蔵書1800冊超の図鑑マニアが伝授 子どもを“図鑑好き”にする秘訣とは
図鑑マニア・斎木健一先生インタビュー 第2回/子どもを図鑑好きにさせるには
2021.06.24
1800冊以上の図鑑をコレクションする図鑑の識者で、「千葉県立中央博物館 分館海の博物館」分館長の斎木健一先生。第1回では、<図鑑は新しい世界を広げてくれるガイドブック>と話してくださいました。好奇心を刺激して、知識をぐんぐん増やしてくれる図鑑。わが子に対して「たくさん読んでほしい」「好きになってほしい」と願う親は多いでしょう。そこで、第2回は、子どもを図鑑好きにさせるコツについて伺います。
まずは親が図鑑を開き"驚き&楽しむ"こと!
――親として、子どもにはぜひ図鑑に興味を持ってもらいたいのですが、子どもを図鑑好きにさせるコツはあるでしょうか?
まずは、親が図鑑を楽しんでいる姿を見せる必要があると思います。親がやらないことを子どもにやらせようとしても、なかなか難しいですから(笑)。
親としても義務では長続きしませんから、楽しめるネタを探して、<気づいたら習慣になっていた>というのが理想です。そこでおすすめなのが、食材の図鑑。スーパーでイチゴを買ってきたら、子どもがいる前で図鑑を開き、品種を調べてみましょう。
「この女峰っていうイチゴ、ケーキの飾りに使うんだ」「こんな花が咲くのか。知らなかったなぁ~」。
そうやって、図鑑を開いて驚き、楽しんでいるところを子どもに見せます。図鑑を見せる必要はありません。“図鑑には、おもしろいことが書いてある”と感じてもらうだけでいいのです。それが習慣化してくれば、そのうち子どものほうから「見せて!」と言ってくるはずです。
――食材なら子どもにとっても身近なジャンルですし、興味のある子も多そうですね。
食事の機会は1日3回ありますし、すぐそばで見られて、触れられて、解剖までできる(笑)。もちろん、食材でなくても構いません。親が楽しむことが大事なわけですから、初めの1冊は、親自身が興味のある図鑑を選ぶのも手かもしれないですね。どんな図鑑でも、食卓のそばやリビングなど、親も子もいつでも開ける場所に置いておくのがよいと思います。
フキダシのセリフが肝!? 図鑑は「読み聞かせ」にも最適
――ほかには、いかがでしょうか。
絵本と同じように、読み聞かせをするのもおすすめです。読み聞かせで重要なのが、フキダシやコラムに書かれたセリフ。「みずあびがしたいなー」「きのぼりがだいすき」など、よく昆虫や動物の図鑑などに書いてありますよね? ぜひ気持ちを込めて読みましょう。
ちょっとしたことですが、こういったセリフのやり取りがあると、子どもは図鑑の読み聞かせが何倍も楽しくなりますし、親子の絆を深めるきっかけにもなります。そもそも、セリフがないと親のほうも間が持ちません(笑)。親自身が読み聞かせしやすい図鑑を選ぶといいですね。
――寝かしつけにもよいのでしょうか。
いいと思います。仰向けだと重くて辛いなら、うつ伏せでも。大人はそのうち疲れてしまいますが、体の柔らかい子どもは意外と平気です。
図鑑というと、分厚い大型の図鑑を想像しがちですが、学習図鑑だけが図鑑ではありません。携帯用のポケット図鑑や絵本のように薄い図鑑もあります。状況に応じて使い分けてはいかがでしょう。
親の考えを押し付けず「子どもの興味」が最優先
――図鑑の選び方にも関わってきますが、まずは、子どもがみずから興味を持つことが大切なのですね。
そうですね。だからこそ、親の考えや都合ではなく、子どもの好みに合った図鑑を探してほしいと思います。そのためには、普段の生活はもちろん、昆虫、植物、動物、魚、乗り物、食べもの、歴史……など、あらゆるジャンルのものに接する機会を与えて、子どもをよく観察することが大事です。無理強いをしてはいけません。
何に興味があるのかわからないときは、『MOVE はじめてのずかん』シリーズ(講談社)のように、まずは幅広いジャンルを網羅した図鑑を選んで、そこから好きなジャンルを探すのもよいでしょう。試しに100円ショップや古書店で図鑑を買ってみて、子どもの興味の対象を探るのもよいと思います。
――ところで、先生ご自身が、図鑑を好きになったきっかけは何だったのでしょうか。
僕は子どものころから虫が好きで、虫のことを調べるために図鑑を読んでいました。あくまでも“図鑑で調べる先のもの”が好きだったんです。それから仕事の関係で植物が好きになり、さらに図鑑を読むようになりましたが、いろいろな図鑑を買うようになったきっかけは、3人の息子の子育てでした。
自然や生きものが好きな子どもに育ってほしいけれど、子どもの興味の対象がわからない。だったら一緒にやってみようと、虫を捕ったり魚を釣ったり、バードウォッチングをしたり、トコトン楽しみました。その度に昆虫図鑑、魚の図鑑、鳥の図鑑……と、図鑑がどんどん増えていったわけです(笑)。
その甲斐あって、子どもたちはみんな、自然や生きものが好きになりました。調べものをするときは彼らも図鑑を開きますが、好きなのは図鑑よりも、その先にある自然や生きもの。でも、それでいいのです。子どもの興味や知識を広げるための手段として、図鑑を上手に活用していただきたいですね。
取材・文/星野早百合
#1 斎木健一「子育て世代が知らない“進化系図鑑”の世界」
斎木 健一
1962年、神奈川県生まれ。「千葉県立中央博物館 分館海の博物館」分館長。所有する図鑑は1800冊以上。 TBS系テレビ番組『マツコの知らない世界』では、“図鑑の世界”の案内人を務めるなど、メディアにも多数出演。 2014年、千葉県立中央博物館で行われた企画展の図録として、『図鑑大好き!』(彩流社)を出版。『講談社の動く図鑑 MOVE 植物』(講談社)の監修も担当している。 写真:小松貴史 千葉県立中央博物館 分館海の博物館 http://www2.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/
1962年、神奈川県生まれ。「千葉県立中央博物館 分館海の博物館」分館長。所有する図鑑は1800冊以上。 TBS系テレビ番組『マツコの知らない世界』では、“図鑑の世界”の案内人を務めるなど、メディアにも多数出演。 2014年、千葉県立中央博物館で行われた企画展の図録として、『図鑑大好き!』(彩流社)を出版。『講談社の動く図鑑 MOVE 植物』(講談社)の監修も担当している。 写真:小松貴史 千葉県立中央博物館 分館海の博物館 http://www2.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/