「効果的な読み聞かせ」 3つの秘訣〔時間・書目・方法〕を国立小・元司書教諭が伝授

【「絵本」でことばを育み心を耕し国語力の素地を養う#2】親子で一緒に楽しむことから始まる読書習慣

司書教諭の免許を持つ学級担任として、これまで、たくさんの子どもたちに読み聞かせを実践してきた齊藤先生のところには、「上手に読み聞かせができないのですが、どうしたら良いですか?」という質問も多くよせられるそうです。

➡【秘訣3】心が穏やかになるような読み聞かせを心掛ける

私はこれまでの経験から、「登場人物によって声色を変えたり、大げさな抑揚をつけたり、演技をしたりしなくても大丈夫ですよ」と伝えています。物語の世界に入り込んでもらうためには、むしろ構えたりせずに、自然体がいいからです。

子どもたちが、自分自身の感性で物語を楽しむことができるようにするためにも、「大げさな演出」「過度な強調」は控えめにしたほうがいいでしょう。それよりも、就寝前ということもあるので、落ち着いた声で、ゆっくりと気持ちが穏やかになるような読み聞かせを心掛けてほしいと思います。

子どもの年齢が低ければ低いほど、「自分の声とことばをていねいに届ける、手渡ししてあげる」ようなつもりで読んであげればいいのです(齊藤先生)。

「継続的な読み聞かせ」が、子どもたちに与える良い影響

第1回では、継続的な読み聞かせが、やがて読書習慣へとつながり、それにより少しずつ「生きるための基盤となる国語力」が養われていくことを紹介しました。また、絵本の読み聞かせは、小学校に入ってからでも、遅くないことにも触れました。

子どもたちは、いくつになっても絵本が大好きです。いつの間にか、物語に入り込み、どの子もそれぞれ自由に楽しむ力を持っています。大好きな絵本を日常生活に取り入れると、ワクワク感やドキドキ感とともに、子どもたちの学びへの姿勢もきっと変わってくるはずです。

では、読み聞かせを続けることで、子どもたちにどんな良い影響があるのでしょうか?

「物語の世界観に浸ったり、お話を聞いたりするうちに、自然と集中力が身についたり、語彙や知識が向上したりするでしょう。

加えて、絵本の読み聞かせを続けることで得られる良い影響は、『親子でいっしょに楽しむ中で、子どもたちの心が安定する』『想像したりすることで、自分自身で考える力が身に付く』『さまざまなシチュエーションに触れることで、感情表現が豊かになる』などがあげられます。

そして何よりも良い効果は、子どもたちが絵本を読むことが好きになった結果、絵本を手にすることが当たりまえになり、親子関係が強く、深くなることです」と齊藤先生は言います。

無理をせず、親子で楽しみながら、毎日少しずつ読み聞かせを続けることが、子どもたちの現在と未来に、とても良い影響を与えてくれるのではないでしょうか。

【読み聞かせが与える良い影響】
●子どもの心が安定する
●物語を読むのが好きになる
●親子関係が強く、深くなる
●想像力が育まれ、自ら考える力が身に付く
●感情表現が豊かになる(相手の気持ちに気が付くようになる)
●集中力がUPする
●語彙や知識が向上する

【就寝前に絵本を読む際のポイント】や【読み聞かせが与える良い影響】を踏まえ、ぜひ親子で絵本の読み聞かせを続けてみてください。日を増すごとに、子どもたちが、絵本の魅力に引き込まれていくのが分かるでしょう。

「年齢や特性に合った絵本」や「具体的な選書」については、年齢別に第3~第7回で紹介します。

取材・文・構成/えのとまり

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さいとう かずたか

齊藤 和貴

Kazutaka Saito
教育学者

京都女子大学発達教育学部教育学科准教授。東京都公立小学校および東京学芸大附属小金井小学校にて28年間、教育活動や授業実践に取り組んできた経験を持つ。司書教諭の経験を生かし、「絵本を活用した授業づくり」にも精力的に従事。著書に『豊かな心と思考力を育む 絵本で広がる小学校の授業づくり』(小学館)などがある。

京都女子大学発達教育学部教育学科准教授。東京都公立小学校および東京学芸大附属小金井小学校にて28年間、教育活動や授業実践に取り組んできた経験を持つ。司書教諭の経験を生かし、「絵本を活用した授業づくり」にも精力的に従事。著書に『豊かな心と思考力を育む 絵本で広がる小学校の授業づくり』(小学館)などがある。