不登校のキミへ 鴻上尚史が伝授する「嫌いな人」を好きにならなくて良い でも対立しない「コミュニケーション術」とは?

シリーズ「不登校のキミとその親へ」#8‐2 作家・演出家の鴻上尚史さん~学校の人間関係とコミュニケーション~

作家・演出家:鴻上 尚史

「クラスのみんなと仲良く」なんてできるわけがない

このインタビューは「不登校」がテーマだけど、今回は不登校の増加ともたぶん深く関係している「コミュニケーション」について話をします。

もし、子どものキミが友だちとの関係でモヤモヤしているとしたら、そのモヤモヤの正体を知ることできっとラクになれるはずです。

キミたちは小さいころから、先生に「クラスのみんなと仲良くしましょう」と教えられてきたんじゃないでしょうか。だけど、そんなことは不可能です。クラスの中には、好きな人も好きじゃない人もいる。「みんなと仲良く」なんてできるわけがない。

できないことを要求され続けるとどうなるか。「好きじゃないヤツとも仲良くしなきゃいけない」というプレッシャーを日々抱えて、だんだんイライラしてくる。そんなイライラがイジメの増加につながるんじゃないかと僕は思ってます。学校が息苦しい場所になっているのは、無理のある人間関係を強いられていることも原因のひとつなんじゃないかな。

ただし「仲良くしなくていい」というのは、「無視していい」ということではありません。

話し合いをするときには、好きな人の意見も嫌いな人の意見も同じように聞く。係の仕事を一緒にすることになったときは、意地悪したりしないでちゃんと協力して役割を果たさなきゃいけない。それは大人になって会社で仕事をするときも同じです。

大事なのは嫌いな人を好きになることじゃない。嫌いな人とも対立しないでうまくやっていくことなんです。

日本では「他人との関係をどう築くか」は、道徳の話になっちゃってる。道徳は「誰とでも仲良くすべし」という理想を押しつけるばっかりだから、すんなりと納得できない。

欧米だと、道徳じゃなくて「シチズンシップ教育」、つまり他人を尊重しながら、社会の中で市民のひとりとしてどう役割を果たすかという話になるんだよね。選挙に行こうとか社会の不正を見逃さないようにしようとか、そういう話と同じです。

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