな?ごっこ”をして遊んでいます」

彦坂さん、もりとさんの新刊絵本『のりものクッキー』

『のりものクッキー』
作●彦坂有紀・もりといずみ
発行●講談社
定価●1210円(税込み)
くるまやショベルカーなど、いろんなのりものクッキーが登場します!

かわいくて美味しそうな
のりものがいっぱい


乗り物の形をしたクッキーが次々と登場する1冊。多色刷りの木版画は、見ているだけで温かい気持ちに。「私たちの絵本をきっかけに、子供たちに木版の魅力を知ってもらえると嬉しいです」

取材・文/山本奈緒子

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