「子育て」が上手な親の共通点は「待ち上手」 叱る・怒る・罰するから抜け出す大切な習慣 「先生の先生」が解説

【子どもの才能を伸ばす「待ち上手」な親 #1】子どもが伸びる親の共通点とは?

元公立小学校指導教諭、ベネッセ教育総合研究所教育イノベーションセンター主任研究員:庄子 寛之

「待ち上手な親」になるための5つのステップ

庄子先生は子育てがうまくいっている家庭の共通点を「待ち上手」であり、「自分を整える」ことが最初の一歩と解説してくれましたが、ゴールに到達するには全部で5つのステップがあります。

「子どもとの関係がうまくいっていない家庭は、我が子のことを心配するあまりに追いかけ気味だったり、すぐに悪いほうに妄想してしまうなど、さまざまなケースがあります。

しかし、どの悩みも待ち上手な親になるための5つのステップをクリアしていくと解消されていきます。

私は現在、中学3年生と小学4年生の子どもがいる父親ですが、実はこんな話をしている私も、かつては育児につまずいていた親でした。

それが自分に目を向けて意識を変えただけで、イライラすることが少なくなり、彼らとの関係にもいい変化をもたらすことができました」(庄子先生)

5つのステップは単にクリアしていくだけでなく、習慣化することが重要です。サイクルを回していくことで子どもがのびのびと育つ、待ち上手な親へと変わっていけます。

待ち上手な親になるための5つのステップを習慣化することで、子どもにも変化が現れる。  写真:アフロ

待ち上手な親になるためのファーストステップ「自分を整える」って何をするの?

「自分を整える」のが最初の一歩だといわれても、なぜそれが大切なのか、何を整えたらいいのかわからないもの。自分を整える目的や整え方とはどのようなものなのでしょうか。

「『自分を整える』こととは、親がゆとりを持つこと。そのためには、あきらめることが大切です。

𠮟るスパイラルにハマっている親御さんは、ご自身が疲れているところからイライラが始まることが多いので、まずは子どものことよりも自分のために時間を使ってみてください。

たとえば睡眠時間が減っているのであれば、それを戻すことから始めてみましょう。しっかり睡眠をとって朝早く起きる生活に変えていくと、自分だけの時間が持てるようになります。

その時間で読書をしたり、好きな音楽を聴いたり、録画しておいたドラマを見るのもおすすめです。自分の自由時間に勉強したことがあったのなら、知識を増やしたご自身を褒めてあげてください。これらがすべて『自分を整える』ことにつながっていきます」(庄司先生)

子どものことを優先しないことに負い目を感じる方もいますが、実は「自分のため」は「子どものため」になっていきます。子育てに頑張りすぎない自分でもいいことを認めていきましょう。

自分を整えるには「ま、いっか」も大切

「子どもを𠮟ったときに、自己嫌悪に陥らないことも重要です。帰宅したら勉強もせずにゲームに夢中になっている子どもに対して、瞬間湯沸かし器のように頭に血がのぼることもありますが、いい親じゃない日があっても『ま、いっか』と思いましょう。

あるいは『家事ができていなくても、ま、いっか。今日は寝てしまおう』となっても自分を責めず、ゆるしてあげてください」(庄司先生)

「ま、いっか」が使えるようになると、子どもに対してもおおらかな姿勢で接することができるようになってきます。

たとえばゲームに夢中になっていた子どもに対しても、すぐにカッとならず「○時を過ぎたら、やっちゃだめっていうルールだったよね」と冷静に話せる余裕が生まれます。

「イライラが少なく、子育てがうまくいっている親御さんは、よく『うちは放任なんで、何もやってないですよ』と謙遜を交えていいますが、どの方もご自身が整っていて、『ま、いっか』の精神もあると感じます」(庄司先生)

「親の背中を見て子は育つ」という言葉がありますが、自分の人生を充実させている親が目の前にいると、子どももそれに倣い、やりたいことに向かって自分の力でさまざまなことに対応し、乗り越えていけるようになると庄司先生は続けます。

𠮟るスパイラルにハマっているなら、まずは親である自分自身を楽しむことから始めてみましょう。


連載第2回は、待ち上手な親になるための5つのステップである「(2)ただ見る」と「(3)我が子から学ぶ」を解説します。

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◆庄子 寛之(しょうじ ひろゆき)
元公立小学校指導教諭、ベネッセ教育総合研究所教育イノベーションセンター主任研究員。
大学院にて臨床心理学科を修了し、道徳教育や人を動かす心理を専門とする。これまでに担任した児童は500人以上。「先生の先生」として教育関係者だけでなく、企業や保護者向けに、2年間で44都道府県での研修・講演を行う。元女子ラクロス日本代表監督の顔も持ち、2013年、U‐21日本代表監督としてアジア大会優勝。2019年、U‐19日本代表監督として日本ラクロス史上トップタイの世界大会5位入賞を果たす。著書に『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』(青春出版社)、『教師のための𠮟らない技術』『withコロナ時代の授業のあり方』(ともに明治図書出版)、『子どもがつながる! オンライン学級あそび』(学陽書房)など多数。

『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』 庄子寛之/著 青春出版社
伸びる子どもの親の共通点は「待ち上手」なこと! 待ち上手になるための5つのステップを詳しく紹介しています。

取材・文/梶原知恵

【親が「待ち上手」であることが子どもの才能を伸ばす】の連載は、全3回。
第2回を読む。
第3回を読む。
※公開日までリンク無効

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しょうじ ひろゆき

庄子 寛之

元公立小学校指導教諭・ベネッセ教育総合研究所教育イノベーションセンター主任研究員

元公立小学校指導教諭 ベネッセ教育総合研究所教育イノベーションセンター主任研究員 大学院にて臨床心理学科を修了し、道徳教育や人を動かす心理を専門とする。これまでに担任した児童は500人以上。「先生の先生」として教育関係者だけでなく、企業や保護者向けに、2年間で44都道府県での研修・講演を行う。 元女子ラクロス日本代表監督の顔も持ち、2013年、U‐21日本代表監督としてアジア大会優勝。2019年、U‐19日本代表監督として日本ラクロス史上トップタイの世界大会5位入賞を果たす。 著書に『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』(青春出版社)、『教師のための𠮟らない技術』『withコロナ時代の授業のあり方』(ともに明治図書出版)、『子どもがつながる! オンライン学級あそび』(学陽書房)など多数。

元公立小学校指導教諭 ベネッセ教育総合研究所教育イノベーションセンター主任研究員 大学院にて臨床心理学科を修了し、道徳教育や人を動かす心理を専門とする。これまでに担任した児童は500人以上。「先生の先生」として教育関係者だけでなく、企業や保護者向けに、2年間で44都道府県での研修・講演を行う。 元女子ラクロス日本代表監督の顔も持ち、2013年、U‐21日本代表監督としてアジア大会優勝。2019年、U‐19日本代表監督として日本ラクロス史上トップタイの世界大会5位入賞を果たす。 著書に『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』(青春出版社)、『教師のための𠮟らない技術』『withコロナ時代の授業のあり方』(ともに明治図書出版)、『子どもがつながる! オンライン学級あそび』(学陽書房)など多数。

かじわら ちえ

梶原 知恵

KAJIWARA CHIE
企画・編集・ライター

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。