本当に気になる子育ての悩み「泣いたり叫んだり、感情の起伏が激しい子どもにはどう対応するべき?」

子育てお悩みランキング12を多角的に検証! 第9回 井澗知美/高祖常子

ライター:笹間 聖子

続いては、子育てアドバイザー&キャリアコンサルタントの高祖常子先生の回答です。
高祖常子先生

「気持ちを押し通せない」悲しさと切り替えの葛藤

泣いたり叫んだり、ありますよね。特にイヤイヤ期の子どもは感情が高ぶりやすく、泣き叫んでしまうこともあります。

この時期は、「子どもが感情の切り替えをしようと葛藤している時期」だと見ていただけたらいいのではないでしょうか。

例えば、「おもちゃを買って」と言っても親からダメだと言われ、今日は買ってもらえないと分かったとします。そのとき泣き叫ぶのは、自分の欲しいという気持ち、そして、思う通りにならないくやしさ、その気持ちの切り替えと戦っているのです。
イヤイヤ期に子どもは、感情の切り替えをしようと葛藤している
対処法には個人差があって、「今日は買えないね。おうちに帰ってボール投げして遊ぼうか」といった感じで切り替えを手伝ってあげれば、カラッと気分を変えてくれる子どももいます。

一方で、「絶対ダメだ。これが欲しいんだ」と言って、切り替えにかなり時間がかかる子どももいます。そしてそれがいけないかというと一概にそうとも言えません。

なぜなら将来を考えたら、「これを絶対成し遂げたい」と一生懸命思い続けられる人と、「そうは言っても無理だよ」とすぐ諦めてしまう人、どちらがいいと思われますか?

親からすると、成し遂げたいことを頑張ってほしいという気持ちもありますよね。
切り替えに時間がかかる子は、「これを絶対成し遂げたい」という思いが強いのかも

「泣き叫ぶ子ども=意思が強い」とポジティブに

つまり泣き叫ぶ子どもは「意志が強い」「意思表示ができる」と、ポジティブに見てあげてもいい要素なのです。ノーベル賞を取るような研究者には、何回失敗してもあきらめず最終的には成し遂げた人も多いですよね。

もちろん、場面によってあきらめなくてはならないこともあります。また、意思を押し通すだけではなく、お互いの意見の違いを理解し、解決策を探していくことが必要なこともあります。

でも2~3歳の子どもは、まだ人間関係や社会性を学んでいる途中。やはりそこは「意思表示ができている」と思って見守っていきましょう。
泣き叫ぶ=意思表示ができている子どもとポジティブに
小学校に上がるくらいの年齢になれば、「ずっと大騒ぎしても、ダメなものはダメなんだ」と、周りの状況を見ながら収めていくことを学んでいくはずです。

そうそう、ここで注意しておきたいのは、親がイライラして怒鳴りつけても、泣き止むことはないということです。もし泣き止んだとしたら、それは納得したからではなく、怒鳴られて怖かったからでしょう。

子どもが「嫌だ」と言うのはいけないことではありませんし、「いつまでも泣き叫んでいるとワガママになる」ということはありません。意思表示をしているだけなのです。

パパ・ママはまずは気持ちに寄り添って

ですから、ママ・パパはちょっと周りの目も気になるかもしれませんが、「そうだったね」「買いたかったよね」「欲しかったよね」とまずは共感してあげて、「自分の気持ちと戦っているんだな」と見守りましょう。

あるいは「そのおもちゃが欲しかったから、サンタさんに頼んでおこうね。じゃあ、これからお家に帰ってご飯を作らないといけないから手伝ってくれる?」というふうに、いつかのプレゼントにすることを約束して、子どもの気分の切り替えを手伝ってあげる方法もあります。
「いつか」の特別なプレゼントにする手も
気持ちは大事にするけれど、行動は通さないということですね。その都度負けて買ってあげていると、それこそワガママな子どもに育ってしまいます。

「この子はワガママばかり言って」と言ったりする親がいますが、それはそのように親が仕向けてしまっているのかもしれません。スーパーの中などであまりにも人の目が気になるようだったら、入り口に移動して気が済むのを待ちましょう。

「そんなふうに待てないよ」と思ったら、それは親の心に余裕がない証拠です。イライラして子どもに当たることのないように、おいしいものを食べていろいろな人の手を借りながら、ゆったりと関わっていきましょう。
文・構成/笹間聖子 写真提供:ピクスタ

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イタニ トモミ

井澗 知美

公認心理師、臨床心理士

大正大学心理社会学部臨床心理学科教授。公認心理師、臨床心理士。 上智大学文学部心理学科、早稲田大学大学院人間科学研究科修士課程修了後、国立精神・神経センター精神保健研究所児童思春期精神保健部の流動研究員としてADHDの臨床研究をチームで行う。研究所に在籍している際に、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)にてペアレントトレーニングの研修を受け、我が国におけるペアレントトレーニングプログラムの開発にたずさわる。その後、中央大学大学院博士課程でペアレントトレーニングの有効性に関する研究に取り組み、学位を取得。 専門は発達臨床心理学で、早期介入や地域での発達支援に関心をもつ。ここ数年は幼児期から思春期の子どもの発達支援を中心に取り組んでいる。本書でも紹介した自閉症スペクトラム症の早期介入法であるJASPERの認定セラピストの資格を取得し、大学内の相談室や小児科クリニックで実践をしている。

大正大学心理社会学部臨床心理学科教授。公認心理師、臨床心理士。 上智大学文学部心理学科、早稲田大学大学院人間科学研究科修士課程修了後、国立精神・神経センター精神保健研究所児童思春期精神保健部の流動研究員としてADHDの臨床研究をチームで行う。研究所に在籍している際に、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)にてペアレントトレーニングの研修を受け、我が国におけるペアレントトレーニングプログラムの開発にたずさわる。その後、中央大学大学院博士課程でペアレントトレーニングの有効性に関する研究に取り組み、学位を取得。 専門は発達臨床心理学で、早期介入や地域での発達支援に関心をもつ。ここ数年は幼児期から思春期の子どもの発達支援を中心に取り組んでいる。本書でも紹介した自閉症スペクトラム症の早期介入法であるJASPERの認定セラピストの資格を取得し、大学内の相談室や小児科クリニックで実践をしている。

こうそ ときこ

高祖 常子

子育てアドバイザー・キャリアコンサルタント

リクルートで学校・企業情報誌の編集にたずさわったのち、2005年に育児情報誌miku編集長に就任し14年間活躍。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。 認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事ほか各NPOの理事を務める。「体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」(厚生労働省2019年度)でガイドライン策定委員ほか、国や行政の委員を歴任。子育てと働き方などを中心とした編集・執筆ほか、全国で講演を行っている。 保育士、幼稚園教諭2種、心理学検定1級など子育てに関連する資格を多数取得。 東京家政大学短期大学部保育科卒、第9回渡邉辰五郎奨励賞受賞。 著書は『イラストでよくわかる 感情的にならない子育て』(かんき出版)、『こんなときどうしたらいいの? 感情的にならない子育て』(かんき出版)、『男の子に厳しいしつけは必要ありません』(KADOKAWA)ほか。 3児の母。 ●高卒常子オフィシャルサイト ●Twitter @tokikok  

リクルートで学校・企業情報誌の編集にたずさわったのち、2005年に育児情報誌miku編集長に就任し14年間活躍。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。 認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事ほか各NPOの理事を務める。「体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」(厚生労働省2019年度)でガイドライン策定委員ほか、国や行政の委員を歴任。子育てと働き方などを中心とした編集・執筆ほか、全国で講演を行っている。 保育士、幼稚園教諭2種、心理学検定1級など子育てに関連する資格を多数取得。 東京家政大学短期大学部保育科卒、第9回渡邉辰五郎奨励賞受賞。 著書は『イラストでよくわかる 感情的にならない子育て』(かんき出版)、『こんなときどうしたらいいの? 感情的にならない子育て』(かんき出版)、『男の子に厳しいしつけは必要ありません』(KADOKAWA)ほか。 3児の母。 ●高卒常子オフィシャルサイト ●Twitter @tokikok